単独インタビュー》台湾1.25兆台湾ドルの国防予算、米国はどう評価しているのか RAND専門家が解説

2025年12月2日、宜蘭県で後備旅歩三営の教育召集無人機訓練を視察する賴清德総統(2列目右3)、国家安全会議の呉釗燮秘書長(2列目左3)、顧立雄国防部長(2列目右2)。(写真/顏麟宇撮影)
2025年12月2日、宜蘭県で後備旅歩三営の教育召集無人機訓練を視察する賴清德総統(2列目右3)、国家安全会議の呉釗燮秘書長(2列目左3)、顧立雄国防部長(2列目右2)。(写真/顏麟宇撮影)

台湾は現在、総額1兆2500億元(約6兆1250億円)の国防特別予算(2026〜2033年)を進めている。過去最大規模となるこの計画は、抑止力の基盤を強化するための長期投資だ。賴清德総統が発表して以降、立法院では早くも激しい政治攻防が展開されているが、ワシントンや国際シンクタンクからは、より「長期的コミットメントのシグナル」として受け止められている。

米国のシンクタンク・RAND(ランド研究所)で台湾政策イニシアティブを率いる郭泓均氏(Raymond Kuo)は、『風傳媒』の単独インタビューに応じ、今回の予算を大国間競争の文脈で捉えるべきだと指摘した。郭氏は台湾が直面する根本的な現実を次のように語る。

「台湾はこの数年、防衛姿勢を強化してきた。今回の国防特別予算もその延長線上にあるシグナルだ。」郭氏が強調するのは、「米国が見ているのは金額の大きさではなく、台湾の取り組みに持続性があるかどうかだ」 という一点だ。

8年間で実施される国防特別予算の「三大特色」と七つの重点領域

行政院が発表した「防衛韌性および非対称戦力強化特別予算」の資料によれば、1兆2500億元(約6兆1250億円)の予算は2026〜2033年にわたり執行され、その重点は七つの領域に置かれる。すなわち、防空、弾道ミサイル迎撃、精密火砲、長距離精密打撃ミサイル、無人機と対無人機システム、AI支援およびC5ISRシステム、そして作戦継続能力を高める関連装備である。

国防部が発表した「強化防衛韌性及び非対称戦力特別予算」の資料。(国防部公開資料より)
国防部が公表した「強化防衛韌性及び不対称戦力特別預算」の画像概要資料。(画像/国防部公開資料)
国防部が発表した「強化防衛韌性及び非対称戦力特別予算」の資料で七大目標を挙げています。(国防部公開資料より)
国防部が公表した「強化防衛韌性及び不対称戦力特別預算」の資料。七つの目標が列挙されている。(画像/国防部公開資料)

国防部はさらに「三大特色」を掲げる。重層的な防衛システムの構築(台湾のシールドの形成)、ハイテクとAIの導入による攻撃チェーンの迅速化、および国防産業の基盤強化(非レッドサプライチェーンの構築)である。これらは「多領域における拒否能力を整備し、多層的な防衛作戦体系を確立する」ことを狙いとするものだ。

国防部が発表した「強化防衛韌性及び非対称戦力特別予算」の資料で三大特徴を挙げています。(国防部公開資料より)
国防部が公表した「強化防衛韌性及び不対称戦力特別予算」の資料。三つの特徴が示されている。(画像/国防部公開資料)

郭氏は、この資料が重要なのは、台湾の防衛上もっとも脆弱な領域を明確に指し示している点にあると指摘する。「『非対称戦力』はしばしばスローガンとして語られがちだが、今回のリストはその核心に踏み込んでいる。限られた資源で中国の優位性を削ぎ、迅速な勝利を困難にするための具体的な策になっている。」

彼が挙げる中国側の主要優位は、ロケット軍による初動の大量ミサイル攻撃、飽和攻撃能力、戦闘序盤での制空権掌握といった、台湾が最も警戒すべき領域だという。

郭泓均氏が分析する台湾の強化の方向性「見える・正確に撃てる・持ちこたえられる」

郭氏は、この特別予算の方向性が正しいと考える理由について、金額の多寡ではなく、国防部が三つのポイントに明確に焦点を当てている点にあると指摘する。

第一は「見える」(情報監視・偵察のアップグレード) (関連記事: 夏珍コラム:台湾人は巨額国防予算に「ノー」と言う権利を持っているのか 関連記事をもっと読む

多層的な攻撃が想定される環境では、ISRとC5ISRをどこまで高度化できるかが、指揮系統が生き残れるかどうかを左右する鍵だと郭泓均氏は見る。「台湾が相手の動きをより早く察知できれば、その分だけ相手の作戦テンポを遅らせることができる」。国防部がAI支援による意思決定やスマート監視・偵察を予算項目に組み込んだのは、人民解放軍が仕掛ける戦場の曖昧化や、無人機、サイバー攻撃、海底ケーブル破壊といったグレーゾーン攻撃(軍事と非軍事の中間領域での圧力)に対応するための不可欠な調整だという。

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