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「不戦」を語る一方でミサイル攻撃 プーチン氏の平和発言に残る大きな条件 ロシアのプーチン大統領が、年次の記者会見を主催した。(写真/AP通信)
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は19日に開かれた年末恒例の記者会見で、ウクライナ戦争終結後に新たな戦争を起こす計画はないと明言した。欧州連合(EU)に対し「根拠のない恐怖に怯えるべきではない」と呼びかけ、ロシアが欧州諸国への攻撃を計画しているとの観測を「デタラメだ」と一蹴した。しかし、この「不戦の誓い」の裏には、ロシアが相応の尊重を受け、欧米諸国から礼を尽くした扱いを受けるという「付帯条件」が隠されている。
英国放送協会 (BBC)の記者スティーブ・ローゼンバーグ氏が、将来的に新たな「特別軍事行動(2022年のウクライナ侵攻に対するロシア側の公称)」を行う可能性があるか尋ねると、プーチン氏は次のように答えた。「もし諸君(欧米)が我々を尊重し、我々の利益を重んじるのであれば、軍事行動は二度と起こらない。我々が常に諸君の利益を尊重しようと努めてきたのと同じようにだ」
プーチン氏は12月初旬にも同様の考えを表明しており、ロシアに欧州諸国と開戦する意図はないと強調している。一方で、もし欧州側が「紛争を誘発したり火種を撒いたりする」のであれば、モスクワ(ロシア政府)はあらゆる事態に対応する準備ができていると牽制した。
プーチン氏は「ロシアを尊重する」ことの具体例として、過去の「NATO(北大西洋条約機構)の東方拡大」を持ち出した。
ロシアのプーチン大統領が年次記者会見の開始前、来場者から花束を受け取った。(写真/AP通信)
欧米がかつてのようにロシアを欺かない限り、新たな侵攻を行うことはないと語り、BBC記者に対し、1990年にNATOが当時のソ連指導者ゴルバチョフ氏へ行ったとされる「東方へは拡大しない」という約束が破られたことを、長年拭いきれない「裏切り」として非難した(なお、ゴルバチョフ氏本人は生前、そのような明確な約束はなかったと否定している)。
ロシア最大級の政治宣伝(プロパガンダ)の場とされるこの会見で、プーチン氏は巨大なロシア地図を背に登壇した。その地図には、ロシアの既存領土だけでなく、2014年に併合したクリミアや、現在実効支配しているウクライナの占領地域も「ロシア領」として描き込まれていた。
ロシア国営テレビによれば、会見前には国民から300万件を超える質問が寄せられ、プーチン氏の「親しみやすいリーダー」像を演出しようとする意図が見て取れた。しかし、ネット環境の劣悪さや水道品質への不満、会見を「サーカス」と揶揄するような批判的な声は、主催者側によって悉く「処理」され、表に出ることはなかった。
ロシアのプーチン大統領が、年末恒例の記者会見に再び自ら出席した。(写真/AP通信)
プーチン氏が語る「平和的な解決」とは、実のところ、キーウ(ウクライナ政府)やワシントンに対し、ロシア側が提示したすべての条件を無条件で受け入れ、一切の妥協を認めないことを強いているに過ぎない。
ロシア軍のミサイル攻撃を受けたウクライナ南部ザポリージャ州。(写真/AP通信)
ロシア軍のミサイル攻撃を受けたウクライナ南部ザポリージャ州。(写真/AP通信)
ウクライナ前線に展開するロシア兵。(写真/AP通信)
彼が提起した立場には、既に合意されたNATOへの参加放棄だけでなく、ウクライナ軍がロシアの一部占領地域から撤退することを求めるものがあった。ドンバス(Donbas)地域に加え、南部ザポリージャ州(Zaporizhzhia)と黒海沿岸のヘルソン州(Kerson)も含まれる。
和平の停滞を欧米の責任と主張 トランプ米大統領が強力に推進している停戦案について、プーチン氏は賞賛を送り、戦争終結に向けたトランプ氏の努力を高く評価した。その一方で、合意を阻んでいるのは西側諸国であり、自身が交渉を拒んでいるわけではないと不満を漏らした。
プーチン氏はBBCに対し、ロシアは英国や欧州、米国との協力を望んでいるとしつつも、それはあくまで「対等な立場と相互尊重」が前提であると強調。ロシアの中長期的な安全が保証されるのであれば、即座に戦闘を停止する用意があると述べた。
しかし、NATOやEUがこの言葉を額面通りに受け取る可能性は低い。NATOのリュッテ事務総長は、情報機関の分析に基づき、ロシアが水面下で工作活動を活発化させていると指摘。「西側諸国は最悪の事態(戦争)に備え、事前に準備を整える必要がある」と警戒を強めている。
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