トランプ版「台湾戦略」の2大柱:“限定支援”と“距離を取る姿勢” アメリカはもう台湾を守らないのか?

2025-10-08 16:28
米軍のカール・ヴィンソン号航空母艦が朝鮮半島の海域で米韓合同演習に参加する。(AP通信)
米軍のカール・ヴィンソン号航空母艦が朝鮮半島の海域で米韓合同演習に参加する。(AP通信)
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中国が台湾に対して軍事行動を起こした場合、米国は台湾を防衛するために軍を派遣するのか?米国の『外交家』(The Diplomat)誌は4日、寄稿記事を掲載し、米国のトランプ大統領の「対台戦略」が形になりつつあると指摘した。米国側は「限定的な関与」に基づく軍事戦略を策定している途中である。文中では、米政府の新たな「対台湾戦略」には2つの柱があるとし、その一つは台湾の直接防衛を抑制する「限定的な関与」、もう一つは責任分担を促進する「オフショア・バランシング」であると述べている。

この記事は、日本の早稲田大学大学院アジア太平洋研究科の国際関係博士課程在籍中のEmery Yuhang Lai博士生によって執筆された。主に米国国防総省(戦争省)政策次長のエルブリッジ・コルビー(Elbridge Colby)次官を代表とする「抑制派」見解について、トランプ政権の対台政策への影響を探る内容である。

「抑制派」は台湾の戦略的位置の重要性を認めつつも、台湾は東アジアの「火薬庫」であり、台湾の自衛能力を強化し、中国を威嚇できる「ヤマアラシ」のような防御体制を構築すべきと警告する傾向にある。トランプ政権の対台政策はどうやら抑制派(restrainers)の陣営に向かっているようで、この動向はコルビー次官の2021年の著作『拒止戦略』に見られる。

「抑制派」台頭:台湾は米国の核心的利益ではないのか?

コルビーがウクライナ問題において米国介入の縮小を主張した際、彼には「孤立主義者」というレッテルが貼られ、今は台湾問題でも同様の批判に直面している。しかし、彼の見解は「抑制派」と呼ばれる一部の保守派の人々と一致している。この人たちは、米国の資源は限られており、すべての地域を「核心的利益」とすることはできないと考えている。

米国国防部政策次長候補エルブリッジ・コルビーが上院聴聞会に出席する様子。(X @Heritageより)
米国国防部(戦争部)政策次長エルブリッジ・コルビーによる「抑制派」見解が、トランプ政権の対台政策に影響を与える。(X @Heritageより)

彼らにとって「台湾防衛が米国の生存に不可欠かどうか」が現在の主要な議論の焦点である。積極的な介入を支持する人々は、米国が台湾を防衛することを明確に約束し、曖昧な立場を戦略的明確化に置き換えるべきだと主張する。彼らは、台湾の戦略的な位置、民主主義体制、半導体産業における世界的リーダーシップは、米国が保護しなければならない理由として十分だと考えている。

抑制派の警告:台湾は東アジアの「火薬庫」

しかし、ワシントンの抑制派はこれらの理由が米国を戦争に引き込むに足るものではないと考えている。彼らは台湾の重要性を認めつつも、台湾は同時に「火薬庫」「引爆点」であり、直接的な介入は破滅的な結果を招く可能性があると警告。この人々は台湾の自衛能力を強化し、自らの力で中国を抑止できる「ヤマアラシ」として整備すべきだと主張する。
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抑制派は、米軍が直接台湾海峡の紛争に介入すれば、利益に比べて代償は非常に高いと考えている。「世界の終末的」な対立を核保有国同士の間で避けることが、他の戦略目標に勝るべきであると強調する。米国の学者ジェニファー・カヴァナ(Jennifer Kavanagh)とスティーブン・ワートハイム(Stephen Wertheim)は『外交事情』(Foreign Affairs)に「台湾問題:米国の戦略は勝ち目のない戦争に依存すべきでない」という論文を発表し、台湾をアジア戦略の核心とみなすのをやめ、過度に台湾の重要性を高く見積もりすぎないことで、中国が台湾を統一する可能性があることに対して準備しておくべきだと呼びかけている。

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