民衆党前主席で元台北市長の柯文哲氏は8日、保釈が認められ勾留を解かれた。台北地検の前で「台湾は私たちの存在によってより良い国になれる。賴清徳総統のように国を四分五裂させてはならない」と述べ、この事件は根拠のない冤罪だと強調した。京華城案件で名を挙げられた同級生の李文宗氏は市政に関与しておらず、自身も当時は台北市政府にいなかったのに、わずか1通のメッセージを理由に11か月も勾留されたと訴えた。さらに「台湾が民主化して30年、なぜまだこんな冤獄があるのか」と憤りを示し、「私の苦難はこれで終わるが、台湾がより良い方向に進むことを望む。賴清徳総統はよく考えるべきだ」と呼びかけた。その後、台北地検近くで支持者と短く交流し、新竹の実家に戻り母を見舞う予定だ。
この1年間支えてくれた支持者たちへの感謝も口にした。父親が重体となり最も苦しい時期にも、多くの声援が彼を支え、「皆の励ましがあったからこそ、ここまで耐えられた」と振り返った。
リコール騒動と検察捜査への強い疑問
事件はすでに1年間にわたり台湾社会を騒がせてきた。その間、検察は本人の口座だけでなく、妻の陳佩琪氏や3人の子どもの口座まで国内外で徹底的に調査。自宅や事務所、民衆党中央党部に加え、李文忠氏や李文娟氏の自宅、さらには助手や秘書の家まで家宅捜索が及び、銀行の貸金庫も開けられた。自宅にあったUSBメモリは「暗号資産ウォレットが隠されていないか」と調べられたという。
柯氏は「検察は1年も調べて一体何を見つけたのか」と疑問を突きつける。民進党は民衆党がこれほどクリーンだとは想定していなかったのではないかと皮肉を込めて述べ、市政府の公務員は「手続きはすべて合法であり、上司から特別な指示もなかった」と証言していることを紹介した。都市行政や都市計画の専門家でもない検察官が、なぜ公務員全員が合法と認める案件を違法と断じられるのか――。1年間の勾留が法的根拠の議論すら終わらない中で続いたことに強い憤りを示した。
また、この1年で裁判官や検察官、廷吏(法廷警備員)ら多くの司法関係者と接した経験にも触れた。率直に言えば、多くの廷吏は自身の支持者であり、皆まじめに仕事をしていたという。それだけに「わずか数人の検察官が、中華民国の司法全体への信頼を破壊した」と強調。大多数の司法関係者は公正に職務を遂行しているにもかかわらず、少数の行動が司法制度全体の信頼を損なったと訴えた。そして、7月の大規模リコールで民進党が32戦全敗した背景にも、検察の強引なやり方が大きく影響していると指摘した。
勾留生活と「反省の1年」
今回の勾留は大きな苦痛だったとも明かす。刑務所生活は規則正しく人との接触もあるが、接見禁止を伴う勾留は24時間光の入らない小部屋で、声しか聞こえず人の顔を見られない。「まるで特別な囚人のように扱われ、房を出る時は他の受刑者が全員立ち止まり、壁を向かされる」と述べた。
それでも「1年間の勾留は自分を省みる機会になった」と語る。30年間外科医を務め、8年間台北市長を務めた自身は「時に強硬すぎ、短気だった」と反省。収監中に社会の弱者の実情に直面できたと振り返った。所持金ゼロで通院費170元すら払えない人や、詐欺グループの「出し子」として収監された若者から高齢者までがいたという。
最後に柯氏は、ある看守から「人に対する情熱を失わないでほしい」と言われたことを引用し、「人生で最も難しいのは挫折や打撃を受けても、人への情熱を失わないこと。だからこそ前向きな姿勢と善意を持ち続け、全力を尽くしたい」と締めくくった。
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