「2027年武力侵攻論」だけでは見誤る 張五岳氏が示す、2026年の米中攻防で台湾が直面する三つの試練

12月23日、淡江大学の両岸関係研究センター主任の張五岳氏が講演し、「地域経済統合下における台湾の戦略的立ち位置と対応策」について分析した。(写真/王秋燕撮影)
12月23日、淡江大学の両岸関係研究センター主任の張五岳氏が講演し、「地域経済統合下における台湾の戦略的立ち位置と対応策」について分析した。(写真/王秋燕撮影)

2026年を目前に控え、台湾が最も注視すべき国際的変数は何か。淡江大学・両岸関係研究センター主任の張五岳氏は23日の講演で、「最大の焦点は『2027年に中国が武力侵攻する』という通説ではない」と明言した。北京の意思決定を主観的な恐怖や想像で読み解くべきではないとした上で、今後の台湾を左右する要因として「米中間の新たな大国間ゲーム」、「中国共産党の五中全会が発する政治的シグナル」、「台湾の統一(九合一)地方選挙」、という三点を挙げた。

この発言は、陸委会と国家科学・技術委員会の委託を受けた中華経済研究院が、台大医院国際会議センターで開催した「トランプ新政権が中国経済および両岸経貿に与える影響と展望」をテーマとするシンポジウムの中で行われた。会場では複数の研究者が登壇し、米中関係と台湾情勢を多角的に分析した。

孫悟空型のトランプ政治と中間選挙 最大のリスクは「関税の数字」ではなく不確実性

張氏は、米国大統領ドナルド・トランプ氏の統治スタイルを「孫悟空のようだ」と表現した。変化のスピードが極端に速く、就任後は非常事態権限を多用し、大胆な政策を次々と打ち出す一方、メディア露出を通じて世論と議題設定を主導するのが特徴だという。

張氏が警鐘を鳴らしたのは、関税率の高低そのものではない。最大の問題は「先が読めないこと」だ。関税は国内政治の動き、価値判断、特定国への姿勢によって容易に引き上げ・引き下げが行われ、企業や各国政府は長期的な見通しを立てられなくなる。不確実性そのものが、最も大きなコストになっていると指摘した。

世論調査を見ても、移民、貿易、経済、インフレといった分野でトランプ氏の支持率は伸び悩み、特に貿易・経済政策ではマイナス評価が目立つ。中間選挙を意識する中で、対外的には「成果を取った」と示せる交渉を強調し、国内では物価高や生活費への不満に応える政策を迫られる構図が浮かび上がる。

違憲判断が出ても関税は終わらない 232条・301条という「次のカード」

国際緊急経済権限法(IEEPA)を巡る訴訟について、張氏は「米連邦最高裁がトランプ政権に不利な判断、場合によっては違憲判断を下す可能性はある」との見方を示した。ただし、それをもって関税政策が幕を閉じると考えるのは早計だという。

米国には、国家安全保障を理由に輸入制限を課す232条や、不公正貿易を理由とする301条といった別の法的手段が残されている。仮にIEEPAが使えなくなっても、関税と貿易圧力は「軌道を変えて継続」される可能性が高い。法的な形式が変わるだけで、方向性は維持され、むしろ不確実性は一段と増す恐れがあると張氏は分析した。

「緊張は続くが、制御不能ではない」両岸関係と日中関係、鍵は米中の対話維持

地域の安全保障情勢について、氏は現在の両岸関係と日中関係を「緊張感はあるが、リスクは管理可能な水準にとどまっている」と表現した。台湾海峡という「小さな両岸」と、米中関係という「太平洋規模の大きな両岸」は密接に連動しており、米中が対話のチャンネルを維持し、誤認や誤算を避ける限り、摩擦があっても一気に制御不能へと転じる可能性は高くないという。

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