年末のワシントンで行われた記者会見の場で、米国務長官のマルコ・ルビオ(Marco Rubio)氏は、この1年の米国外交を体系的に総括した。議題は、ガザ戦後の枠組み、ロシア・ウクライナ和平交渉、「台湾有事」をめぐる日中間の緊張、さらにはベネズエラを含む西半球全体の麻薬組織との戦いにまで及んだ。
その中でルビオ氏は、「国際秩序」はすでに外交の最優先事項ではなくなり、米国の対外政策は「米国の国益」を基準に再調整されなければならないと明言した。かつては著名な「対中強硬派」として知られたルビオ氏だが、この日は中国共産党との協力に期待を示し、米中間の摩擦をいかに管理し、均衡させるかが重要だとの認識を示した。
米外交の原点は「国益」 三つの指標が基準
ルビオ氏は冒頭、米国外交の核心原則について、「国家利益」という一点に立ち返る必要があると強調した。その判断基準は三つ、米国をより安全にするか、より強くするか、より繁栄させるかであり、少なくとも一つを満たし、できれば三つすべてを満たすべきだと述べた。
冷戦終結後に積み重ねられてきた国際制度や外交政策の前提については、「もはや存在しない世界を前提に構築されている」と批判。トランプ大統領が再選された背景には、この外交思考全体を「再調整(recalibration)」するという国民的な委任があると位置づけた。
この再調整には、いくつかの重要な柱がある。
第一に、「国家利益」を抽象的な理念から、具体的な運用基準へと転換することだ。地理的な優先順位や政策課題の優先順位を明確にしなければならない。ルビオ氏は「地球上で最も裕福で強力な国であっても、資源と時間には限りがある」と述べた。
第二に、国務省および国家安全保障体制の再編である。地域局や在外公館を単なる執行機関ではなく、政策の優先順位や手段選択に関与する意思決定主体として位置づけ直す。その中でも、対外援助を「人道的慈善活動」と切り離された別世界のものではなく、明確な外交ツールとして統合することが重視されている。
この枠組みの下で、ルビオ氏は対外援助について「納税者の資金であり、慈善家の寄付ではない」と改めて強調し、米国の外交戦略に資するものでなければならないと述べた。
ガザ停戦と「平和理事会」 三段階構想はトランプ任期を超える長期戦
ガザ戦後の構想について、ルビオ氏は、トランプ大統領が仲介した停戦を「誰も実現できるとは信じていなかった奇跡」と表現した。爆撃を止め、生存していた人質の全員解放と、遺体のほぼ全回収を実現した点を評価した。
ただし、これは長い道のりの出発点にすぎないとも率直に語った。「平和は感情ではなく、動詞だ。毎日、新たな課題が生じる」と述べ、停戦後の困難さを強調した。
ホワイトハウスが描く青写真は、三つの段階に分かれている。
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第1段階:停戦枠組みと「平和理事会」
第1段階は、停戦合意の初期枠組みを完成させることだ。その中核として、多国間で構成される「平和理事会(Board of Peace)」と、日常統治を担う「パレスチナ技術官僚チーム」の設置が含まれる。
このチームは意図的に「技術官僚」と位置づけられ、従来の派閥政治や武装組織とは一線を画す。行政能力と復興能力を通じて、徐々にハマスのガザ支配に取って代わることが狙いだという。ルビオ氏は、ここ数日で人選に「実質的な進展」があったと明かし、米国がイスラエル、地域諸国、さらには一部パレスチナ側を同一の枠組みに組み込もうとしていると説明した。
第2段階:多国籍「安定化部隊」
第2段階は、多国籍による「安定化部隊(stabilization force)」の展開である。この部隊は治安維持と人道支援物資の輸送護衛を担い、イスラエル軍の再介入による停戦崩壊を防ぐと同時に、ハマスの再武装を阻止する役割を果たす。
ルビオ氏は、この部隊の構成、資金源、交戦規則はいまだ交渉中だと認めた。一方で、パキスタンを含むイスラム諸国など、「各当事者にとって受け入れ可能な複数の国」が参加に前向きだとも述べた。ただし、各国は明確な任務権限と資金メカニズムを確認した上で、正式参加を決める必要があるという。
第3段階:復興と最終的な政治枠組み
第3段階は、さらに長期的な工程となる。大規模復興から最終的な政治的取り決めに至るまで、その時間軸はルビオ氏自身が「世代を超える約束」と表現するほど長い。トランプ政権第2期中にすべてを完結させることは想定しておらず、制度的枠組みと初期事業を後続政権に引き継ぐことを目標としている。
停戦下の衝突とイスラエル批判への対応
