北京観察》若者は「見るだけ」で買わない! 中国、異例の「ブラックリスト抹消」政策は諸刃の剣か

中国経済、五つ星の旗。(AP通信)
中国経済、五つ星の旗。(AP通信)

末が近づく中、中国各地では消費を喚起し、手取り収入を底上げするための施策が相次いで打ち出されている。現状を見る限り、「消費刺激」の規模に比べて「収入増」への踏み込みは甘いと言わざるを得ない。だが、これまで消費促進ばかりに固執してきた当局も、ようやく「収入が増えなければ消費は改善しない」という現実に目を向け始めたようだ。中国のある経済学者は次のように指摘する。「低所得層の収入を1%引き上げれば、日用品への支出は3%から5%増加する。これは企業、消費者、そして政府にとってもプラスだ」。しかし、なぜこれほど当然の施策が今になってようやく議論の遡上に載ったのか、各方面から冷ややかな声が上がっている。

現在、中国経済の停滞を象徴しているのが小売業界だ。大型連休であっても「ウィンドウショッピング(見るだけ)で何も買わない」のが庶民のトレンドとなっている。最近、中国のSNS「小紅書(RED)」では、「買えないんじゃない、そもそも買う金がないんだ」というフレーズが新たなミームとして流行している。本来なら消費の主役であるはずの若者層にとって、給料の未払いや将来の収入不安が募る現状では、お金を「使う」ことよりも「守る(貯金)」ことの方が死活問題となっているのだ。

これまで中国人民銀行(中央銀行)は、個人向けローンの利息補助などを実施してきたが、効果は限定的だった。そこで当局は、安易に「先取り消費」を促すよりも、傷ついた個人の「信用スコア(徴信)」を修復させることで経済を回す方針に切り替えたようだ。返済が滞っている債務者に完済を促し、銀行の資産内容を健全化させつつ、消費の好循環を狙うという。しかし、専門家からは「信用を修復したばかりの相手に再び融資を行えば、さらなるデフォルト(債務不履行)を招くのではないか」という懸念も噴出している。

救急措置では終わらない、信用修復は構造問題への対応

中国が3年間にわたる厳しいゼロコロナ政策を敷いていた時期、銀行業界は不良債権の悪循環に陥っていた。極端な封鎖によって仕事を失った人々が生活のために借金を重ね、返済を迫る銀行との間で深刻なトラブルや治安事件が頻発した。2023年から2024年にかけて、中国人民銀行は「コロナ禍の融資については返済を猶予する」との通達を出したが、収入源が絶たれた状態では返済率は下がり続けた。最終的に商業銀行は、担保となった不動産を次々と差し押さえ、売却することで資金流動性を確保せざるを得ない事態に追い込まれた。 (関連記事: 若者失業率は全体の3倍水準に 「ネズミ人間」拡大、海外メディアが見る中国経済の「ひび割れ」 関連記事をもっと読む

今回、人民銀行が打ち出した「信用修復」政策は、まさにこの泥沼化した問題への解決策だ。2020年1月から2025年末までの間に発生した、1回あたり1万元(約21万円)以下の延滞について、「一度限りの修復チャンス」を与えるというもの。2026年3月末までに全額返済すれば、人民銀行の信用情報システムから「延滞記録」を抹消し、あたかも何もなかったかのように扱うという劇薬だ。

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