大阪・関西万博2025、閉幕1カ月で総括を報告 高科淳副事務総長が成果と課題を説明

2025年大阪・関西万博の閉幕から約1カ月を経て、高科淳副事務総長が会見で運営収支の黒字達成や来場2900万人超の成果、インバウンド比率の低迷、語学対応や未払い問題などの課題を総括した。(写真:FCCJ)
2025年大阪・関西万博の閉幕から約1カ月を経て、高科淳副事務総長が会見で運営収支の黒字達成や来場2900万人超の成果、インバウンド比率の低迷、語学対応や未払い問題などの課題を総括した。(写真:FCCJ)

2025年4月13日から10月13日まで大阪夢洲で開催された大阪・関西万博が閉幕して約1カ月、万博協会の高科淳副事務総長が11月14日、外国特派員協会(FCCJ)で会見し、万博運営の成果と課題、今後のレガシー継承について詳細に語った。会場建設費と運営費を切り分けて整備してきた経緯、来場者数が目標を超えた背景、インバウンド比率の低迷、語学対応や予約システムの課題、建設費未払い問題への見解など、開催を巡る論点も整理した。

2025年大阪・関西万博の閉幕から約1カ月を経て、高科淳副事務総長が会見で運営収支の黒字達成や来場2900万人超の成果、インバウンド比率の低迷、語学対応や未払い問題などの課題を総括した。FCCJ
2025年大阪・関西万博の閉幕から約1カ月を経て、高科淳副事務総長が会見で運営収支の黒字達成や来場2900万人超の成果、インバウンド比率の低迷、語学対応や未払い問題などの課題を総括した。(写真:FCCJ)

高科氏は冒頭、「いのち輝く未来社会のデザイン」を掲げた今万博には158の国・地域と7つの国際機関が参加し、184日間で2900万人超が来場したと説明した。協会が“成功の必要条件”として掲げていた①重大事故を起こさない、②運営収支の黒字化、③多くの来場者を迎える、の3点はいずれも達成できたと強調した。会期中には猛暑や交通トラブル、長い待機列などの課題もあり、SNSやアンケートの声を基に「毎日改善」を重ねた結果、来場者からの評価につながったと述べた。

また、開催期間中には多くの国がビジネスミッションを派遣し、公式参加者や招待者約350人が参加する交流プログラムも行われたと説明。横浜の国際園芸博(2027年)、セルビア・ベオグラード(2027〜28年)、サウジアラビア・リヤド(2030年)での国際博覧会に向け、今回得られた知見を共有していく考えを示した。

インバウンド比率は5.2%にとどまり、当初想定の13〜14%を下回った理由については、「日本人のリピーターが非常に多かった一方、海外からの複数回訪問が難しかった」と説明した。SNS発信が日本国内で広がり来場増につながった一方、海外に波及しづらかった点も課題として挙げた。ウェブサイトの多言語対応が不十分だったという指摘については、「改善を重ねたつもりだが十分ではなかった」とし、次回に向けた反省点だと述べた。

地元経済への影響については、国が事前に試算した「2.9兆円」の経済効果に触れつつ、スタートアップ企業の参加やヘルスケアパビリオンでの400社超のプレゼンテーション、万博を機に大阪で新たな取り組みを始めた企業が多かったことを挙げ、「数字に表れない効果も今後地元へのインパクトとして現れる」と述べた。

一方、建設費を収支に含めない「運営収支」の考え方に対する質問には、会場建設費と運営費は最初から別会計で整備し、建設費は国・大阪府市・経済界が3分の1ずつ拠出したと説明した。「建設費を超えないようにマネジメントしてきた」とし、運営費は入場料やライセンス収入で賄い黒字化したとあらためて述べた。

建設費の未払い問題については「契約当事者は協会ではなく、協会が直接支払う立場にはない」と述べつつ、法令に基づき国や大阪府市と連携して対応を進めていると説明した。解体作業が進められないとの懸念については、「現時点で業者が見つからないという声は聞いていない」とし、交渉中の案件も含め順調に進んでいるとの認識を示した。

キャラクター「ミャクミャク」については、当初は「怖い」など否定的な声も多かったが、立体的なビジュアルが浸透し、子どもたちの反応も良くなって人気が逆転したと述べた。ライセンス使用の期限は年度末まで延長しており、今後の扱いは検討中としている。

高科氏は最後に「今回生み出された学びや経験が中長期的に次の万博に継承され、未来社会をともにデザインする契機となることを願う」と語り、会見を締めくくった。

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