中国外交部は9月8日の定例記者会見で、日本の国会議員・石平氏への制裁を発表した。報道官の林剣氏は、「石平はかつて中国籍を持ち、日本国籍を取得した後に虚偽の情報を広め、台湾や尖閣諸島、歴史、チベット、新疆、香港などに関して極端な発言を繰り返してきた」と批判した。これに対し、林芳正官房長官は同日午後、「国会議員としての発言の自由は日本の民主主義の根幹であり、尊重されるべきだ。政府は外交ルートを通じ、中国に制裁の撤回を強く求める」と表明した。
石平氏は、中国が《反外国制裁法》を改正・施行して以来、制裁を科された初の日本国会議員となった。以前から「台湾問題は日本問題だ」との発言が北京の反発を招いていたほか、日本政府が9月3日の中国軍事パレードに対し「日本の国際的イメージに影響を与える」と各国に伝えていたことも、今回の制裁の背景とみられる。専門家は「北京は石平氏を狙い撃ちすることで日本政府に圧力をかけ、他の議員への警告効果を狙っている」と分析している。
石平氏の当選が火種に 保守政党内で亀裂
在日民主運動組織「対話中国日本支部」の王進忠代表は取材に対し、「今回の制裁は米国籍の余茂春氏への制裁と同じく『一罰百戒』の性格を持つ」と語った。余氏は2022年、中国外交部から「売国奴で反中勢力に加担した」と名指しされた経緯がある。
王氏によると、石平氏は当選後、日本の保守政党から「中国から送り込まれたスパイ」との批判を浴びたという。しかし、中国が今回発表した声明は、むしろ石平氏を「スパイ」とする国内右派の言説を否定する形となっている。
また王氏は、党首が右派色を強める一方で、事務局長の有本香氏は新疆問題に関心を寄せ、世界ウイグル会議を支持していると指摘。石平氏と有本氏が共演したYouTube番組も波紋を広げ、日本の保守陣営内での立場の違いを浮き彫りにしたと説明した。
華人の政治参加ブームとスパイ論争
王進忠氏は、石平氏が日本の政界に参加した初めての華人ではないと指摘する。その前例として、新宿・歌舞伎町で「案内人」として知られる李小牧氏を挙げた。李氏は現在「湖南レストラン」を経営しながら政治活動に積極的に関与しており、台湾の民主主義にも関心を寄せている。彼はまた、日本で区議選に立候補した初の華人でもあり、《風傳媒》の特集記事では「台湾人にも馴染み深い存在」と紹介された。
さらに王氏は、李小牧氏が昨年の六四事件記念集会で演説を行ったこと、同じ場に日本初のウイグル系参議院議員・英利アリフィア氏も参加していたことを指摘した。
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英利氏は1988年に福岡県北九州市で生まれ、両親は新疆出身で、父親はウイグル族、母親はウズベク族である。日本メディアにアイデンティティを問われた際、彼女は「私はずっと日本人だと思っている」と答えている。
王氏は「帰化した華人が日本の政界に挑戦する事例は今後ますます増えるだろう」と述べた。