台湾映画『優雅な邂逅』上映、パンデミック下の台北が映す チャン・ツォーチ監督が語る「人と人の出会いが希望を生む」

チャン・ツォーチ監督は、映画『優雅な邂逅』を通じて、パンデミックの時代においても人と人との出会いが希望を生み出すことを語った。(写真/映画宣伝・大福提供)
チャン・ツォーチ監督は、映画『優雅な邂逅』を通じて、パンデミックの時代においても人と人との出会いが希望を生み出すことを語った。(写真/映画宣伝・大福提供)

台北駐日経済文化代表処台湾文化センターは10月4日、連続上映企画「台湾文化センター 台湾映画上映会2025」の第7回として、チャン・ツォーチ(張作驥)監督の最新作『優雅な邂逅』(原題:優雅的相遇/英題:Intimate Encounter)を上映した。上映後には、チャン監督がオンラインで登壇し、映画評論家の宇田川幸洋氏、キュレーターで映画監督のリム・カーワイ氏を迎えたトークイベントが行われた。

『優雅な邂逅』は、パンデミック下の台北を舞台に、人生の不完全さと再生を描いたヒューマンドラマである。心臓移植を受けた青年アシュンが、祖父や姉との再会、母の病、旧恋人や新たな出会いを通じて希望を見出していく姿を描く。主演のリン・チェンシュン(林政勳)は本作で第61回金馬奨新人俳優賞を受賞した。

チャン監督は、撮影地となった台北・万華の古い警察宿舎との出会いを振り返り、「まさに“優雅な邂逅”だった」と語った。「コロナ禍で人と人との距離が引き裂かれる中でも、出会いや信頼が希望をもたらした。人生には悲観的な出来事も多いが、すべてを優雅に受け流していけばいいという思いを込めた」と述べた。

宇田川氏は本作について、「社会の底辺に生きる人々の息づかいをリアルに描いている」と評価。チャン監督も「私は下層の人々の生活に常に目を向けている。生きるということ自体が最も重要なテーマだ」と応じた。

さらにチャン監督は、「標準語は感情を伝える言葉ではない。台湾語や原住民の言葉こそが生活を映す」と述べ、日常に根ざした言葉と素人俳優による演技を重視していると明かした。本作では実際のアパートの住民がエキストラとして出演しており、その事実に会場から驚きの声が上がった。

作中の印象的なエピソードについて、チャン監督は「父親が感染で障がいを持つ娘を殺害する場面は、実際に台湾で起きた事件から着想を得た」と説明。宇田川氏は「台湾映画は率直で正直。チャン監督は家族を描きながらも、個々の自由を尊重して描く」と評した。チャン監督は最後に、「映画づくりで最も大事なのは、自分が感動すること。自分の心が動かない作品は、人にも伝わらない」と語り、会場は大きな拍手に包まれた。

「台湾映画上映会2025」は、台湾文化への理解を深めるために開催されている連続上映企画である。2025年5月から10月にかけて、東京・大阪を含む全国7会場(台湾文化センター、日本大学、慶應義塾大学、早稲田大学、東京大学、大阪大学、シネ・ヌーヴォ)で全8作品を上映。今年は第21回大阪アジアン映画祭との連携企画として実施されている。

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