ガザの人々の日常の苦難を記録したドキュメンタリー「Voices from Gaza」の上映と記者会見が9月9日、日本外国特派員協会(FCCJ)で行われた。監督のモハメド・サワーフ氏と製作スタッフのガーダ・アブドゥルファッターフ氏がガザからオンラインで参加し、日本での配給を担うアップリンクの浅井隆社長が登壇した。

アップリンク浅井社長「迅速な配信で世界に届けたい」
浅井氏は、通常映画は公開まで数年を要するが「ガザの状況はそれを許さない。世界に早く届ける必要があると判断し、オンライン配信を決めた」と述べた。第1話はすでに8月22日に配信され、日本語・英語・フランス語で視聴できるという。
ガーダ氏「虐殺的な戦争、誰も例外ではない」
ガーダ氏は「700日以上続く戦争は、子どもから高齢者まで誰一人として免れていない」と強調。空爆だけでなく飢餓や避難生活、教育の停止といった多層的な被害が広がっていると証言した。さらに「サワーフ監督自身も両親やきょうだいを含む47人以上の家族を失った」と述べ、「ガザの声を世界に伝えることが重要だ」と訴えた。

サワーフ監督「運命に委ねられている感覚」
途中から接続したサワーフ監督は「市民をガザ市から追い出し完全に占領する意図がある」と指摘。「我々は終わりなき避難を強いられている。国際社会が圧力をかけない限り、この大量虐殺は止まらない」と危機感を示した。また「パレスチナ人は数字ではなく人生を持つ存在だ。私の役割は真実を映像で伝えることだ」と語り、既に250人以上のジャーナリストや制作者が命を落としたと明かした。
女性制作者の視点
女性の役割を問われたガーダ氏は「燃料が途絶え、女性たちは木を集めて調理し、家事や生活を担いながら同時に物語を記録している」と答えた。「私たちは被害の当事者であり、同時に語り部でもある」と述べ、女性が日常と戦争の双方を語る責務を負っていることを強調した。

今後の展望と日本への期待
今後の制作について、サワーフ監督は「ガザの人々一人ひとりが物語を持っている。生きてカメラを持てる限り記録を続けたい」と決意を示した。浅井氏も「U-NEXTをはじめ国内外の配信網を通じて作品を広げたい」と述べ、継続的な発信を誓った。
会見の最後にガーダ氏は「いつか停戦が訪れ、戦争ではなく海やイチゴ畑、音楽や夢を語るガザの物語を伝えたい」と語り、会場は静かな共感に包まれた。
編集:柄澤南 (関連記事: 「ガザは世界最大の墓場に」パレスチナ大使が東京で訴え 「日本は歴史の正しい側に立つべき」と国家承認を呼びかけ | 関連記事をもっと読む )
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