記者から、停戦下でもイスラエルが平均して1日2人のパレスチナ児童を殺害しているとの指摘や、人道物資の搬入を妨げているとの批判が出た際、ルビオ氏は公にイスラエルを非難することは避けた。
戦場は即座に平時へ転換できるものではなく、ハマスが地下トンネルから出て爆発物を設置し、イスラエル軍を攻撃している現実がある以上、摩擦を完全に排除するのは難しいとの認識を示した。
ルビオ氏にとっての解決策は、停戦を切り捨てることではない。第1段階の「平和理事会―技術官僚―安定化部隊」という三角構造を早期に完成させ、人道支援をハマスではないパレスチナの専門チームが、安定化部隊の護衛下でガザに届ける体制を構築することだという。最終的には、「援助から経済へ」という転換を実現することが目標だと強調した。
レバノンとヒズボラ問題 米国の狙いは「レバノン政府を育てること」
ガザに加え、中東のもう一つの焦点は、イスラエルとレバノンの国境地帯の緊張と、親イラン武装組織ヒズボラの軍備拡張だ。ルビオ氏は、米国がイスラエル・レバノン間交渉において目指す姿として、「強く、国家全体を統治できるレバノン政府」の実現を挙げた。そのうえで、ヒズボラの武装解除を進め、イスラエルの安全を脅かす軍事能力を持たない状態にすることが不可欠だとの認識を示した。 (関連記事: 日中外交衝突から1ヶ月、ルビオ米国務長官が沈黙を破る 「日中バランス」重視の姿勢を鮮明に | 関連記事をもっと読む )
この枠組みにおいて、米国の役割は「可能な限りレバノン政府に権限を与えること」にあり、国家主権が党派的な民兵組織を真に上回る状況を作ることだと説明した。
記者から、アラブ諸国を含む連合を編成し、レバノンに部隊を派遣してヒズボラの武装解除を支援する構想を検討しているのかと問われると、ルビオ氏は慎重な姿勢を示した。政府内部でそのような具体的な案を聞いたことはなく、せいぜい地域諸国の間で共有されている認識として、「ヒズボラはイランの地域代理勢力であり、長年にわたりイスラエルとアラブ諸国の安定を脅かしてきた」という点があるにすぎないと述べた。
かつて米議会で「ヒズボラ武装解除のための軍事介入」を主張した上院議員リンゼー・グラム氏については、半ば冗談交じりに「その連合軍をどう編成するつもりなのか、本人に聞いてみてほしい」と語った。
ロシア・ウクライナ戦争 米国は「双方と話せる唯一の仲介者」
ロシアによるウクライナ侵攻について、ルビオ氏はまず線引きを明確にした。この戦争は「米国の戦争ではない」。別の大陸で起きている紛争であり、米国には利害関係も関与もあるが、交戦当事国ではないと強調した。しかし同時に、世界でロシアとウクライナの双方と対話し、和平の可能性を探れる国は一つしかないとも述べた。それが米国だという。
ルビオ氏によると、トランプ大統領はロシア・ウクライナ戦争に、貿易問題以上の時間を割いており、ホワイトハウス上層部も多大な労力を注いでいるという。米国の役割は、「双方が何を受け入れられ、何を手放す意思があるのかを見極め、その重なり合う部分が存在するかを探ること」だと説明した。現時点では、いずれの側も短期的に「降伏」する兆しは見えず、唯一現実的な結末は交渉だとの見方を示した。
ロシアのプーチン大統領が年末の記者会見で、昨年夏に提示した条件「ウクライナ軍の4州からの撤退、占領地の承認、制裁解除」を前提に交渉に応じる姿勢を示した点について、ルビオ氏はその誠意を評価することは避けた。ただし、この問題は「極めて複雑」であり、米国は交渉の余地を探る手助けはするが、最終決定権はモスクワとキーウにあり、ワシントンにはないと述べた。
将来的に米国が「これ以上関与することが国益に合致しない」と判断し、撤退する可能性があるのかという問いに対しては、それは大統領の政治判断であり、自身が予断を持つことではないと語った。 (関連記事: 日中外交衝突から1ヶ月、ルビオ米国務長官が沈黙を破る 「日中バランス」重視の姿勢を鮮明に | 関連記事をもっと読む )
日中間の緊張をめぐって 「米中が一緒に問題を解ける関係を」
ルビオ氏は、「台湾有事」を背景に急速に悪化している日中関係についても言及した。以下は、記者との質疑応答を、英日対照の内容を踏まえて全文日本語訳したものである。
QUESTION: Thanks. I’d like to ask how you view recent escalation of tensions between Japan and China. You’ve been known for your tough rhetoric towards China over the years. Do you condemn China’s recent provocative actions against Japan?
