台湾・高雄の興達発電所で9日夜に火災が発生した。現在議論や批判を呼んでいるエネルギー政策に対し、この事故は反省と検証、修正を促す材料となるべき事案である。
火災は地元住民に大きな恐怖を引き起こし、「ミサイルが飛んできたかと思った」との声も上がった。その後、住民らは発電所に抗議に押しかけ、台湾電力(台電)に開発中止を求めた。台電によれば、爆発の原因は天然ガス漏れであり、この爆発により試運転中だった新2号機が損壊し、稼働中の新1号機も停止して点検に入ったという。興達新1号機は設備容量130万キロワットを有し、供給電力の約3%を占める。1号機の停止により電力逼迫のリスクが生じたため、台電は大林発電所のガス5号機と興達発電所の石炭4号機を稼働させ、さらに興達2号機を待機させることで電力の安定供給を確保している。
発電所の爆発事故は、多くの問題を浮き彫りにし、同時に民進党のエネルギー政策の誤りと暗い展望を「照らし出す」結果となった。
まず安全保障の観点から考えるべきである。民進党政権が天然ガス火力の比率を50%に引き上げる方針を打ち出した際から、外部では天然ガス施設のリスクが指摘されてきた。貯蔵タンク、受入基地、輸送管線、発電設備――いずれも一定の危険を内包しているからである。こうした疑問に対し、台電は一貫して「液化天然ガスは自然発火も爆発もせず、安全性に問題はない」と説明してきた。
しかし今回の事故は、住民が「火薬庫の隣に住んでいるようだ」と恐怖を口にするのも大げさとは言い切れず、台電の「何の問題もない」とする説明が、単なる安心材料に過ぎなかったことを示した。
そもそも民進党のエネルギー政策が天然ガス比率を5割にまで高めた背景には、石炭火力よりも二酸化炭素排出や汚染が少ないという点があった。廃炉を前提とした政策は、原発に代わって再生可能エネルギーを2割導入することを掲げているが、残りの8割は火力発電に依存する構図である。もしその大半を石炭に頼れば、排出や汚染は耐えがたい水準に達する。そこで石炭を3割に抑え、天然ガスを5割へと拡大させたのである。一部の政府関係者や反原発派の主張では、天然ガス火力は「比較的クリーン」であるだけでなく、まるで「再生可能エネルギー」の一種であるかのように宣伝されてきた。
もちろん、これも民進党政権と反原発勢力が作り上げた虚構である。天然ガス火力は確かに石炭火力に比べれば二酸化炭素排出量や汚染は少ないが、いずれにせよ火力発電の一種であり、排出や汚染が低いはずもない。発電1キロワット時あたりの排出量を比較すれば、天然ガス火力は490グラムであり、石炭火力の820グラムよりは少ないが、太陽光の48グラム、風力の11グラム、原子力の12グラムと比べれば格段に多い。 (関連記事: 再生エネルギーの逆襲?2040年に50万トンの廃棄太陽光パネル 環境汚染の新たな火種に | 関連記事をもっと読む )
天然ガス発電を「クリーン」で「再生可能エネルギーのようだ」として拡大するのは虚偽であり、今回の爆発事故はそのリスクを如実に示した。反原発派は「原発事故の被害は甚大だ」と主張するだろうが、この論は原子力が備える7~10重の安全対策を無視している。実際、事故発生率や死者数の統計を見れば、原子力はむしろリスクが最も低い。逆に台湾が脱原発を進め火力依存を強めたことで、大気汚染が悪化し、毎年健康被害を受ける国民が増加しているのが現実である。