台湾国民党の主席選びは混乱を極めている。台中市長の盧秀燕氏が不出馬を決め、現職の朱立倫氏も再選を目指さないことを確認した後、彰化県前県長の卓伯源氏、立法委員の羅智強氏、元立法委員の鄭麗文氏、彰化県議会議長の謝典林氏、元国民大会代表の蔡志弘氏、弁護士の李漢中氏、組織発展委員会前主任委員の張雅屏氏、孫文学校総校長の張亞中氏などが次々と立候補を表明した。
しかし党内では、こうした候補者たちには指導力や資金調達力に欠け、党を安定的に率いるのは難しいとの見方が広がる。2026年の統一地方選、さらには2028年の総統・立法委員選挙に向けて「安心して任せられる指導者」を求める声は強い。出馬届の締切が迫る中で撤退者も出始め、謝典林氏は副主席の連勝文氏に説得されて辞退、張雅屏氏も自ら不出馬を表明した。それでも混迷は収まらず、元台北市長の郝龍斌氏が出馬を明言したことで、党内の期待は一気に高まった。ある立法委員は「最も望むのは中央が余計な失策をしないことだ」と語り、2020年の比例代表候補問題で大敗を招いた前主席・呉敦義氏の例を引き合いに出した。

趙少康氏・胡志強氏が郝龍斌氏支持へ 軍系票を取り込む動き
党内関係者によれば、鄭麗文氏や羅智強氏は弁舌に優れ革新性もあるが、今の国民党が求めるのは「安定」だという。郝龍斌氏は大きな得点源にはならないが、資金調達力も一定あり、堅実に仕事をこなす政治家とみられている。
国民党主席選は特殊な党員構成に左右される。自主党員、地方派閥票、そして「深藍」と呼ばれる軍系票(65歳以上の党費免除者を含む)の三つに分かれる。なかでも最大勢力は陸軍系退役軍人のネットワークで、郝龍斌氏は四つ星上将・郝柏村氏の薫陶を受けた世代とのつながりが強みとされる。すでに退役陸軍中将で元立法委員の陳鎮湘氏が支持を呼びかけ、軍系票の統合は完了したとの声もある。
さらに深藍支持層では、中廣前董事長の趙少康氏、台中市前市長の胡志強氏が、9月15日の週に相次いで郝氏支持を打ち出す見込みだ。一方、資金提供者の楊文科氏(通称・CK楊)の支援を受ける鄭麗文氏は、退役海軍陸戦隊中将の季麟連氏からの後押しを得たものの、海軍・海兵系は軍部票全体では少数派であり、広範な支持獲得は難しいとみられている。

議長・地方派閥が郝龍斌氏に集結 本土派は王金平氏の判断待ち
地方票に関しては、各派閥や有力な議長たちは当初、台中市長の盧秀燕氏が出馬すると予想しており、盧氏が立候補すれば当選は確実と見られていた。そのため、党員費の徴収活動などは行っていなかった。しかし盧氏の不出馬が決まると、多くがすでに動きを取り、会費納付を済ませている。雲林の張一族、台中の顔家、新北市議長の蔣根煌氏、屏東県議長の周典論氏らが郝龍斌氏への支持を非公式に示しており、現在海外にいる有力議長や元議長も主席人事を議論し、郝氏を支持する意向を示しているという。これは前述の議員たちと同様に、「最も安定した候補は郝龍斌氏」との見方に基づいている。