記者質問:ありがとうございます。最近、日本と中国の間で緊張が高まっていますが、どのように見ていますか。あなたはこれまで中国に対して強硬な発言で知られてきました。中国による最近の日本に対する挑発的行動を非難しますか。
SECRETARY RUBIO: Yeah, no, I think I’ve been nice to China – in terms of the work we have to do with them and – I mean, I had another job. My job now is to – I represent the President of the United States and the United States in foreign diplomacy, and I think we’ve made good progress with the Chinese. The Japanese are a very close ally of the United States. I think these tensions are pre-existing. We understand that’s one of the dynamics that has to be balanced in that region. And I believe that we feel very strongly that we can continue with our strong, firm partnership and alliance with Japan and do so in a way that continues to allow us to find productive ways to work together with Chinese – the Chinese Communist Party and the Chinese Government.
ルビオ国務長官:ええ、いいえ。私は中国に対して決して厳しくしてきたわけではありません。彼らとやらなければならない仕事という観点で言えば、です。以前は別の立場にありましたが、今の私の仕事は、米国大統領と米国を代表して外交を行うことです。その中で、中国とは良好な進展を遂げてきたと思っています。
日本は米国にとって非常に緊密な同盟国です。これらの緊張は以前から存在しており、この地域においてバランスを取るべき力学の一つだと理解しています。私たちは、日本との強固で揺るぎないパートナーシップと同盟を維持しながら、中国共産党および中国政府と建設的に協力する道を引き続き模索できると強く信じています。
Look, there’ll be tensions. There’s no doubt about it. I mean, at the end of the day, China is going to be – is and it will continue to be a rich and powerful country and a factor in geopolitics. We have to have relations with them. We have to deal with them. We have to find the things we are able to work together on. And I think both sides are mature enough to recognize that there will be points of tension now and for the foreseeable future. Our job as we’re part – as part of responsible statecraft is to find opportunities to work together. Because I think if there’s a global challenge that China and the U.S. can work together on, I mean, it’s – I think we can solve it. And there’ll be points of tension. We all recognize that. And our job is to balance these two things. I think both sides understand that.
確かに緊張は存在します。疑いの余地はありません。最終的に、中国は今後も豊かで強力な国であり、地政学における重要な要因であり続けます。私たちは中国と関係を持たなければならず、向き合わなければなりません。そして、協力できる分野を見つける必要があります。
双方とも、現在そして予見可能な将来にわたり、緊張点が存在することを十分に理解できる成熟度を持っていると思います。責任ある国際運営の一環として、私たちの仕事は、協力できる機会を見つけることです。もし中国と米国が共に取り組める世界的課題があるなら、解決できると私は考えています。緊張があることは皆が認識しています。重要なのは、その二つをどうバランスさせるかです。双方ともそれを理解していると思います。
But in the – and I think we can do that without imperiling or in any way undermining our very firm commitment to our partners in the Indo-Pacific that includes not just Japan but South Korea. And obviously if you extend further out – I don’t want to leave anybody out – but India and Australia and New Zealand and all the other countries. And we also have growing and burgeoning relationships with countries like Vietnam and even Cambodia that we really haven’t had very close contacts with historically. But we’ve talked to them a lot lately, obviously, through the context of the conflict going on with Thailand, but also to figure opportunities to work together strategically. And I say Thailand – of course, we’ve had a very long and strong strategic alliance with them for many years.
