舞台裏》台湾・苗栗で「県政の主導権争い」鍾東錦氏が国民党・鄭麗文主席に揺さぶり 民衆党の頼香伶氏を副県長に起用し「苗栗は自分が仕切る」

2025-12-26 18:37
苗栗県長の鍾東錦氏(写真)は、民衆党の頼香伶氏を副県長に迎える方針を表明した。ただ、政党間の連携に見えるこの人事は、国民党内の主導権争いとも絡んでいるという。(写真/柯承惠撮影)
苗栗県長の鍾東錦氏(写真)は、民衆党の頼香伶氏を副県長に迎える方針を表明した。ただ、政党間の連携に見えるこの人事は、国民党内の主導権争いとも絡んでいるという。(写真/柯承惠撮影)

「地方制度法」の改正により、台湾では2026年から苗栗県で副県長のポストが一つ増設される。これを受け、再選を目指す鍾東錦・苗栗県長は、2025年12月24日の就任3周年記者会見において、民衆党の政策会執行長で前立法委員(国会議員)の頼香伶氏を副県長に招聘すると発表した。鍾氏は「これほど優秀な人材を苗栗に貸してくれた民衆党に感謝する」と述べ、対する頼氏も「国民が望んでいるのは政党間の対立ではなく協力である」と語った。

国民党籍の鍾氏が民衆党の頼氏を副官に据えることで、苗栗県は2026年の選挙戦を前に「藍白合(国民党と民衆党の協力)」を達成したかに見える。しかし、この人事発令の裏側には、「苗栗の王」と称される鍾氏と、国民党の鄭麗文主席との間での激しい「駆け引き」があるという。表面上の調和の裏で、水面下では各勢力が独自の計算を巡らせている。この人事の背景にはどのような物語があるのだろうか。

20250510-民眾黨政策會執行長賴香伶10日出席「健保總額支付制度之省思與展望」論壇。(顏麟宇攝)
民衆党の政策会執行長を務める頼香伶氏(写真)は、苗栗県の副県長に就く見通しだ。(写真/顏麟宇撮影)

鍾東錦と民衆党の蜜月 頼香伶氏の副県長起用は「既定路線」だった

関係筋によれば、最近国民党への復党を果たしたばかりの鍾東錦氏は、早くも11月上旬には頼氏に副県長就任を打診し、頼氏も快諾していたという。就任は2026年の旧正月明けを予定しており、県庁内ではすでに「頼副県長室」の改装が始まっている。あとは頼氏の正式な着任を待つばかりの状態だ。

そもそも民衆党が苗栗県内に持つ公職ポストはわずか2議席(郷・鎮民代表)にとどまるが、ここは伝統的に国民党が圧倒的な強さを誇る選挙区だ。そのため、地方レベルで国民党は一貫して民衆党を「友軍」として手厚く扱い、党部や県政府の行事にも積極的に招待してきた。再選を狙う鍾氏は、司法の嵐にさらされている民衆党創立者の柯文哲氏をたびたび擁護しており、柯氏の勾留が解除された際には、苗栗県公館郷産の特産品であるタロイモを贈って見舞い、激励したという。

20221020-苗栗縣議會參訪北市大數據中心,台北市長柯文哲(左)引領苗栗縣議長鍾東錦(右)參觀市府。(蔡親傑攝)
鍾東錦氏(右)が県長選に挑んだ際、当時の民衆党主席・柯文哲氏(左)は、鍾氏の応援に立った数少ない政治家の一人だった。(写真/蔡親傑撮影)

窮地を救った柯文哲への恩義 鍾東錦が貫く「義理」

柯文哲氏と鍾東錦氏が接点を持つようになったのは、2022年の苗栗県長選がきっかけだった。当時、過去の経歴から「黒社会(暴力団)」「西瓜刀(大包丁)議長」と激しいバッシングを受け、国民党からも除名された鍾氏に対し、唯一歩み寄り、共に公の場に立ったのが柯氏だった。鍾氏はこれに深く感動したという。後に柯氏の政治献金報告に不正疑惑が浮上した際も、鍾氏は「私の知る柯文哲氏は、決して金を貪るような人物ではない」と、強い義理立てを見せて声援を送った。

ただし、民衆党関係者や鍾氏に近い人物によれば、二人の親交は深いものの、決して「深交(腹を割った仲)」とまではいかないという見方もある。一方で、鍾氏と極めて親密なのが、高虹安・前新竹市長だ。鍾氏、高氏、そして楊文科・新竹県長や地元の「藍営」の立法委員、議員らは定期的に会合を開いている。高氏が汚職疑惑で職務停止処分を受けた後も、鍾氏らとの交流は途切れておらず、鍾氏は彼女の公判の行方にも強い関心を寄せ続けている。

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