10月4日、自民党の総裁選が行われ、最終的に高市早苗氏が当選した。得票は185票。日本メディアによれば、10月15日の特別国会で首相指名される公算が大きく、日本初の女性首相が誕生する見込みだ。台湾にとっては、高市氏の親台的な立場と外交的視野が、メディアや政策コミュニティで大きな関心を集めている。
翁履中氏の評価:親台の盟友だが、要は中国への向き合い方
米在住の学者、翁履中氏の分析では、前経済安全保障担当相の高市氏が総裁に選ばれたことで、保守勢力の再台頭と、安倍政権期からの「強い安全保障」路線の継続が示されたという。派閥均衡のうえに成り立つ日本政治の文化――「安定」と「強硬」の間で妥協を探る姿勢――も反映しているとみる。台湾にとって高市氏は明確な「親台」政治家であり、台湾の国際機関参加を長年公然と支持し、台湾海峡の平和は日本の安全に直結すると強調してきた点から、より強固な友好の獲得が期待できるとの評価だ。一方で、東北アジアの対中政策がより一貫した方向に進む可能性がある半面、高市氏が「強硬」と「安定」の間でどうバランスを取るかが肝心であり、過度に強硬でも過度に柔軟でも、日中関係や地域の微妙な均衡を揺るがしかねないと指摘。結びに、内政の再定義にとどまらず東北アジアの戦略構造にも影響が及ぶとし、台湾にとって決定的なのは「親台」そのものではなく、高市氏が中国にどう対峙するかだと強調した。
高市氏が親台・親台派とみなされる理由は
外交・防衛面で高市氏は明確な立場を示してきた。憲法改正を主張し、自衛隊の名称を「国防軍」へ改める案を支持。靖国神社参拝の経歴もある。台湾については「台湾有事は日本有事」と公言し、台湾海峡の平和と安定が日本にとって極めて重要だと繰り返してきた。過去には蔡英文氏とオンライン対談を行い、台湾の国際機関への参加、CPTPP参加、世界保健機関(WHA)へのオブザーバー参加を支持する姿勢を明確に表明。こうした立場は、両岸関係や地域の安全保障秩序において、現職を含む多くの日本の政治家に比べてより明確かつ積極的だと受け止められている。
蔡英文氏に学ぶ――「不屈」のロールモデル
高市早苗氏は、台湾の前総統・蔡英文氏を長らく敬意をもって語ってきた。自民党総裁選に立候補した2021年9月には蔡氏とオンライン対談を行い、「蔡総統は不屈の精神を体現する、憧れの女性。ぜひ直接お会いしたい」と述べ、日本は台湾との協力を確実に進めるべきだと明言した。発言の背景には、蔡氏のリーダーシップに対する共感と、台湾を民主主義の価値観を共有するパートナーと捉える政治的信念がある。 (関連記事: 日本初の女性首相誕生か 高市早苗氏が自民党総裁に 台湾民進党・陳冠廷氏「日台は新たな戦略段階へ」 | 関連記事をもっと読む )
日本社会への訴え――「台湾の友情」を忘れないで
高市氏は、日本と台湾の深い結びつきを繰り返し強調してきた。2021年12月23日には公の場で、東日本大震災時の支援や新型コロナ後の医療物資提供に触れつつ、「台湾の人々が日本に示した友情を忘れないでほしい」と呼びかけた。同年の衆院選で掲げた自民党の政策でも、自由・民主主義・法の支配といった普遍的価値を共有する相手として台湾支持を明記。CPTPP参加の後押しや、世界保健機関(WHO)へのオブザーバー参加の支持などを打ち出している。