北朝鮮の外交戦略に迫る　ジェニー・タウン氏がFCCJで最新分析を披露

米国シンクタンク「スティムソン・センター」のシニアフェローであり、北朝鮮専門サイト「38ノース」のディレクターを務めるジェニー・タウン氏が9月26日、日本外国特派員協会（FCCJ）で記者会見を開き、金正恩総書記の最近の外交活動や北朝鮮の核政策、中国・ロシアとの関係について分析を示した。

タウン氏はまず、金総書記が中国で開催された抗日戦争勝利記念日の軍事パレードに出席したことを挙げ、「北朝鮮外交における重要な節目」と指摘した。従来は限定的だった中国との関係に変化が見られるとし、「ロシアとの結びつきを強める北朝鮮が中国との関係を強調するのは、反西側連帯の拡大を狙った動き」と説明した。

核政策については、北朝鮮が既に核保有国であることを明言し、2022年には憲法に核兵器保有を明記したことを強調。「非核化交渉の可能性はほぼなく、核兵器は国家戦略の中核」と述べ、金総書記の演説も引用して、国際社会に核放棄の意思はないことを明確に伝えていると指摘した。

ロシアとの軍事協力についても触れ、「戦争経験や最新兵器の知見が北朝鮮に流入する可能性がある」と分析。ハードウェアそのものよりも、戦術や現代戦争に関する知識の取得が重要であり、日本や韓国にとって直接的な安全保障リスクが増すとした。

経済面では、新型コロナ禍で途絶した貿易が中国やロシアとの間で徐々に回復していると説明。「ロシアは北朝鮮労働者の受け入れや食料支援を通じて一定の経済協力を行っている」と述べる一方で、「市場改革は制限され、国内の脆弱性は解消されていない」と指摘した。

質疑応答では、韓国の核開発可能性について「南北関係と米韓関係はいずれも危険な時期にある」と答え、金総書記の娘キム・ジュエ氏が軍事パレードに登場した件については、「後継を示すより、正統性を演出する政治的パフォーマンスの意味合いが強い」と分析した。

最後にタウン氏は、北朝鮮が今後も中国やロシアと歩調を合わせ、西側諸国との対立を深める可能性を示唆。「国際社会は新たな安全保障環境に対応することを迫られている」と述べ、会見を締めくくった。

編集：田中佳奈