アメリカの第二次世界大戦で従軍した先住民の元兵士チャールズ・シェイ(Charles Shay)氏は、ノルマンディー上陸作戦で当時わずか19歳にしてドイツ軍の激しい砲火をものともせず、海岸と海のあいだを何度も行き来しながら重傷を負った兵士たちを浜へ引き上げ、死の淵から多くの戦友の命を救った衛生兵だった。晩年には故郷のメイン州から、生死をさまよったその地であるフランスへ移り住み、4日に自宅で亡くなったことが、友人のマリー・パスカル・ルグラン(Marie-Pascale Legrand)氏により明らかにされた。享年101歳であった。
アメリカのメイン州インディアン・アイランド出身のシェイ(Charles Shay)氏は、先住民族ペノブスコット族(Penobscot tribe)の一員として育った。ノルマンディー上陸作戦当日、氏は何度も冷たい海に身を投じ、波間にもがく重傷兵を海から引き上げて溺死から救い出したという。自らの命を顧みない行動が評価され、後にシルバースター章(Silver Star)を授与されている。
Charles Shay, a decorated Native American veteran who was a 19-year-old U.S. Army medic when he landed on Omaha Beach on D-Day and helped save lives, died on Wednesday. He was 101.
— ABC News (@ABC)December 4, 2025
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シェイ氏は生前、米CBSニュースの取材に当時の状況を振り返っている。「迫撃砲と砲弾が次々と降り注ぎ、上陸用舟艇のハッチが開いた瞬間、最前列にいた兵士の多くは容赦ない銃弾に倒れていきました。砲撃を受けて負傷し、そのまま海に落ちて自力で泳げない者も大勢いた」と語る。奇跡的に浜までたどり着いたシェイ氏は、再び海辺へ引き返し、助けを必要とする仲間をひとりでも多く救おうと決意したという。本人は当時を振り返り、「自分が死ぬかどうか心配している余裕なんてまったくなかった。考える暇すらなかった」と淡々と語っている。
多くの兵士を救い出したのち、氏は完全に力尽きて浜の上で眠り込んでしまった。目を開けると、周囲にはすでに息絶えたアメリカ兵とドイツ兵の遺体が横たわっていたという。その後もしばらくノルマンディーにとどまり、数週間にわたって負傷兵の救護にあたったのち、米軍部隊と共にフランス東部からドイツへと進軍した。1945年3月には一時ドイツ軍の捕虜となるが、数週間後に解放されている。


Dデイ(D-Day)当日、連合軍全体で4,414人が戦死し、そのうち2,501人がアメリカ兵だった。負傷者は5,000人を超え、ドイツ軍側も数千人規模の死傷者を出したとされる。
第二次世界大戦終結後、シェイ氏はいったん故郷へ戻る。しかし、先住民居留地の生活環境が厳しかったことから、再び軍隊に戻る道を選ぶ。その後も歴史の転換点に幾度となく立ち会うことになる。朝鮮戦争ではふたたび衛生兵として従軍し、マーシャル諸島で実施されたアメリカの核実験にも関わった。のちにはオーストリア・ウィーンの国際原子力機関(IAEA)で長年勤務している。
戦争の最も残酷な一面を目の当たりにしながらも、シェイ氏は60年以上ものあいだ、自身の従軍体験についてほとんど語らなかった。転機となったのは2007年で、Dデイの記念式典に参加するようになり、自らの経験を積極的に語りながら、平和への思いを伝える活動を始めた。

2018年にはノルマンディー海岸近くへ移住し、自分と共に上陸しながら戦死した戦友たちの眠る地に、少しでも近い場所で暮らすことを選んだ。新型コロナウイルス感染拡大で移動が制限されていた2020〜2021年には、各国からの参列者がほとんど来られず、ノルマンディーの追悼式典で連合軍側の元兵士としてただ一人、式典に出席していたこともあった。
晩年、ヨーロッパの地で再び戦争が起きる中で、シェイ氏は深い悲しみを口にしている。「ウクライナで起きていることは本当に胸が痛む。あの人たちに強い同情を覚えるし、なぜこんな戦争が起きてしまったのか理解できない」と語ったうえで、「1944年にこの海岸に上陸したとき、私たちは世界に永遠の平和をもたらせると、本気で信じていた。だが現実は、そうではなかった」と静かに言葉を結んでいる。
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