ASML徹底解剖》TSMCとの提携で壁も?半導体作家が語る「露光装置の覇者」がいかに神山を取り込んだか

2025-09-13 19:11
ASMLのオランダ本社。(写真/顏麟宇撮影)
ASMLのオランダ本社。(写真/顏麟宇撮影)
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AIの波が押し寄せるなか、半導体需要は急速に拡大し、米中の技術覇権争いが激化することで、供給網の地図は再編されつつある。その中心にいるのが、オランダの半導体製造装置大手ASMLだ。世界最先端の露光装置を独占的に提供する同社は、グローバルな技術競争における最重要プレーヤーとなっている。

オランダの経済紙『新ロッテルダム新聞』のベテラン記者マーク・ハインク氏(Marc Hijink)は、10年以上にわたりASMLを追跡取材してきた。クリーンルームへの立ち入りを許され、経営陣の会議を傍聴し、世界中で300人を超えるキーパーソンに取材。その成果をまとめたのが著書『造光者:チップ戦争における最も神秘的な重要企業、リソグラフィーの巨人ASMLが未来技術競争を制するまで』(英語タイトル『FOCUS: THE ASML WAY』)である。

ハインク氏は9月8日、台湾で開催された半導体展示会「SEMICON TAIWAN」に参加する多忙な日程の合間を縫い、『風媒』の単独インタビューに応じた。そこで彼は、ASMLが「徹底した集中」と「長期的な視野」によって日本の強力なライバルであるNikonを退け、顧客に寄り添う姿勢で台積電(TSMC)やSamsungとの信頼関係を築いたと強調。またASMLにとって最大のリスクは輸出規制や関税ではなく、世界経済の不確実性だと指摘した。さらに次世代技術であるHigh-NA EUVの導入は「技術信仰」ではなく「経済合理性」で判断されると説明した。

以下は、ハインク氏が語った5つの問いに対する詳細な見解である。

成功の鍵は「集中」と「長期的視野」

質問一:ASMLはどのように集中と長期的視野によって成功を収めたのか。独自の企業文化こそが、日本のNikonを打ち負かした決定的要因だったのか?

ハインク氏はこう答える。

「私の本のタイトルは『FOCUS: THE ASML WAY』ですが、ここでの“Focus”には二重の意味があります。」

技術面では、リソグラフィー装置がシリコンウエハーにナノレベルの微細構造を刻むためには極めて高い「焦点合わせ=フォーカス」が不可欠である。しかしASMLの真の強みは、この「集中」を技術だけでなく経営戦略そのものに徹底的に適用したことにあるのだ。

20250908-風伝媒8日専訪ASML「造光者」作者海因克(Marc Hijink)(劉偉宏撮影)
2025年9月8日、台北で《風媒》のインタビューに応じた『造光者』の著者マーク・ハインク氏。(写真/劉偉宏撮影)

Nikonはかつて大企業グループの一部として、デジタルカメラやコピー機など多角的な事業を展開していたため、リソグラフィーは事業の一部にすぎなかった。対してASMLは、いわば「ワントリック・ポニー(一芸特化型)」としてリソグラフィー一本に全力を注ぎ込み、その技術を極限まで磨き上げて業界をリードする存在へと成長したのである。

オランダには自前の半導体工場(ファウンドリ)が存在しない。これが逆にASMLにとって優位性となった。特定の顧客に従属する立場ではないため、TSMCやSamsungといった新興の挑戦者にとっては「中立のパートナー」と映り、強い魅力を持ったのだ。市場シェアが5割に達し、豊富なキャッシュフローを確保できるようになると、ASMLはさらに潤沢な資金を研究開発に投入できるようになった。

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