そして、インド太平洋地域における日本だけでなく、韓国を含むパートナーへの非常に強固なコミットメントを損なうことなく、それを実行できると考えています。さらに視野を広げれば、インド、オーストラリア、ニュージーランド、その他すべての国々も含まれます。
また、ベトナムや、歴史的にそれほど密接な関係を持ってこなかったカンボジアのような国々とも、関係が急速に拡大しています。最近は特に、タイとの紛争をめぐる文脈だけでなく、戦略的に協力できる機会を探る中で、頻繁に対話を行っています。なお、タイについて言えば、米国は長年にわたり非常に強固な戦略的同盟関係を築いてきました。
西半球における「麻薬戦争」 真の脅威は国際犯罪・テロ組織
中東やロシア・ウクライナ戦争が「旧世界」の安全保障課題だとすれば、ルビオ米国務長官の認識において、西半球という「新世界」における最大の脅威は、疑いなく国境を越える組織犯罪と麻薬カルテル型テロ組織である。
ルビオ氏は、冒頭をスペイン語で語り、その後英語に切り替える長時間の発言の中で、ラテンアメリカ全体の情勢を一つの核心に集約した。すなわち、コロンビア、メキシコから中米、カリブ海、エクアドルに至るまで、地域全体で暴力と治安が悪化している根本原因は同一であり、それは国際犯罪組織と麻薬カルテルであるという点だ。対象として挙げられたのは、コロンビアのゲリラ組織ELN、FARCの残党、さらにはベネズエラから流出した犯罪組織「トレン・デ・アラグア(Tren de Aragua)」である。
ルビオ氏は、多くの国がこの「戦争」においてワシントンと協力していると強調した。メキシコとの安全保障分野での協力は「史上最高水準」に達しており、中米ではパナマ、コスタリカ、ドミニカ共和国、エルサルバドル、グアテマラ、南米ではエクアドル、さらにカリブ海諸国のトリニダード・トバゴ、ジャマイカ、ドミニカ共和国などが米国と緊密な安全保障協力関係を維持しているという。
コロンビアについても、ルビオ氏は「やや不安定な大統領がいる」と表現しつつも、国防・治安機構は依然として米国と深い協力関係にあると述べた。その一方で、彼の見方では、例外的存在として残る国はごくわずかであり、それがニカラグア、キューバ、そしてとりわけベネズエラである。ルビオ氏はマドゥロ政権について、極めて強い言葉で次のように表現した。
米国と協力しないどころか、テロ組織や犯罪組織と公然と連携する「非合法政権」であり、ヒズボラやイランに国内での活動空間を提供し、ELNやFARC残党勢力がベネズエラ国内で「公然と活動」するだけでなく、実際に領土を支配している。さらに麻薬組織と協力し、コカインをカリブ海経由で米国へ密輸している。
ルビオ氏にとって、このような政権は単に「非協力的」なのではなく、「安全保障上の脅威の発生源」である。そのため、西半球政策の最大の特徴は、「反麻薬カルテル・反犯罪テロ組織」の包括的戦争を推進する点にあるとした。その一環として、ハイチにおける「反ギャング安定化部隊」の創設が進められており、当初約5,500人規模を想定していたが、現在は各国の増派表明により7,500人規模に拡大する見通しだという。
ベネズエラ、「幽霊船団」制裁から軍事介入の「レッドライン」まで
ルビオ氏の発言によれば、ベネズエラはほぼ「病巣」として位置づけられている。記者会見では、ワシントンの最終目標が「政権交代」なのかどうか、繰り返し質問が出た。 (関連記事: 日中外交衝突から1ヶ月、ルビオ米国務長官が沈黙を破る 「日中バランス」重視の姿勢を鮮明に | 関連記事をもっと読む )
これに対しルビオ氏は、米国政策の核心は国家利益であり、特にマドゥロ政権とイラン、ヒズボラ、麻薬組織との協力関係に対処することだと説明した。その上で、ニューヨーク南部地区の連邦大陪審が、マドゥロ大統領および政権幹部複数名を麻薬密輸で起訴している事実を指摘し、「自分は個人的な非難をしているのではなく、事実を述べているにすぎない」と強調した。
同時に、現状が「米国にとって容認できない」ことは否定せず、トランプ大統領の目標はこの現状を変えることにあると述べた。
最も議論を呼んでいるのが、最近の米軍によるベネズエラの「幽霊船団」への打撃である。ルビオ氏によると、ベネズエラ産石油の約80%は、位置情報を遮断し、船籍を変更し、位置を偽装して制裁を回避する「幽霊船」によって輸出されているという。
