新在留資格「育成就労」、受け入れ数に上限設定へ 政府が運用案提示

政府は2027年度導入の「育成就労」と特定技能を合わせた外国人材の受け入れ上限を2028年度末で約123万人とする案を初めて提示し、厳格な管理下で人手不足を補う方針を明確にした。(写真/AP通信社提供)
政府は2027年度導入の「育成就労」と特定技能を合わせた外国人材の受け入れ上限を2028年度末で約123万人とする案を初めて提示し、厳格な管理下で人手不足を補う方針を明確にした。(写真/AP通信社提供)

政府が新たな外国人材受け入れ制度の骨格を固めつつある。2027年度から導入される新在留資格「育成就労」を巡り、政府は23日の有識者会議で、制度開始からの2年間における受け入れ数に上限を設ける案を提示した。

各紙の報道を総合すると、外国人労働者の受け入れ規模について政府が具体的な上限管理の方針を公にするのは今回が初めてとなる。一部で根強い「事実上の移民解禁」への警戒感に配慮し、「無制限に受け入れを進めるわけではない」という姿勢を明確に打ち出した形だ。

今回示された政府案では、2027年度から28年度までの「育成就労」による受け入れ上限を約42万6千人に設定した。これに既存の「特定技能1号」を加えると、2028年度末時点での受け入れ枠は計約123万人規模となる。この上限数は新規入国の累計ではなく、帰国者などを差し引いた実際の在留人数(ストック)を基準としており、上限に達した段階で新たな受け入れを停止する厳格な運用となる。

育成就労の枠は、現行の技能実習生数(2025年6月末時点で約45万人)を下回る水準に抑えられたほか、特定技能についても生産性向上などを考慮し、28年度末までの上限見込みを従来の82万人から約80万人に下方修正している。政府は2026年1月中の閣議決定を目指しており、与党内からは「抑制的な数字にとどめた」との評価も聞かれる。

新制度は、原則3年の在留期間で技能を学ぶ「育成就労」から、即戦力となる「特定技能1号」(最長5年)、さらには熟練者向けの「特定技能2号」へと段階的に移行できる仕組みを整え、中長期的なキャリア形成を促す狙いがある。

対象分野は、育成就労が介護、建設、農業など17分野でスタートし、特定技能は物流倉庫など3分野を追加して19分野に拡大される見通しだ。特に工業製品製造業での受け入れが最も多く見込まれている。また、運用面では課題となっている都市部への人材流出を防ぐため、転籍(転職)が可能になるまでの期間を1~2年に制限するほか、大都市圏での転籍割合を抑制する措置も盛り込まれた。

こうした受け入れ拡大の背景には、深刻化する労働力不足がある。民間推計によると、2035年には国内で約384万人の労働力が不足するとされ、現在の約200万人規模から外国人就業者数が大幅に増加することは避けられない情勢だ。政府としては、育成就労と特定技能の一体的な運用によって不足する労働力を補いつつ、経済活動への影響を最小限に食い止める狙いがある。

本制度導入のもう一つの大きな背景には、現行の「技能実習制度」が抱える構造的な問題がある。1993年に始まった技能実習制度は、本来「国際貢献」を目的としていたが、実際には安価な労働力として利用される側面が強く、原則として転籍が認められないことから、劣悪な労働環境や人権侵害の温床となっているとの批判が国内外から相次いでいた。

これを受け政府は、実態と建前が乖離していた旧制度を廃止し、人材確保と育成を正面から目的とする「育成就労」を2027年4月に創設することを決めた。新制度では一定の条件下で本人の意向による転籍を認めるなど権利保護を強化しつつ、外国人材が日本社会に適正に定着できる環境整備を進める方針だ。

育成就労制度は、技能実習制度に代わる新たな在留資格として2027年4月に導入される。技能実習では原則として転職が認められず、劣悪な労働環境や人権侵害が問題視されてきた。育成就労では、一定期間後に本人の意思で職場を移ることが可能となり、外国人労働者の権利保護と人材育成を両立させる制度として位置づけられている。政府は、制度の透明性と管理を強化しつつ、外国人材が日本社会に定着できる環境整備を進めるとしている。

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