アップル(Apple)の年次発表会が開催され、新たに「iPhone Air」が登場した。軽量化と耐久性を強調したデザインで、最新のA19 Proプロセッサーを搭載している。注目すべきは、米国のトランプ大統領による関税政策により、同社が今季10億ドルを超える損失を被る可能性があるにもかかわらず、アップルは「価格据え置き」を選択し、前世代と同水準の販売価格を維持した点である。これにより、サムスンやグーグル、中国ブランドとの激しい競争に立ち向かう姿勢を鮮明にした。
iPhone Air:史上最も薄く、最も耐久性がある
アップルは今回の発表会で「iPhone Air」を目玉商品に位置づけ、価格は999ドルからと発表した。新機種には調整を加えたA19 Proチップが搭載され、エネルギー効率と性能が向上し、より薄型のバッテリーデザインを支える構造となっている。
ティム・クック最高経営責任者(CEO)は「これはiPhone史上最大の飛躍だ」と強調した。
iPhone Airの投入は、サムスンのGalaxy S25 Edgeとの正面対決に向けた重要な一歩とみられ、折りたたみスマートフォン市場への布石とも受け止められている。アナリストは、中国の消費者が折りたたみ端末を好む傾向がある一方で、アップルの中国市場でのシェアが徐々に低下していることを指摘し、この戦略が今後の勢力図を左右すると分析している。
新製品同時発表:iPhone 17シリーズ、AirPods Pro 3、Apple Watch
iPhone Airのほか、アップルは同時に新製品を発表した。
iPhone 17の基本モデル(256GB)は799ドルで、前世代のiPhone 16と同じ価格設定となった。iPhone 17 Pro(256GB)は1099ドルで、こちらも昨年と同水準を維持したが、999ドルの小容量モデルは廃止された。
さらに、AirPods Pro第3世代と新型Apple Watchも登場。新しいApple Watchは、初めて血圧測定機能を搭載した点が大きな特徴となっている。
いずれの新製品も値上げは行われず、関税の影響で価格上昇が避けられないとの市場の予測を覆す形となった。
価格戦略:関税コストを吸収
IDCのアナリスト、トム・メイネリ氏は「アップルは自社の規模の優位性を生かし、関税コストを自ら吸収することで価格を据え置いている」と指摘した。
同氏はさらに、関税が消費意欲を抑制しかねないことをアップルは十分理解しており、特に米国の年末商戦に向けて「価格の下限を守る」ことが不可欠であり、それによって消費者が買い替えに踏み切る環境を確保していると強調した。
アナリストの見解
PP Foresightのアナリスト、パオロ・ペスカトーレ氏は、iPhone Airが長年大きなデザイン変更が乏しかったiPhoneに新鮮さをもたらすと評価した。さらに、刷新された多様な製品ラインアップによって、アップルはより幅広い層を取り込み、市場での競争力を強化できるだろうと指摘した。
編集:柄澤南 (関連記事: 中国製と別れ、Made in Indiaへ? iPhone産業チェーンがインドに移転、専門家が3つの懸念を分析 | 関連記事をもっと読む )
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