これらの船舶に対する攻撃は、ルビオ氏の説明では「制裁の執行行為」に位置づけられ、すべて司法当局が発行した逮捕・差し押さえ令状に基づいて行われており、米軍は司法命令を執行しているにすぎないとされた。
さらに重要なのは、米国の戦略がすでに抑止効果を生んでいると主張した点である。カリブ海では、すでに「約5週間にわたり一度も打撃行動が行われていない」が、それは米国が監視をやめたからではなく、密輸船が出航できなくなったためだという。一方、太平洋航路では依然として打撃が続いており、密輸活動が別ルートへ移行した可能性があると分析した。
記者から、こうした軍事力の行使は「戦争行為」に近づいており、米国議会による『戦争権限法』の承認が必要ではないかと問われると、ルビオ氏は、民主・共和両党の歴代政権はいずれも同法の憲法上の正当性を認めてこなかったと述べた。ただし実務上は、政治的正当性を確保するため、議会に対して積極的に説明を行っているとした。
ルビオ氏によれば、トランプ政権はこれまでにベネズエラ関連の行動について、議会に対し23回の機密ブリーフィングを実施しており、そのうち6回は自身が出席した高官級会合だったという。現時点で、事前に議会承認や正式通知を要する「一線」を越える行動は一切行っていないと強調した。
地上侵攻の可能性については、仮定の話には応じないとして言及を避けた。ただし最後にこう付け加えた。米国の国家利益、特に国際犯罪やテロ活動が関わる場合、米国は自衛のために「あらゆる国家権力の手段」を用いる権利を留保している。それはすべての主権国家に共通する基本的権利であり、「ただし米国の権力は多くの国よりも大きい」という点が違うだけだ、と。
コロンビア、キューバ、そして「左右ではなく、協力するか否か」
ラテンアメリカにおけるもう一つの焦点は、コロンビアとの関係の浮き沈みである。コロンビア人記者からスペイン語で鋭く問われたのは、「コロンビアが左派大統領を選出すれば、米国は関係を格下げし、安全協力や装備支援を打ち切るのか」という点だった。
これに対し、ルビオ氏は意図的に「左右」という枠組みを解体し、問題の本質はイデオロギーではないと強調した。問題は、現職大統領が「多くの発言や行動において不安定であり」、さらに治安機関に対し、米国との協力を減らすよう指示している点にあると述べた。
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ルビオ氏は、ワシントンはコロンビア現政権の民主的正当性を疑っていないこと、また2026年の大統領選挙におけるコロンビア国民の選択を尊重する立場に変わりはないとした。その一方で、「一国の指導者が公然と米国を敵視し、治安機関に対してワシントンと協力するなと命じている状況で、米国が何事もなかったかのように振る舞うことはできない」と、現実を直視する必要性を指摘した。
ただし、コロンビア議会、地方首長、さらには軍・警察組織の中には、依然として親米的な勢力が多数存在しているため、米国としては「コロンビアという国家」との深い関係を可能な限り維持し、「特定の一個人との軋轢」が、過去50年にわたり築いてきた戦略的パートナーシップ全体を損なうことがないよう努める考えだと説明した。
一方、米国がキューバ政権の転換を求めているのかと問われると、ルビオ氏はほとんど隠すことなく次のように答えた。今回の政権に限らず、歴代すべての米政権は、キューバに「異なる性質の政権」が誕生することを望んできた。なぜなら、現在のキューバは共産主義であり、テロを支援するだけでなく、「完全に無能な」統治集団であり、この島を「一つの大惨事」に陥れたからだという。
こうした表現は、もともと脆弱な米キューバ関係に、さらに圧力を加えるものとなった。
移民・難民・ビザ問題 国境危機から「DEI後退」へ
2026年に米国が難民受け入れ計画を再び拡大するのか、特にアフガニスタン、シリア、イランなどで迫害を受ける宗教的少数派を対象とするのかと問われると、ルビオ氏は、トランプ大統領就任前の4年間に米国は「史上最も無謀な移民政策の失敗」を経験したと述べた。
