インディペンデント映画界の名匠・リム・カーワイ監督の幻のデビュー作、15年ぶりにスクリーンへ
映画『アフター・オール・ディーズ・イヤーズ』デジタル・リマスター版が11月29日(土)にシアター・イメージフォーラムで公開初日を迎え、監督のリム・カーワイ氏と主演の大塚匡将氏が登壇して舞台挨拶が行われた。翌30日(日)には、アーティストでドラァグクイーンのヴィヴィアン佐藤氏がゲストとして登壇し、2日連続の舞台挨拶イベントが実施された。
リム監督は大阪を拠点に、香港、中国、バルカン半島など国境を超えて作品を生み出し、自身を「シネマドリフター(映画流れ者)」と称する。原点となるデビュー作がデジタル・リマスター版として再び蘇り、観客の前に戻ってきた。
初日舞台挨拶
初日は、ア・ジェ役を演じた大塚匡将氏が登壇。「香港映画に憧れて俳優を志し、北京電影学院に行った2005年の北京はまさに人種のるつぼ。そこでリムと知り合い、長編を撮ると言われて“頑張って”と声をかけたら主役に抜擢された」と出会いを振り返った。
当時は中国語に苦戦し「脚本をネイティブに読んでもらったら『意味がわからなさすぎる』と断られた」と笑いを誘う一方で、「15年ぶりにスクリーンで観て、当時は手探りだった感情が今になって少し理解できた気がする。…いや、まだわからないところもあるけど」と語り、会場は和やかな空気に包まれた。
さらに香港国際映画祭の思い出として、「映画祭会場で監督を待っていたら、連れてきた『おじさん』を紹介され、『こちらアンソニー・ウォンさん』って。なぜそんなカジュアルに連れてくるのかと驚いた」とエピソードを披露し、客席を沸かせた。
リム監督は「久々に故郷に帰ったら誰も自分を知らない。そんなことは誰の身にも起こりうる。何が現実で何が嘘なのか、そのさまざまなレイヤーが今は一つにつながっている気がする」と作品に込めた思いを語った。
2日目舞台挨拶
2日目のトークでは、ヴィヴィアン佐藤氏が「すばらしい、大絶賛です!」と語り、映画の構造美とミニマルな語りに着目した。
作品中に繰り返し登場する鏡について、「フレームを鏡と捉えると、外のものとの同調のあり方が美しく不可解」と読み解き、リム監督も「部屋という空間にもレイヤーを意図的に点在させた」と制作意図を語った。
また、冒頭とラストに象徴的に登場するAMラジオについて、ヴィヴィアン氏は「周波数が合わずノイズが走ることで、普段は聞こえない無数のものが見えてくる。それがこの映画を象徴している」と解説。カメラワークの緻密さにも評価を寄せ、「非常に饒舌でありながらミニマル。語るべきものがすべて入っている」と絶賛した。
公開記念イベントも連日開催
公開後には12月1日から7日まで、映画監督や俳優との公開記念トークイベントも予定されている。
作品情報
『アフター・オール・ディーズ・イヤーズ』デジタル・リマスター版
出演:大塚匡将、ゴウジー(狗子)、ホー・ウェンチャオ(何文超)
監督・脚本:リム・カーワイ
2025/2010|マレーシア・中国・日本|モノクロ+カラー|98分
(C)cinemadrifters
10年ぶりに故郷へ戻ったア・ジェを待ち受けていたのは「誰も自分を知らない」という恐怖。二部構成で虚構と現実が交錯し、観客を白昼夢へと誘う作品となっている。映画は11月29日よりシアター・イメージフォーラムで公開、2026年1月3日よりシネ・ヌーヴォほか全国順次公開となる。
編集:小田菜々香 (関連記事: 黒沢清も絶賛 リム・カーワイ監督の幻のデビュー作『アフター・オール・ディーズ・イヤーズ』、15年ぶりにスクリーン復活 | 関連記事をもっと読む )
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