民進党系勢力が「大規模リコール」に二度失敗したことで、台湾の政治情勢はすでに海外からも注目を集めている。一方、日本では石破茂首相が退陣を表明し、新しい自民党総裁兼首相は10月4日に選出される予定である。しかし与党が単独で多数を確保することは難しく、政局は不安定さを増している。こうした状況が台湾海峡の情勢や台湾の安全保障に影響を及ぼすのではないかと、国際社会から懸念が寄せられている。
米国では、トランプ大統領による「相互関税」や「通商拡大法232条」に基づく調査が進められており、台湾を含むアジア太平洋地域の産業に深刻な影響を与えている。台湾国内では「対米不信論」が浮上する事態にも発展している。これに関して、台湾事情に詳しい元日本の資深外交官は、米国や日本の内部で台湾の安全保障に関し足並みがそろわない可能性を指摘。その上で、台湾の与野党が協力し、必要であれば「秘密会談」を検討すべきだとの考えを示した。

台湾の与野党の分裂を懸念
蔡英文前総統の政権時代に台湾に駐在した経験を持ち、中国語に堪能な日本台湾交流協会台北事務所の前代表、泉裕泰氏は、木曜日に東京で訪日中の国民党青年団と会談し、台湾の安全は三つの「一致」にかかっていると指摘した。すなわち、日米同盟における一致、米国内の一致、そして台湾国内の一致である。泉氏は「トランプ大統領の登場により、米国内の一致は揺らぎ始めている。台湾政策においては超党派での一致が維持されることを祈念する」と語った。
40年の外交経験を持ち、現在は日本のシンクタンク「笹川平和財団」で上席研究員を務める泉氏は、日本国内の状況について、自民党の政治基盤が徐々に弱体化し、少数与党に転じている現状を挙げた。その上で、「今後、日本国内で台湾政策における高度な一致を確保できるかは不透明だ」との見方を示した。
一方、中国については「国内に多くの問題を抱えるが、だからこそ対外的に強硬姿勢をとる可能性が高い。台湾は極めて警戒を要する局面にある」と分析した。さらに、台湾内部の一致に関しては「与野党の分裂が深刻であり、立法院の状況を外から見ても残念に思う」と懸念を表明した。
泉氏は、こうした内外の情勢を踏まえ「台湾の友人として、与野党が合意を形成し、政党の利害より台湾の安全を優先してほしい」と強調。そのためには具体的に、国防予算を政争の具にせず、超党派で国防力を強化することが必要だと提案した。
また「民進党と国民党の指導者が率直に話し合う秘密会談を、例えば毎月一度でも定期的に実施すべきだ」とも呼びかけた。自身の4年間の台湾勤務経験から「国民党の若い世代は現状維持を強く支持しており、安全保障問題では両党が十分に協力できる余地があると確信している」と述べた。 (関連記事: 大規模リコール後も台湾は民主の模範か?学者が警告 分極化こそ最大の安全保障リスク | 関連記事をもっと読む )

軍事リスクは蔡英文政権時代より高いか?
泉裕泰氏は、中国が2024年に実施した軍事演習において約210億ドルを投入し、前年より40%増加したと指摘した。また、過去の「九三軍事パレード」でも50億ドル以上を費やしており、その際には多数の新型兵器が登場したと述べ、「これらは台湾攻撃に向けた具体的準備であり、軍事的リスクは私が台湾代表を務めていた頃よりも高まっている」と警鐘を鳴らした。