日本のウイスキーバーで長年働きながらも、「本当に納得できる日本酒バーが見つからなかった」。そう語る台湾出身のマーク氏は、ついに自らその場所をつくる決断をした。
日本酒がまだ十分に国際化されておらず、専門的に味わえる場が長らく不足している現状に着目したマーク氏は、日本に戻って貿易会社を設立。大阪屈指の繁華街・心斎橋エリア近くで、台湾人の友人2人と共同出資し、日本酒専門店「SAKE REPUBLIC(清酒共和国)」を開業した。
店のコンセプトは「日本酒ライブラリー」。人気銘柄から希少酒まで100種類以上の日本酒を取りそろえ、日本酒業界の新たな試みとして、開店直後から日本の日本酒関係者の間でも大きな話題を呼んでいる。
マーク氏は、「日本には千を超える酒蔵があるにもかかわらず、日本酒は長らく居酒屋文化の枠にとどまってきた。本当に日本酒を味わいたいと思っても、行き場がなかった」と指摘する。ワインバーやウイスキーバーが街に溢れる一方、専門的に日本酒を提供する場は極めて少ない。「ただ、日本酒をきちんと知り、楽しめる場所をつくりたかった」と語る。
居酒屋だけではない 100種超の日本酒と中国語対応の利点
「SAKE REPUBLIC」は心斎橋駅3号出口から徒歩約2分の場所に位置する。ビルの外壁に描かれた大型のストリートアートが目印だ。エレベーターで5階に上がり、オフィスのような扉を開けると、そこには別世界が広がる。
温かみのある照明、壁一面に並ぶ酒瓶、大阪の夜景が交差し、まるで静謐な日本酒専門の図書館に足を踏み入れたかのような空間が現れる。
店内はカウンター5席と小さなテーブル3卓のみ。広さは限られているが、質感にこだわった設えで、大きな窓からは心斎橋の喧騒を見下ろしながらも、落ち着いた時間を過ごせる「都会の隠れ家」となっている。
特筆すべき点は、中国語での対応が可能なことだ。日本語に不安がありながらも、日本酒の味わいや背景を深く知りたい外国人客にとって、言語の壁を大きく下げる存在となっている。

職人精神で集めた「日本酒ライブラリー」
マーク氏は日本の職人精神を大切にし、自ら「最高」と認めた日本酒を人気銘柄から希少酒まで幅広く集め、100種を超えるコレクションを築いた。これは一般的な酒類代理店では成し得ない規模だという。
特にマーク氏が好んで取り入れているのは、杜氏が一般販売を想定していない限定酒だ。これらの酒は「日本酒は長期保存すると味が落ちる」という固定観念を覆す存在で、適切に冷蔵保存することで、時間の経過とともに異なる表情を見せる。
味わいは日本酒の枠を超え、赤ワインのようなもの、クラフトビールを思わせるもの、ウイスキーに近い印象のものまで多彩だ。「とにかく、お客さんに楽しんでほしい」というのがマーク氏の原点だ。 (関連記事: 日本人よりも日本酒に詳しい!珍しい「日本酒バー」台湾人店長の翠翠 日本で夢を実現 | 関連記事をもっと読む )
マーク氏は、日本酒の魅力について「アルコール度数が5度程度のものもあり、味の幅は非常に広い」と語る。一本一本に職人の精神が宿り、酒蔵ごとに異なる「日本の味」がある。そして、日本酒の最大の魅力は「合わせやすく、親しみやすいこと」だという。



















































