トップ ニュース 中国最新鋭空母「福建艦」と遼寧艦が青島で並び停泊 衛星画像で確認、合同演習の可能性
中国最新鋭空母「福建艦」と遼寧艦が青島で並び停泊 衛星画像で確認、合同演習の可能性 中国人民解放軍が7日、最新空母「福建艦」の就役編入式典の映像を公開した。(中国中央テレビ〈CCTV〉ニュースより)
中国SNSのWeibo(ウェイボー)でこのほど拡散した衛星画像により、中国海軍の最新鋭空母「福建艦」と、初の実戦配備空母「遼寧艦」が、山東省・青島の海軍基地で並んで停泊している様子が確認された。
これに先立ち、中国の海事当局は21日から渤海および黄海北部海域で、約1週間にわたる軍事演習を実施すると予告している。こうした動きを受け、英紙系の香港メディア『サウスチャイナ・モーニング・ポスト 』は、二隻の空母による協同作戦演練が行われる可能性があると指摘している。
Weibo(ウェイボー)で拡散した、青島軍港に中国の空母2隻が並んで停泊する画像。各メディアが相次いで報じた。(Weibo(ウェイボー)より)
公開された衛星画像では、「福建艦」と「遼寧艦」が同一埠頭に並んで係留されており、偶然とは考えにくい配置となっている。さらに、二隻の合流直後に演習海域が設定された点からも、大規模な合同演習が差し迫っているとの見方が強まっている。 軍事評論家の宋忠平氏は「一隻より二隻、しかも異なる能力を持つ空母同士であれば『一足す一が二以上』になる。技術面だけでなく、艦員同士の運用経験の共有が極めて重要だ」と述べている。
就役から13年が経過した遼寧艦は、中国の空母戦力の出発点とも言える存在で、艦隊運用や指揮統制に関する経験を蓄積してきた。一方、先月正式に就役した福建艦は、世界最大級の通常動力空母であり、中国初の電磁式カタパルト(EMALS)を搭載している。
ただし、この最新システムは実戦運用に向けた反復訓練と調整が不可欠であり、運用経験を積んだ遼寧艦が教官役を担う構図が想定されている。宋氏も「福建艦はまだ若く、遼寧艦の蓄積された知見から多くを吸収することになる」と分析している。
米国の衛星画像で捉えられた、海南の港に停泊する中国の最新空母「福建艦」。(AP通信)
『サウスチャイナ・モーニング・ポスト 』によると、中国は遠洋で持続的に行動できる海軍の構築を目指し、近年は実戦を想定した訓練を大幅に強化している。その戦略目標の一つが、米国が中国封じ込めの枠組みとして重視してきた「第一列島線」の突破だ。
福建艦が就役する以前にも、中国海軍は段階的に空母運用を拡大してきた。昨年10月には遼寧艦と山東艦が南シナ海で初の二空母合同演習を実施。さらに今年夏には、両艦の空母打撃群が第一列島線を越え、遼寧艦はグアム以東まで進出した。グアムは米国にとって太平洋地域の中枢的な軍事拠点であり、中国空母が第二列島線を越えたのはこれが初めてだった。
中国人民解放軍は、これらの演習について「西太平洋および周辺海域において、遠海防衛能力と統合作戦能力を検証している」と説明している。
中国の最新空母「福建艦」(右)が海南で正式に就役し、編成に加わった。(AP通信)
技術系メディアの『 Interesting Engineering 』21日、福建艦と遼寧艦が近く合同訓練を実施する可能性が高いと指摘した。将来的に複数の空母打撃群を同時運用することを見据えた、いわば「事前演習」にあたるという。
想定される訓練内容は多岐にわたる。艦載機部隊による交差離着艦訓練をはじめ、スキージャンプ式甲板を採用する遼寧艦と、全通甲板に電磁カタパルトを備える福建艦という、異なる運用方式の比較と最適化。さらに、艦載機の出撃率向上、甲板上の安全手順の徹底、後方補給体制の確立、高強度作戦を持続するためのノウハウ共有、そして「二隻の空母を同時に指揮・調整する能力」の検証も含まれるとみられている。
『Interesting Engineering』は、中国が継続的に戦力を遠方へ投射し、さらには米国の空母打撃群に対して「信頼できる抑止力」を構築するためには、二隻の空母を同時に運用する能力の獲得が不可欠だと分析する。また、本土から遠く離れた海上交通路を防護することも中国海軍の重要任務であり、この点については日本が特に強い関心を寄せている。近年の演習で、中国空母が日本の防衛圏内に姿を現す場面が相次いでいるためだ。
中国国産空母「山東艦」に国際的な注目が集まっている。(Weibo(ウェイボー)より /Aero_Jack_Li)
台湾の国防部が公表した情報によると、福建艦は今回、海南省三亜の楡林海軍基地を出港し、台湾海峡という敏感な海域を通過して北上した。国防部長の顧立雄氏は立法院で、台湾軍のF-16戦闘機が全行程を監視し、福建艦の飛行甲板には艦載機が搭載されていなかったことを確認したと説明している。
顧氏は当初、福建艦の目的地は上海の造船所での整備と推測していた。しかし、実際には青島で遼寧艦と合流する動きが確認され、単なるメンテナンス航行とは異なる、より戦略的な意図が浮かび上がった形だ。
『サウスチャイナ・モーニング・ポスト 』 は、中国海軍の行動テンポがここに来て明らかに速まっていると分析する。11月中旬、福建艦は就役直後に南シナ海で初の海上実弾訓練を実施し、その際、山東艦も近傍海域に展開していた。これは、将来的な多空母協同演訓を強く示唆する動きと受け止められている。
日中関係が「台湾有事」をめぐる議論で緊張を深める中、日本の防衛省は12月8日、宮古海峡周辺で遼寧艦の艦隊を確認したと発表。さらに、艦載機のJ-15戦闘機が、警戒監視にあたっていた航空自衛隊のF-15に対し、火器管制レーダーで2度にわたり照射したと主張している。
2024年を振り返ると、解放軍は「聯合利剣-2024A」「聯合利剣-2024B」と称する大規模な対台湾軍事演習を相次いで実施。同年10月には南シナ海で、遼寧艦と山東艦による初の二空母合同演習も行われ、台湾と米国への強い牽制と受け止められた。
今後、中国が電磁カタパルトを備えた空母を含む二空母打撃群を本格的に運用し、第一列島線の外側で持続的な航空戦力を展開できるようになれば、その影響は日本にとどまらない。西太平洋において、数十年にわたり米国と同盟国が維持してきた海上優勢に対する、最も直接的な挑戦となる可能性がある。
2017年7月7日、中国初の空母「遼寧艦」が香港に寄港。香港駐留部隊の駐留20周年を祝う行事に合わせた。(AP通信)
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