マレーシア出身の映画監督・林家威(リム・カーワイ)氏が2009年に撮影した幻のデビュー作『アフター・オール・ディーズ・イヤーズ』が、デジタル・リマスター版として15年の時を経てスクリーンに蘇る。11月29日(土)より、シアター・イメージフォーラムを皮切りに全国順次公開される。

『アフター・オール・ディーズ・イヤーズ』デジタル・リマスター版、11月29日より全国順次公開
リム氏は大阪を拠点に、香港や中国、バルカン半島など国境を越えて活動する“シネマドリフター(映画流れ者)”として知られる。東京国際映画祭コンペティション部門に『カム・アンド・ゴー』(2020)がノミネートされ、近年はドキュメンタリー『ディス・マジック・モーメント』(2023)など話題作を発表してきたが、2024年には突然の休業を宣言した。それでも台湾文化センターでのキュレーション活動や連載「香港からの手紙」など、多彩な国際活動を続けている。
『アフター・オール・ディーズ・イヤーズ』は、リム氏が大阪大学卒業後、会社員生活を経て北京電影学院で学んだ後に初めてメガホンを取った長編作品である。自己存在への恐怖と日常からの逃避を二部構成で描き、虚構と現実が交錯する世界を圧倒的な構造美で表現している。中国、日本、アメリカ、香港、ボリビアなど多国籍なスタッフ・キャストによって製作され、“国境を越える映画作家”リム氏の原点とも言える作品だ。
黒沢清監督、筒井武文監督、映画批評家・樋口泰人氏が絶賛
今回のリバイバルにあたり、リム氏のほか、黒沢清氏、筒井武文氏、樋口泰人氏から賛辞が寄せられている。
黒沢氏は「アジアのパワーと混沌がヨーロピアンな思索で構築され、最後はハリウッド映画のような興奮で観客を釘付けにする」と評し、「エドワード・ヤンのさらに先を提示している」と称賛した。筒井氏は「第1作にしてこの完成度。15年前の傑作を遅れて発見する喜びがある」と述べ、樋口氏は「無責任で危うい浮遊感を映し出し、観客を白昼夢へと誘うミステリートレイン」と表現した。
キャストと制作陣
主演の大塚匡将氏は中国でも活躍する俳優で、『恋人路上』(2008)などで知られる。共演には北京アンダーグラウンドの作家・狗子(ゴウジー)氏や女優ホー・ウェンチャオ(何文超)氏が名を連ねる。撮影は香港の映像作家メイキン・フォン・ビンフェイ氏、編集・照明は『ホテルアイリス』の奥原浩志氏が担当した。
本作の予告編はモノクロームの静謐な映像が印象的で、幻想と現実が交錯する世界を表現している。公開にあわせ、メインビジュアルとともにYouTubeでも予告編が公開された。
『アフター・オール・ディーズ・イヤーズ』デジタル・リマスター版
● 英題:After All These Years
● 監督・脚本:林家威(リム・カーワイ)
● 出演:大塚匡将、狗子(ゴウジー)、何文超(ホー・ウェンチャオ)
2025/2010|マレーシア・中国・日本|モノクロ+カラー|98分|DCPステレオ
(C) cinemadrifters
● 配給:Cinema Drifters
● 公式サイト:https://sites.google.com/view/afteralltheseyears2025/
● 予告編:https://www.youtube.com/watch?v=4pxdvScF7g0
編集:田中佳奈
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