ノルマンディーで砲火の中負傷兵を救った米軍退役軍人チャールズ・シェイ氏が死去 101歳「これで世界は平和になると思っていた」

二次大戦ノルマンディー上陸作戦で、砲火の中から多くの重傷兵を救いシルバースター章を授与された米軍退役軍人チャールズ・シェイ氏。先日、101歳でこの世を去った。(AP)
二次大戦ノルマンディー上陸作戦で、砲火の中から多くの重傷兵を救いシルバースター章を授与された米軍退役軍人チャールズ・シェイ氏。先日、101歳でこの世を去った。(AP)

アメリカの第二次世界大戦で従軍した先住民の元兵士チャールズ・シェイ(Charles Shay)氏は、ノルマンディー上陸作戦で当時わずか19歳にしてドイツ軍の激しい砲火をものともせず、海岸と海のあいだを何度も行き来しながら重傷を負った兵士たちを浜へ引き上げ、死の淵から多くの戦友の命を救った衛生兵だった。晩年には故郷のメイン州から、生死をさまよったその地であるフランスへ移り住み、4日に自宅で亡くなったことが、友人のマリー・パスカル・ルグラン(Marie-Pascale Legrand)氏により明らかにされた。享年101歳であった。

アメリカのメイン州インディアン・アイランド出身のシェイ(Charles Shay)氏は、先住民族ペノブスコット族(Penobscot tribe)の一員として育った。ノルマンディー上陸作戦当日、氏は何度も冷たい海に身を投じ、波間にもがく重傷兵を海から引き上げて溺死から救い出したという。自らの命を顧みない行動が評価され、後にシルバースター章(Silver Star)を授与されている。

シェイ氏は生前、米CBSニュースの取材に当時の状況を振り返っている。「迫撃砲と砲弾が次々と降り注ぎ、上陸用舟艇のハッチが開いた瞬間、最前列にいた兵士の多くは容赦ない銃弾に倒れていきました。砲撃を受けて負傷し、そのまま海に落ちて自力で泳げない者も大勢いた」と語る。奇跡的に浜までたどり着いたシェイ氏は、再び海辺へ引き返し、助けを必要とする仲間をひとりでも多く救おうと決意したという。本人は当時を振り返り、「自分が死ぬかどうか心配している余裕なんてまったくなかった。考える暇すらなかった」と淡々と語っている。

多くの兵士を救い出したのち、氏は完全に力尽きて浜の上で眠り込んでしまった。目を開けると、周囲にはすでに息絶えたアメリカ兵とドイツ兵の遺体が横たわっていたという。その後もしばらくノルマンディーにとどまり、数週間にわたって負傷兵の救護にあたったのち、米軍部隊と共にフランス東部からドイツへと進軍した。1945年3月には一時ドイツ軍の捕虜となるが、数週間後に解放されている。

1944年ノルマンディー上陸作戦、「D-Day」にオマハビーチ付近で上陸を試みるアメリカ軍。(AP)
1944年ノルマンディー上陸作戦「Dデイ」で、オマハ・ビーチ付近への上陸を試みる米兵たち。(AP)
1944年ノルマンディー上陸作戦、上陸用舟艇から内部を指示するアメリカ軍。(AP)
1944年のノルマンディー上陸作戦で、上陸用舟艇から前方の浜へ向かう米兵たちの様子。(AP)

Dデイ(D-Day)当日、連合軍全体で4,414人が戦死し、そのうち2,501人がアメリカ兵だった。負傷者は5,000人を超え、ドイツ軍側も数千人規模の死傷者を出したとされる。

第二次世界大戦終結後、シェイ氏はいったん故郷へ戻る。しかし、先住民居留地の生活環境が厳しかったことから、再び軍隊に戻る道を選ぶ。その後も歴史の転換点に幾度となく立ち会うことになる。朝鮮戦争ではふたたび衛生兵として従軍し、マーシャル諸島で実施されたアメリカの核実験にも関わった。のちにはオーストリア・ウィーンの国際原子力機関(IAEA)で長年勤務している。

