論評:台湾ドラマ『零日攻撃』に酷評の嵐 総額12億円の国家プロジェクトが「認知戦」ドラマとして大失敗

2025-10-08 16:17
『零日攻撃』最終章で、駐軍は軽武器を手に大膽島を防衛する。(写真/『零日攻撃』公式Facebook)
『零日攻撃』最終章で、駐軍は軽武器を手に大膽島を防衛する。(写真/『零日攻撃』公式Facebook)
目次

総投資額2.6億台湾ドル(約12億円)規模で、政府が億単位の資金(文化政策機構の補助や国家発展基金の投資を含む)を投入した『零日攻撃 ZERO DAY』は、中秋節連休の週末に最終回(第10話)を迎えた。この中国共産党の認知作戦への防衛を目的とした「認知宣伝ドラマ」は、最後に我々は守った(大膽島)」という一言でわずかに士気を鼓舞したものの、全体としては放送開始から続いた酷評に終止符を打つ形となった。

「いったい誰を攻撃したかったのか?」

この作品を企画・制作した文化関係者や監督たちは、中国市場の圧力を恐れずに挑んだ点で評価されるべきかもしれない。しかし、作品の最大の問題は、製作陣が「認知の盲点」に陥り、自らの作品の目的を見失っていたことにある。

もし『零日攻撃』が「台湾社会の脆弱さと浅はかさ」を浮き彫りにすることを狙っていたなら、その点では成功しているとさえ言える。全10話を通じて、物語には以下のような台湾像が描かれる。

中国からの圧力に怯える台湾企業、スパイに浸透された国家安全局や国防部の高官、視聴率を優先して虚偽報道を流すメディア幹部、享楽に溺れるインフルエンサー、洗脳の片棒を担ぐベトナム系新移民、中国出身配偶者(陸配)に操られ逃亡する台湾人、香港人の「裏切り者」、台湾乗っ取りに協力する黒社会、そして脱獄した凶悪犯が唯一抵抗勢力として立ち上がる。

物語は過激なセリフや性的描写を多用し、戦争ドラマという主題をはるかに逸脱している。製作陣にとっては、これが「台湾ドラマらしさ」なのかもしれないが、視聴者からは「いったい誰を攻撃したいのか」と首をかしげる声が相次いだ。

海外宣伝は不発 アメリカでの試写会も「期待外れ」

国内での視聴率は伸び悩み、SNS上でも「話題にされるだけマシ」と揶揄されるほど。一方で、制作側は「外宣」つまり国際的な宣伝活動に力を入れ、台湾海峡を「世界で最も危険な場所」と強調する文脈で海外展開を進めた。

9月初旬には、アメリカのシンクタンク「大西洋評議会(Atlantic Council)」の招待を受け、ワシントンで試写会とシンポジウムが開催された。製作総指揮の鄭心媚氏と監製の林錦昌氏はオンラインで参加。米インド太平洋司令部の元副司令官マイク・ミニハン将軍(General Mike Minihan)、中国研究家ケントン・ティボー氏(Kenton Thibaut)らが討論に加わったが、彼らが見たのは本編ではなく「予告編」に過ぎなかった。

国際政治学者の方恩格氏は、「この作品を見た外国人が台湾をより支持することはあり得ない。完全な失敗だ」と痛烈に批判。さらに、「納税者の資金を投入した政府関係者は、国民に謝罪すべきだ」とまで述べている。 (関連記事: 台湾ドラマ『零日攻撃 ZERO DAY』最終回に現実離れの声 「小銃で中国軍を防げるのか」元少将が苦言 関連記事をもっと読む

比較:『ライフ・オブ・パイ』の5900万台湾ドルと『零日攻撃』の2億超 あまりにも小さな器量

投資には成功もあれば失敗もある。映像作品への出資や補助金は、他の分野に比べてもリスクが格段に高い。特に戦争をテーマとした作品では、2億台湾ドル(約9億円)規模の予算を「多い」とは言い難い。政府が「戦略的作品」と判断して追加支援を行うこと自体、決して不合理ではない。

