特別インタビュー》ノーベル経済学賞マスキン氏が警告 トランプ関税は「最悪の選択肢」 来年の米景気後退を懸念

2025-12-23 17:03
ノーベル経済学賞受賞者のエリック・S・マスキン氏が『風傳媒』の単独インタビューに応じた。(写真/蔡親傑撮影)
ノーベル経済学賞受賞者のエリック・S・マスキン氏が『風傳媒』の単独インタビューに応じた。(写真/蔡親傑撮影)

米国ドナルド・トランプ氏の大統領就任から間もなく1年を迎える中、同政権の関税政策が世界の貿易秩序に波紋を広げている。米国経済の先行きについて、ノーベル経済学賞受賞者のエリック・S・マスキン氏は『風傳媒』のインタビューに対し、「トランプ氏は極めて攻撃的な関税政策を打ち出し、米国経済だけでなく他国経済にも打撃を与えている。現在の米国経済は決して良好とは言えず、来年には景気後退に陥る可能性がある」と懸念を示した。

マスキン氏は現代経済学を代表する理論家の一人で、ハーバード大学アダムズ記念講座教授を務める。2007年にはレオニード・ハーヴィッツ氏、ロジャー・マイヤーソン氏とともにノーベル経済学賞を受賞し、「メカニズム・デザイン理論」の基礎を築いた功績が評価された。研究分野はゲーム理論、契約理論、社会選択理論など多岐にわたる。

12月15日、台湾大学で開催された「台湾ブリッジ・プロジェクト」に招かれたマスキン氏は、「グローバル化はなぜ不平等を縮小できなかったのか」をテーマに基調講演を行った。同プロジェクトは、台湾大学の「宋恭源先生トップ研究講座」を中心に、世界平和基金会、中央研究院、複数の台湾国内大学が共同で推進している。

指導教授も学生もノーベル賞受賞者という環境

75歳となった現在も、マスキン氏は矍鑠としており、明快な語り口が印象的だ。これまで何度も台湾を訪問しており、今回も短期間の滞在ながら、台湾大学での講演に加え、総統府で蕭美琴副総統を表敬訪問した。さらに多忙な日程の合間を縫って、『風傳媒』の単独インタビューに応じ、数学から経済学へ転じた経緯や、アルベルト・アインシュタインから受けた影響、そして米国経済への強い危機感について語った。

ニューヨーク出身のマスキン氏は、幼少期から秀才として知られ、ハーバード大学では数学を専攻した。その後、経済学へと進路を変え、博士論文の指導教授となったのがノーベル賞受賞者のケネス・アロー氏だった。さらに、マスキン氏の教え子であるアビジット・バナジー氏やマイケル・クレマー氏も後にノーベル賞を受賞している。ハーバード大学やマサチューセッツ工科大学で教鞭を執った際には、同僚の中にも多くのノーベル賞受賞者が名を連ねていた。

こうした「ノーベル賞級」の研究者たちに共通する資質について問うと、マスキン氏は控えめにこう語る。「私はただ幸運だった。非常に優秀な人たちから学び、同時に優秀な学生を指導する機会に恵まれた。彼らがノーベル賞受賞者だったから特別というより、知的好奇心と勤勉さが、私たちの議論をより刺激的なものにしていたのだと思う」。

20251221-e401-ノーベル経済賞受賞者 Eric Maskin 小档案

マスキン氏「博士論文指導教授との出会いが人生を変えた」

マスキン氏が経済学の道へ進む決定的な転機となったのが、ハーバード大学で出会ったケネス・アロー氏だった。マスキン氏は「アロー氏は、経済学には探究すべきテーマが無数にあることを教えてくれた。その結果、この分野に本格的に取り組むようになり、博士論文の指導教授として私の人生そのものを変えてくれた」と振り返る。

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