戦争の最も残酷な一面を目の当たりにしながらも、シェイ氏は60年以上ものあいだ、自身の従軍体験についてほとんど語らなかった。転機となったのは2007年で、Dデイの記念式典に参加するようになり、自らの経験を積極的に語りながら、平和への思いを伝える活動を始めた。

第二次世界大戦のアメリカ軍退役軍人シェイ氏はノルマンディーの海岸で多くの重傷兵を救い、シルバースター勲章を授与されましたが、先日101歳で逝去しました。(AP通信)
二次大戦ノルマンディー上陸作戦で、砲火の中から多くの重傷兵を救いシルバースター章を授与された米軍退役軍人チャールズ・シェイ氏。先日、101歳でこの世を去った。(AP)

2018年にはノルマンディー海岸近くへ移住し、自分と共に上陸しながら戦死した戦友たちの眠る地に、少しでも近い場所で暮らすことを選んだ。新型コロナウイルス感染拡大で移動が制限されていた2020〜2021年には、各国からの参列者がほとんど来られず、ノルマンディーの追悼式典で連合軍側の元兵士としてただ一人、式典に出席していたこともあった。

晩年、ヨーロッパの地で再び戦争が起きる中で、シェイ氏は深い悲しみを口にしている。「ウクライナで起きていることは本当に胸が痛む。あの人たちに強い同情を覚えるし、なぜこんな戦争が起きてしまったのか理解できない」と語ったうえで、「1944年にこの海岸に上陸したとき、私たちは世界に永遠の平和をもたらせると、本気で信じていた。だが現実は、そうではなかった」と静かに言葉を結んでいる。