最新ニュース
2025年ノーベル物理学賞 巨視的量子トンネル効果を実証し、量子技術の基盤を築く クラーク氏、デヴォレ氏、マーチニス氏が共同受賞
張鈞凱のコラム:「台湾有事は日本有事」という幻想と現実
舞台裏》「海鯤号」納艦延期の危機 台湾初の潜水艦プロジェクトで技術・人事の波紋広がる
トランプ版「台湾戦略」の2大柱:“限定支援”と“距離を取る姿勢” アメリカはもう台湾を守らないのか?
賴清德氏、トランプ氏に「習近平を説得できればノーベル平和賞」発言 TSMCが「アメリカを再び偉大に」?
「チェーンスーパー時代は終わった」元ネスレCEOが警鐘 イオンもヨーカ堂も赤字寸前
評論:賴清徳総統「トランプにノーベル平和賞を」発言が波紋 米中狭間で揺れる台湾の現実
ノーベル賞基金、資産は設立時の200倍に 100年超の「金融成功物語」 賞金が減らなかった理由とは?
天気予報》ダブル台風発生の恐れ 北東季節風が到来、10月15日から一気に秋模様へ 国慶連休に再び猛暑
台湾ドラマ『零日攻撃 ZERO DAY』最終回に現実離れの声 「小銃で中国軍を防げるのか」元少将が苦言
フランス史上最短命の首相、27日で辞任 マクロン政権が再び崩壊危機に
台湾発AI医療が世界をリード 脳波で「うつ病リスク」を数値化する新技術登場 診断を客観化、患者の治療意欲を高める
カーティス教授「自民党の統治モデルは行き詰まりにある」
現場》台湾・頼清徳政府の全社会防衛レジリエンス、花蓮のせき止め湖災害で試練 救助は国軍とスコップヒーローに依存
「高市トレード」が日本市場を揺るがす、アベノミクス再来か? 『フィナンシャル・タイムズ』:日本初の女性首相誕生カウントダウン、東アジアの地政
台湾民主化の記憶を写す 謝三泰写真展「街頭劇場、火燒島」東京で開幕
台湾の「ネット女神」Iris Huoが別府「ガレリア御堂原」を訪問 アートと温泉の融合に感嘆
デンソー、自社株買い4,000億円超に到達 TOBは2026年3月以降へ延期見通し
「U-NEXT MUSIC FES」10月7日から6日間連続配信 EXILE TAKAHIRO・いきものがかり・大塚愛ら豪華25組登場
東ハト、クリスマス限定パッケージや新作「イタリアンなげわ」を発売
フー・ファイターズ、フジロックの伝説が再び!1997年初登場から2023年最新ライブまで一挙公開
2025年ノーベル医学生理学賞 免疫の「ブレーキ」と「監視役」を解明 T細胞制御の研究が受賞、がん治療・自己免疫に光
ピーティックス、新サービス「Visiting Japan」開始 訪日外国人が日本のイベントを検索・予約可能に
舞台裏》台湾・国民党の内部抗争 鄭麗文氏の「主席」当選を警戒、実業家・楊建綱氏の台頭阻止へ 盧秀燕台中市長に結集圧力
楊佩蓉の視点:日本IT産業に迫る「2025年のデジタル崖」 老朽システムと人材不足の現実
全国の銘柄米が一堂に!AKOMEYA TOKYOが過去最大規模の「新米祭り」開催、限定「豚汁シリーズ」も登場
『HINOTORI:火の鳥』東京で世界初演 小池博史が放つ「人間再生」の叙事詩、日・ブラジル・ポーランドなど5カ国共同制作
【インタビュー】熟成とんかつの名店「Fry家」が四ツ谷に新店舗 ミシュラン掲載店の味を「日常のごちそう」に
独占取材》国内最大級アートフェス「MEET YOUR ART FESTIVAL 2025」始動 片寄涼太×アートのコラボも話題に
原宿で台湾の太陽を味わう!「TAIWAN FRUIT FRESH JUICE」期間限定オープン 南国フルーツジュースを無料提供
日本初の女性首相へ 「東京の鉄の女」高市早苗が誕生 右派台頭で東アジア情勢に新たな波紋
トランプ氏、連邦裁判所命令を無視 カリフォルニア州兵をオレゴンへ派遣し波紋拡大
高市早苗が開く「新しい日本」 日経平均4万8000円台へ急騰、金融市場が「高市効果」に反応
『ちいかわぽけっと』ハーフアニバーサリー開催 大阪・東京・名古屋で「アリス衣装ちいかわ」が登場!限定ノベルティも
自民党「高市新体制」人事決定、7日に正式始動 麻生派が中核に、古屋圭司氏を選対委員長に起用
調査》台湾で無給休暇が急増 9月7,334人→10月8,505人 米国20%関税で製造業直撃、労働部が支援強化
トランプ対中路線に転換観測 ジェンスン・フアン発言でMAGA陣営に亀裂、NVIDIA・TikTok巡り波紋
トランプ和平案で停戦協議合意、イスラエル・ハマス 2年の流血に終止符なるか
舞台裏》台海の平和は安倍氏の功績か 頼清徳氏が明かす政大「安倍晋三研究センター」の資金源
「女性版安倍」 高市早苗氏が自民党総裁に 対中強硬路線で北京反発、日中関係は悪化するのか
「台湾はトランプ氏を失った」論が拡大 日経アジア報道:趙怡翔氏が極秘訪米しトランプ陣営と接触 民進党は米台の溝修復を急ぐのか
親台の「鉄の女」 高市早苗氏が自民党総裁に選出 学者「試練はこれから」鍵は対中姿勢
夏一新氏の見解:日台外交の主導権を競う 国民党「訪日攻勢」と民進党「安倍研究センター」
米中交渉に「台湾カード」 習近平が1兆ドル規模の巨額投資でワシントンのレッドラインに迫る 米国議会強硬派、強烈な警告
無人機がロシアの石油供給を遮断 燃料不足とインフレ直撃、プーチンの巨額戦費モデルに限界
ガーディアン紙が警鐘「トランプ2.0時代」は『愚かさの制度化』が進行中 AI全盛でも試されるのは人間の想像力
テック人材争奪戦》米H-1B費用増観測で魅力後退、中国「Kビザ」不透明で失業若者反発
JR東日本クロスステーション、原宿で「なんでもいきもの」スタンプラリーを開催
台湾の果物が日本で大人気!輸出はほぼ独占状態、学校の給食でも使用されるほど、「ファンレベル」の支持を受ける
YOASOBI、新曲「劇上」で三谷幸喜ドラマ主題歌を担当 Ayaseが初のボーカル挑戦 結成6周年生配信も開催