先週、台湾環境部は風力発電事業者に対し公文を発出し、台湾東部海岸への風力発電機建設について「奨励も支持もしない」との立場を示した。
これは評価すべき動きである。民進党政権が約10年にわたる熱狂的で拙速かつ非合理的な「グリーン電力大躍進」による生態環境の破壊から、ようやく一部の部門が目を覚ましたことを意味するからである。しかし、これだけでは不十分である。賴政権全体、さらには民進党全体が、この「非理性的な躍進」から抜け出す必要がある。
台亜風能公司は台東海岸に58基の陸上風力発電機を建設する計画を打ち出したが、発表直後から地元で強い反発を招き、与野党を問わず政治家が反対の意を示した。従来、同様の案件に対して中央の関係部会は「実績拡大」を優先する姿勢から、ほぼ一貫して支持・推進の立場を取ってきた。
しかし今回は、経済部と環境部が先週、風力発電事業者に対し公文を発出し、地元の反対意見を伝達した。形式上は立法委員からの要請に応じた対応といえるものの、過去の姿勢と比べれば一定の変化が読み取れる。特に環境部が示した「奨励も支持もしない」という表現は、事実上の否定に近く、仮に計画が環境影響評価段階に進んでも、これまでの「政策的開発案件」と同様に環境部の「後押し」を受けることは期待できない。
この風力発電計画は、有形・無形を問わずコストとベネフィットを比較すれば明らかに割に合わず、費用と代償が効果を大きく上回る。風力発電の唯一の利点は電力供給にあるが、巨大な風車が景観価値を高めると考える人は少ないだろう。開発業者は「ある地域の年間電力需要を賄える」と強調するが、実際の年間供給量は約10億キロワット時にとどまる。これに対し、出力50万キロワット規模の火力発電機1基は年間約40億キロワット時を供給可能であり、全体需要に占める割合から見ても、今回の計画は0.5%にも満たない水準である。
しかし、その代償は極めて大きい。東部地域は豊かな山河を誇るが、風力発電機が建てられれば景観は大きく損なわれる。さらに、渡りを行う猛禽類や蝶類、河口で繁殖する鳥類など、既存の生態系も風車の稼働によって深刻な脅威にさらされる。特に南廻海岸はアカハラダカやサシバの渡りの回廊に当たり、その影響は計り知れない。
58基程度であれば影響は限定的だとみなす向きもあるかもしれない。しかし、この考え方は「局所的な破壊」が全体に及ぼす波及効果を過小評価している。破壊は単純な比例関係ではなく、倍加的に拡大する。例えば、アカハラダカやサシバが飛来する南廻海岸では、数基の風車を設置するだけで渡りの回廊そのものが破壊され得る。
さらに、この計画が認められれば「割れ窓効果」に似た連鎖が生じ、他の事業者も東海岸に次々と風車を建設する可能性が高い。実際、台東に加え、同じ事業者は宜蘭でも風力発電を計画しており、五結郷から蘇澳鎮にかけて約7キロの海岸線に14基の陸上風車を設置する構想を打ち出している。宜蘭は台湾有数のバードウォッチングの名所であり、秋冬の渡り鳥や冬鳥は愛好者にとって大きな魅力となっている。その計画地は蘭陽渓河口湿地や生態保護区と隣接しており、そこに及ぼす影響や破壊の規模は容易に想像できるものである。