陸文浩の視点:カナダ・豪軍艦が英空母を北方支援 中露合同巡航に対抗し、中国軍が共同戦備を開始

2025-09-10 15:18
カナダ海軍のハリファックス級フリゲート「ケベックシティ」(HMCS Ville de Québec, FFH 332)。(写真/Canadian Defence Review)
カナダ海軍のハリファックス級フリゲート「ケベックシティ」(HMCS Ville de Québec, FFH 332)。(写真/Canadian Defence Review)

台湾国防部は9月8日、前日7日に台湾周辺海域で中国軍機27機、艦艇7隻、公船2隻が活動したと発表した。午前7時以降、中国軍機25機が出動し、艦艇とともに「合同戦備警戒巡航」を実施。そのうち14機が台湾海峡の中間線を越え、北部・中部・南西空域に侵入したという。

中国軍はこれまでも、外国艦船が台湾海峡を通過すると監視任務を行い、その翌日には台湾周辺で「合同戦備警戒巡航」を展開する動きを繰り返してきた。

今回の背景には、英国空母の動きがある。9月2日、英国空母が東京を出航し、津軽海峡を通過して日本海へ進入。続いて6日にはカナダとオーストラリアの艦隊が台湾海峡を北上し、日本海で空母を支援した上で東シナ海に南下し、日米韓との合同演習に合流する計画だった。これは、中国とロシアが進める東北アジアでの第6回合同巡航に対抗する模擬作戦と位置づけられている。

この際、中国軍東部戦区はカナダ・オーストラリア艦隊の北上を監視し、陸軍航空兵の武装ヘリ「Z-10」を投入した。さらに長距離ロケット砲部隊や無人機なども訓練に加わり、陸海空の一体運用を誇示する狙いがあったとみられる。筆者は、中国東部戦区による「合同戦備警戒巡航」の開始は、従来の軍事行動の延長に加え、中国外交部や国台弁が「一つの中国」原則や領土主権を強調し、内外の政治情勢と連動しているためだと指摘している。

一方、南シナ海をめぐる緊張も高まっている。フィリピン大統領府は今年4月、台湾からの経済・貿易使節団を歓迎する意向を示しつつも、大統領、副大統領、外相、防衛相には台湾当局者との接触を禁止していた。しかし8月28日には台湾の林佳龍外交部長が経済・貿易団を率いてフィリピンを訪問。これに対し、9月3日にはフィリピンのテオドロ国防相が中国を「偽善的」と批判し、5日には中国外交部の郭嘉昆報道官が「レッドラインを越えれば代償を払うことになる」と牽制した。

さらに8月15日から29日にかけて、フィリピンとオーストラリアは過去最大規模の合同演習「エクササイズ・アロン(Exercise Alon)」を実施。これに対抗する形で、中国南部戦区の海軍や海警、民兵、漁船が警戒態勢を強化した。仁愛礁や黄岩島の主権問題を背景に、中比間では外交・国防両面で緊張が一層高まっている。

加えて、中国の北部・東部・南部各戦区は、監視任務の引き継ぎや重要拠点に対する監視活動を進めており、戦場状況の把握や外国艦船の動向を重点的に警戒する体制を強めている。 (関連記事: 陸文浩の見解:「軍事パレード」直前、中国沿岸で航行禁止措置なし 民間RORO船は訓練継続か 関連記事をもっと読む

カナダ海軍のハリファックス級フリゲート「ケベックシティ」(HMCS Ville de Québec, FFH 332)と、英国の「エリザベス女王」級空母「プリンス・オブ・ウェールズ」(R09)の混成部隊に加わっていたオーストラリア海軍のホバート級駆逐艦「ブリスベン」(HMAS Brisbane, DDG 41)など2隻は、9月2日午前9時30分にフィリピン・スービック湾の米軍基地を出発。翌3日、西フィリピン海の排他的経済水域内(中国が主張する黄岩島の東海域)で、フィリピン海軍のフリゲート艦「ホセ・リサール」とともに第10回「多国間海上協力行動」を実施した。

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