ノーベル賞はすでに124年の歴史を経ており、1000人以上の受賞者に授与されてきたが、賞金を提供するノーベル基金の資産は減るどころか、非常に裕福な状態にあり、総資産価値は当初の金額の約200倍に増えている。
スウェーデンの化学者アルフレッド・ノーベルの最初の遺産は3,100万スウェーデンクローナ(約5億円)しかなかったが、現在では資本が61億以上のスウェーデンクローナ(約98億円以上)に達している。その背後には、基金の投資運用という百年を超える成功した金融商品がある。
初期の困難:保守的な投資がインフレーションに飲み込まれ、賞金の購買力は7割以上縮小
《自由時報》によると、1895年にノーベルは遺言を残し、一部の遺産を基金にしてノーベル賞を設立し、毎年基金の利息を使用して人類に大きな貢献をした受賞者に賞金を支払うことを望んだ。1900年になると、スウェーデン政府はノーベル基金を正式に設立した。
しかしながら、1901年から1950年までの最初の50年間、基金の投資戦略は非常に保守的で、主に国債などの「安全証券」に投資しており、資産の投資収益は2%から3%しかなかった。このような単一の保守的戦略により、ノーベル基金の資金はどんどん逼迫し、インフレーションの影響もあり、1945年までには、賞金の実質購買力は1901年と比べて7割以上減少していた。
投資戦略の大転換:制限を解除し、単一資産から多様な資産配置へ
基金の資産危機が転換点をもたらした。1950年代初頭にスウェーデン政府はノーベル基金の投資制限を解除し、株式や不動産への投資を許可した。
これにより、基金の投資戦略は保守的から徐々に積極的なものに変化し、単一の資産から多様な資産への配置へと移行し、市場動向に応じて継続的に調整した。
米国株の長期上昇:
1980年代には、米国株が長期のブル市場に突入し、ノーベル基金の収益も大幅に上昇した。1987年末には、基金が投入した米国株の資産総額は12億8700万スウェーデンクローナ(約2,078億6,337万円)に達し、1999年末には、資産総額は39億3800万スウェーデンクローナ(約6,360億2,638万円)に増大した。
賞金の波動と市場反映:
基金の賞金額も投資収益の波動に伴い変動した。例えば、2011年には世界の株式市場が全体的に不振となったため、賞金は1,000万スウェーデンクローナから800万スウェーデンクローナに減額された。
現代の投資ポートフォリオの秘訣
ノーベル基金の現代的な資産配置は大きな柔軟性とリスク分散能力を示している。《新華社》の報道によれば、2019年には基金は株式に50%以上投資し、不動産と基盤インフラに10%、固定収益類商品に10%、さらにヘッジファンドに25%投資している。
2020年には、基金の年間投資収益率は約9%に達し、2023年には資産総額が再び61億スウェーデンクローナ(約98億5,211万円)に上昇した。
財力のある基金は賞金の増額を決定。2023年にはノーベル賞の各部門の賞金が1,100万スウェーデンクローナ(約1億7,766万円)に引き上げられ、史上最高記録を作り、2025年まで続くことになった。このため、ノーベル賞の賞金価値は1901年当初と比較して実質的に300%増加している。
総括すると、ノーベル基金の成功は、教科書的ともいえる長期資産配置の事例であり、その核心となる哲学は保守的な思考を克服し、多様な投資を堅持することにある。この現代的な金融運用の規律がノーベルの遺産を百年を超えて継続的に表彰することを可能にした。
編集:柄澤南 (関連記事: 2025年ノーベル医学生理学賞 免疫の「ブレーキ」と「監視役」を解明 T細胞制御の研究が受賞、がん治療・自己免疫に光 | 関連記事をもっと読む )
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