台北地方検察署は、カンボジアのプリンスグループによる国際的な詐欺およびマネーロンダリング事件を捜査する中で、差し押さえの対象が銀行口座や高級住宅にとどまらず、多数の高額車両にまで及んでいることを明らかにした。検察は、高級車を長期間保管したままにすると、減価償却や保管コストによって資産価値が損なわれるおそれがあると判断し、資産の換価手続きを開始。行政執行機関に委託して競売を行い、犯罪収益の可能性がある資産を先行して現金化し、保管する方針を取った。
今回のプリンスグループ関連の高級車オークションは、事件捜査の一環であると同時に、司法競売市場では異例となる「一度に34台の高級車」が出品される規模となり、注目を集めている。関心は事件の内容そのものにとどまらず、一般市民が入札に参加できるのか、競売の具体的な進め方や実施時期などへと広がっている。
国際制裁リストが台湾の捜査に影響、プリンスグループの拠点が浮上
本件はすでに国際的な法執行当局の視野に入っており、米国司法省と財務省は先日、制裁リストを公表し、プリンスグループ関連の計146の組織・団体を指定した。このうち9社は台湾で登記されている。検察・捜査当局が関連資料を精査して突き合わせた結果、一部の企業の実際の拠点が、台北市のランドマーク的高級マンション「和平大苑」に置かれていたことが判明し、国内での関心は一段と高まった。
検察にとって、登記情報と実際の事業運営との乖離や、拠点が特定エリアに集中している状況は、資金の流れ、企業の実体的な運営構造、人員の役割分担を解明するうえで重要な手がかりとなる。こうした点は、今後の捜索や関係者への事情聴取に向けた行動の基盤を成すものでもある。
検察捜査網を広げ、資金不透明が拘留の鍵に
台北地方検察署は情報提供を受けて捜査に着手し、これまでに4回にわたる家宅捜索を実施している。直近の捜索は12月9日に行われ、検警は玄古管理顧問公司など関係企業を対象に捜索を行い、責任者の王俊國氏ら6人を身柄拘束して任意同行させた。翌10日にかけて順次、地検での取り調べ(再聴取)に移された。
検察は、王氏が資金の出所や流れについて十分に説明できていないうえ、口裏合わせや証拠隠滅のおそれがあるとして、裁判所に対し勾留と接見禁止を申し立てた。
一連の捜査のテンポから見えてくるのは、本件の焦点が個々の被疑者の役割にとどまらず、資金がどのように出入りし、どのように分割・移転されたのかという「資金の動線」そのものに置かれている点だ。差し押さえた資産や、その後の競売手続きは、捜査・公判が確定する前の段階でも換価可能な対象を先に現金化し、適切に保全しておくための措置として位置づけられている。 (関連記事: 詐欺疑惑で世界の注目集めるカンボジア・プリンス・グループ 「無実」と声明し米・シンガポールの資産凍結を批判、陳志氏の冤罪を主張 | 関連記事をもっと読む )
車両登録が競売の障害に、検察は公告で手続きを突破
検察・捜査当局の調べによると、差し押さえられた高級車の多くは、プリンスグループの創業者兼董事長である陳志氏、ならびに中枢幹部で財務総監の李添氏の名義で登録されている。しかし両氏はいずれも現在台湾に滞在しておらず、台湾国内での登録住所も確認されていない。このため、プリンスグループ関連車両の換価手続きを進めるべく、台北地検は法令に基づき「公示送達」によって換価に関する情報を公告する方針だ。公告期間が満了する30日後、競売手続きは正式に開始される。

















