その結果、1,500万人から2,000万人がさまざまな経路で米国に流入し、多くのケースで身元や背景の十分な審査が有効に行われなかったと指摘した。現在の最優先課題は「ブレーキを踏むこと」であり、国境管理を回復し、あらゆる入国制度の審査プロセスを点検することで、「審査したつもりだったが、実際には相手の背景をほとんど理解していなかった」という悲劇を二度と繰り返さないことだと強調した。
ルビオ氏は、米国は依然として世界で最も合法移民に開かれた国の一つであり、今年だけでも約100万人が合法的にグリーンカードを取得し、就労を開始すると説明した。ただし、主権国家として、米国には「誰が、なぜ来て、何をしてきたのか、将来的に社会的負担にならないか」を把握する権利があると述べた。
この前提の下で、難民や特別ビザ制度は将来的に再開される可能性はあるが、制度が修正される前に、過去と同じ規模に戻ることはないとした。
同様の論理は「多様性ビザ(Diversity Visa)」制度にも適用されている。記者から、ブラウン大学やマサチューセッツ工科大学の銃撃事件の容疑者が多様性ビザで入国していたこと、南ダコタ州のクリスティ・ノーム知事が同制度を停止したことについて問われると、ルビオ氏は、停止措置はこのビザで入国した全員を犯罪者扱いするものではないと説明した。
問題は、審査プロセスに構造的欠陥がないか、例えば面接時に本来なら警告信号となる「レッドフラッグ」が見過ごされていなかったかを検証すること объясした。 (関連記事: 日中外交衝突から1ヶ月、ルビオ米国務長官が沈黙を破る 「日中バランス」重視の姿勢を鮮明に | 関連記事をもっと読む )
また内部人事に関して、ルビオ氏は、議会公聴会で約束した通り、国務省内の反ユダヤ主義および「DEI(多様性・公平性・包摂性)」イデオロギーを排除したと述べた。外交官の昇進制度を改革し、前政権が導入していた「DEIスコア」を昇進要件とする制度を廃止し、今後は「能力本位」に戻すと強調した。優れた業績を上げていても、DEIスコアが低いために昇進できないといった「ばかげた状況」を防ぐ狙いだという。
議会、超党派協力、そして「トランプ構想の実行者」
記者会見の終盤、ルビオ氏は個人的な色合いの強い質問を受けた。かつて超党派で協力してきた民主党の上院議員の一部が、彼がトランプ政権に参加した後、「従来の立場を裏切った」と批判し、国務長官就任を支持した投票を後悔していると発言していることについてである。
ルビオ氏は、冷静なユーモアを交えてこう答えた。「当時は99票の賛成があった。4票足りなくても問題はない。」
その上で、国務省は独立王国ではなく、国務長官も選挙で選ばれる権力機関ではないと指摘した。国務長官は大統領に指名され、上院の同意を経て任命される存在であり、その職務は「大統領の外交ビジョンを実現すること」だと述べた。
ルビオ氏の認識では、憲法は、大統領の外交方針に対して「表向き従いながら内側で抵抗する」国務省を想定していない。もし国務長官が大統領の路線に同意できないなら、職を辞すべきであり、体制内で抵抗すべきではないとした。
「トランプ氏は国民によって選ばれた大統領であり、三軍の統帥者だ。私の現在の仕事は、彼の国務長官として、外交の青写真を具体的な政策に落とし込むことだ」と語った。
約1時間半に及んだこの記者会見で、ルビオ氏は時にスペイン語でラテンアメリカの記者と激しく応酬し、時に冗談で場を和ませながらも、終始一つの軸を貫いた。すなわち、トランプ第2期の外交において、ガザ、ロシア・ウクライナ、インド太平洋、ラテンアメリカのいずれにおいても、譲れない基準は抽象的な「国際規範」ではなく、彼の言う「米国の国家利益」であるという点だ。
それは、トランプ2.0が「国家利益」をもって外交の羅針盤を再調整する中で、あらゆる地域紛争や課題が、次の問いで測られることを意味している――それは、米国をより安全に、より強く、より豊かにするのか、それとも単に「他国の戦争」に過ぎないのか、という問いである。
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編集:梅木奈実

















