中国語関連記事

編集:田中佳奈

最新ニュース
藤田文武共同代表、FCCJ記者会見で連立経緯・改革姿勢・政策論点を詳述
ヨーロッパ貴族の間で広がったカフェ文化―小皿「ソーサー」に秘められた意外な用途
ジェンスン・フアン氏、ワシントンでAI版「一帯一路」と国家安全保障を語る ファーウェイは評価しつつも、米国は迅速に競争で勝つべきとの見解
オーストラリアが世界初、16歳未満のSNS禁止令を10日に施行 FB・インスタ・TikTokが対象 各社の対応が焦点に
エア・インディア、耐空証明書切れの機体で8便運航 航空適航基準を無視し乗客を危険に晒す異常事態
橋本聖子JOC会長、スポーツの価値と平和の重要性を強調 FCCJで会見
第二のDeepSeek? 郭正亮氏「この中国AI企業」がテクノロジー界を震撼:市場価値の爆発可能性を指摘
張鈞凱コラム:島嶼の火種を生まないために──沖縄と台湾が担う「平和の使命」
中国人観光客は日本を避け始めた? ある国が「14日間のビザ免除」を発表するも、ネットでは驚きの反応「お金をもらっても行かない」
飛行機コックピットの「笑顔のうつ」 ロイターが暴く米民間航空の闇:免許と収入を守るため、パイロットは心の不調を隠す
ストリーミング戦国時代の最終局面 Netflixが約11兆円でワーナー・ブラザース買収合意、『ハリー・ポッター』『DC』が傘下コンテンツに
「Shinjuku Neon Walk」点灯式 鈴木愛理さんが特別ゲストとして登壇
中国、「サンフランシスコ講和条約」拒否を表明 ネットユーザー「台湾の日本復帰おめでとう!」と反応
中国「サンフランシスコ平和条約は無効」発言が波紋 下関条約と台湾の法的地位めぐり日台SNSで議論活発化
ホンジュラス大統領選、トランプ氏の「支持表明」影響浮上 開票率84%で1ポイント差
GREEN×EXPO 2027公式グッズに新商品5種 うちわ・巾着・ナップザックも登場
給付付き税額控除は日本で実現できるか 森信茂樹氏が制度設計の課題を指摘
日本新聞協会・中村史郎会長「生成AIの無断利用が報道を脅かす」 法整備の必要性を訴え
揭仲コラム:高市早苗首相発言で高まる対中緊張 中国の計算とは
AP通信社デイジー・ヴィーラシンハム社長兼CEOが会見 デジタル戦略とAI活用、報道の自由を語る
台湾・民衆党党首の黄國昌氏への批判が急増 柯文哲氏「鄭麗文氏よりも各番組が激しく黄氏を叩いている」
東ハト、12月の新商品を発表 受験生応援「カナエルコーン」と開運デザイン菓子が登場
単独インタビュー》台湾1.25兆台湾ドルの国防予算、米国はどう評価しているのか RAND専門家が解説
Nothing、世界のクリエイターと共創する「Phone (3a) Community Edition」を発表 12月9日公開
日本橋三越で「2025年報道写真展」12月10日開幕 東京写真記者協会賞2025作品含む約300点を展示へ
日本のデータセンター建設が進まない謎 クラウド大手が殺到しても建てられない、人手不足と旧態プロセスでゼネコンの予定は数年先まで埋まる
「中国版エヌビディア」摩爾線程(Moore Threads)が上場 初値468%高 創業者はNVIDIA出身
台湾、中国アプリ「小紅書(RED)」を1年間遮断 詐欺1700件超と情報セキュリティ不適合が理由
生成AI悪用か、快活CLUBで会員情報700万件超流出 17歳男子高校生を不正アクセス容疑で逮捕、警視庁発表
独占インタビュー》トランプ政権の「予測不能」は戦略か 元トランプ選挙対策責任者が語る米国の同盟観と対中・対日・対台姿勢
台湾大学で結核感染事例発生! 学生が「感染拡大の兆候」と噂、保健局が症例調査範囲の拡大示唆
台湾はトランプ氏を誤解? 台湾保証実施法案の裏にある「それでも米国の国益優先」 米シンクタンク「短期的に中国を刺激することはない」
石破茂氏、「李登輝氏は日本を最も理解している」と講演 日台中関係の複雑化を強調
麻生氏「中国に言われる位でちょうどいい」 高市首相の台湾有事答弁支持
米「台湾保証法案」成立で中国が猛反発 台湾外交部「覇権主義」と応酬
「力で平和を守る」台湾・頼清徳総統がNYTサミット登壇 習近平氏に「戦争より民生を」と異例の訴え
台湾の頼清徳総統、米NYTサミットで発言 「力による平和維持」を強調、民主陣営との結束の重要性訴え
中国人観光客、台湾パスポート風カバーで訪日か 台湾SNSで反発広がる
理想化された「配達員生活」に反発噴出 中国官製動画「現実とかけ離れている」と批判殺到、公開直後に削除
映画『アフター・オール・ディーズ・イヤーズ』15年ぶり公開 主演・大塚匡将とリム・カーワイ監督が舞台挨拶
資生堂が苦境に立たされる中、花王は逆風を乗り越えて成長する理由 日本の2大百年コスメブランドの運命を分けた3つのポイント
マレーシア航空MH370便の行方不明から11年、再捜索を決定!「約1085億円の報奨金」で航空史最大の謎解明を目指す
舞台裏》蔡英文時代の評価されなかった人物が賴清德時代に復活!法務部長の強い意志が反映された検察システムの激変
小田急ホテルセンチュリーサザンタワー、「ストロベリーアフタヌーンティー」期間限定開催 苺スイーツが主役の華やかティータイム
夢は美容師だった――ノーベル平和賞受賞者ナディア・ムラド氏、台湾・中央研究院で語った「ISによる性被害と生還」
アジア版「循環型都市宣言制度」が始動 横浜市が第1号都市に、国際枠組み本格化
中国の対日規制が強化 林佳龍外相、台湾有事めぐる緊張は「年単位」との見通し示す 日本への支持も表明
東京2025世界陸上、日本開催に好意的65.2% 電通調査で観戦熱とメディア効果が判明
静岡市で「ホビー×クリスマス」一体型イベント 模型・クラフト・マーケット横断の大型フェスタ12月開催
「GREEN×EXPO 2027」公式商品に新展開 サンリオコラボ第1弾に追加アイテム、12月5日発売へ