ザカリア氏が警告「米国を再び小さくする」 トランプ流安保戦略が招く孤立の危険 「1920年代の孤立主義と同じ過ち」

2025-12-24 16:58
米国ドナルド・トランプ大統領が報道陣の取材に応じた。(AP通信)
米国ドナルド・トランプ大統領が報道陣の取材に応じた。(AP通信)

米CNNの国際情勢番組「GPS」の司会者として知られるファリード・ザカリア氏は19日付のワシントン・ポストへの寄稿で、新戦略に強い懸念を示した。ザカリア氏は、米国のような世界的な経済・軍事大国が関心を西半球に限定することは無意味であり、結果的に米国を地域大国へと押し下げ、「再び偉大にする」どころか「再び小さくする」だけだと警告する。場合によっては、第2次世界大戦前のような国際秩序の混乱を招きかねないという。

ザカリア氏によれば、新たな国家安全保障戦略は冒頭から、米国を世界的覇権国家として位置づけてきた従来の外交路線を厳しく批判している。しかし、まさにその路線こそが、米国が世界各地で自国の利益を守り、グローバル化を推進し、国際機関に関与しながら国際的責任を果たしてきた基盤だったと指摘する。それにもかかわらず、トランプ政権の戦略文書は、米国の国益をより狭い範囲に定義すべきだという方向性を打ち出している。

文書は、欧州やアジアにも一定の利害が存在すること自体は認めているものの、米国の「根本的利益」は近隣の西半球に集中すべきだと強調する。その根拠として持ち出されているのが、19世紀の「モンロー主義」や、いわゆる「トランプ推論(Trump Corollary)」だ。この表現は、セオドア・ルーズベルト大統領が提唱した「ルーズベルト推論」を想起させるものでもある。実際、国務長官のルビオ氏も最近、「アメリカ・ファースト」とは、まず自国が置かれている地域に集中することだと繰り返し強調している。

ニュースの補足:ロースベルト推論とは?

1904年12月、米国のセオドア・ルーズベルト大統領は議会への年次教書で、米国が求めるのは「隣国の安定、秩序、繁栄」だと強調した。そのうえで、各国が自国民の行動を正し、秩序を維持して義務を果たす限り、米国の干渉を恐れる必要はなく、米国との「真摯な友情」を得られるという立場を示した。

一方で、長期にわたる不正や、政治・社会の統治が機能しない状態が続けば、文明国の介入を招きかねないとも警告した。こうした状況が西半球で起きた場合、米国はモンロー主義を守るため、「国際警察権」を行使せざるを得ない場合がある。

しかしザカリア氏は、こうした主張は一見もっともらしく聞こえるものの、現実には成り立たないと断じる。米国は歴史上最も強大な国家であり、過去30年にわたって影響力を拡大し続けてきた。多国籍企業やテクノロジー分野においても、米国は世界的な主導的地位を占めている。その米国が、自らを「裏庭」に当たる地域の問題に限定してしまえば、米国自身だけでなく、世界全体に重大な影響を及ぼすことになるという。

ザカリア氏はさらに、ジェームズ・モンロー大統領が1823年に掲げたモンロー主義の時代背景にも言及する。当時の米国は人口およそ1000万人、24州から成る農業国で、領土の中心はミシシッピ川以東に限られていた。世界GDPに占める割合は約2.6%と、現在の10分の1程度にすぎず、軍事力も世界の上位15か国に入らない規模だった。モンローは、スペインやポルトガルから独立した中南米諸国を承認し、欧州列強に再植民地化を警告したが、その本質は覇権主義ではなく、反植民地主義と不干渉主義にあったとザカリア氏は指摘する。

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