「TENNOZ ART WEEK 2025」のプレス向け内覧会では、WHAT CAFEで企画展「Seesaws」が紹介された。登壇したのはインディペンデントキュレーターの板橋令子氏で、「今回は19名の女性アーティストによるグループ展で、自然と人との関係性を基点にキュレーションした」と説明。植物や石などの自然素材を使った作品から、糸や布、刺繍を用いた作品まで幅広い表現が集まり、自然と人間をつなぐ多様なアプローチが提示された。

板橋氏は「一見異なるカテゴリーのように見えるが、すべては自然の循環の中でつながっている」と語り、展示タイトル「Seesaws」には「揺れ動く価値観のバランス」と「She saw=女性の視点」を込めたと解説。さらに展示空間は「SOW(種をまく)」と「SAW(縫う)」の二つの意味に基づいて構成され、植物を扱う作品群と布や刺繍の作品群を左右に分けて配置した。「歩きながらグラデーションを感じ、共通項を発見してほしい」と呼びかけ、来場者は作家本人との交流も楽しんだ。


続いてBONDED GALLERYでは、企画展「Blurred:交錯する境界」が紹介された。登壇した奈良祐希氏は、建築と陶芸を横断しながら伝統技法とデジタルを融合させた制作を解説し、土を幾度も積層し焼成することで時間の痕跡を浮かび上がらせる試みを語った。能條雅由氏は、写真や銀箔を重ねて白一色で画面を再構築する作品について「記憶の曖昧さを表現し、距離や角度によって像が現れたり消えたりする」と説明した。 (関連記事: TENNOZ ART WEEK 2025開幕目前 諏訪敦「きみはうつくしい」個展とナイル・ケティング新作に注目 | 関連記事をもっと読む )


さらに久野彩子氏は、都市の構造や変化をテーマにした立体作品を紹介。「都市の痕跡を俯瞰し、ロストワックス鋳造で金属に置き換える過程を通して、生成と変化の瞬間をかたちにした」と述べた。有機的な曲線を取り入れた新作では、光と影の豊かさを際立たせることを意識したと語り、企画担当の島雄豊氏も展示の背景を補足した。解説後は自由鑑賞の時間が設けられ、来場者は作家と直接言葉を交わしながら作品を鑑賞し、熱心に撮影する姿も目立った。