日本オリンピック委員会(JOC)の橋本聖子会長が26日、日本外国特派員協会で記者会見を行い、JOCの取り組みやアスリート支援、スポーツの社会的価値、平和への貢献、さらには国際大会運営の現状と課題まで、多岐にわたるテーマについて語った。

橋本会長は冒頭、自身がJOC初の女性会長である点に触れ、「JOCの活動を皆さまに知っていただき、これからどのような社会を築いていくべきかをお話ししたい」と述べた。JOCは「スポーツの価値を守り、つくり、伝える」ことを掲げ、1964年東京大会から100年後を見据えた長期構想「JOCビジョン2064」を紹介した。
会見では、気候変動をはじめとする地球規模の課題に対し、スポーツが果たせる役割についても言及した。「スポーツの力を社会の力へと変えていく取り組みを進めたい」と述べ、アスリートとともにウェルビーイングや多様性の推進に取り組む姿勢を示した。
近年SNS誹謗中傷が増える中、アスリートの心のケアも不可欠だと強調した。「触れなくてよい情報が簡単に心に入り込む時代になった」とし、東京世界陸上ではAIを活用した誹謗中傷対策を導入したことに触れ、2026年のミラノ・コルティナ大会でも同様の取り組みを進めたいと述べた。
平和への思いを語る場面もあった。橋本会長は1984年サラエボ大会に出場した経験に触れ、「スポーツが世界にもたらし得る影響を強く感じた」と振り返った。今年はJOC会長として初めて広島と長崎の平和記念行事に公式参加し、今後は子どもたちへの平和教育にも力を入れる方針を示した。
今年の世界陸上に関しては、ボランティアの半数以上が東京2020大会の経験者だったことを挙げ、レガシーが確実に受け継がれていると語った。さらに、日本で初開催となったデフリンピックの閉幕に触れ、聴覚障害を持つアスリートを支える環境整備の必要性を訴えた。
愛知・名古屋を中心に開催されるアジア大会・アジアパラ大会については、45の国と地域が参加する予定であり、「競技力の最大化と社会的インパクトの最大化を柱に、多くの人が大会に関わる機会をつくりたい」と述べた。スポーツには人種や宗教を超えて希望を生み出す力があると強調した。
質疑応答では、東京大会の汚職問題について「やってはならないことであったのは事実」と述べ、「経緯を調査し、オープンな形で進めていく必要がある」と説明した。札幌による2030年冬季五輪招致断念については「残念な決断だった」としつつ、分散開催の流れや環境問題を踏まえ、30年後、50年後を見据えた新たなビジョン策定が重要だと語った。
女性アスリートの健康課題については、月経異常や摂食障害、厳しいトレーニングによる若年層の健康被害に触れ、「命と健康、心を守り抜くことがスポーツの使命」と述べ、産婦人科学会と連携して改善に取り組んでいると説明した。
ジェンダー平等の分野では、日本のジェンダーギャップ指数が118位にとどまる要因として、政治分野における女性の少なさを指摘。スポーツを通じた女性リーダー育成やセカンドキャリア支援の必要性に触れ、「地域社会に根付く女性を育てることがスポーツの大切な役割だ」と述べた。
会見の最後に橋本会長は、「JOCが国際的議論の中心に入り、提案を行っていくことが使命だ」と述べ、スポーツを通じて社会に貢献していく姿勢を強調して締めくくった。
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