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AIは映画制作をどう変えるのか SSFF & ASIA国際カンファレンス、議論の全貌をアーカイブ配信 米国アカデミー賞公認の国際短編映画祭「SSFF & ASIA」は、AIと映画制作の未来をテーマに10か国の映画関係者が創造性・協働・倫理について議論した国際カンファレンスの模様を、12月11日よりアーカイブ配信として公開した。(写真/SSFF & ASIA提供)
米国アカデミー賞公認、アジア最大級の国際短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア(SSFF & ASIA)」は、2025年10月26日に秋の国際短編映画祭の一環として開催した国際カンファレンス「AIと映画制作の未来:創造性・協働・倫理の探求」の模様を、12月11日よりアーカイブ映像として国内外に公開した。
同カンファレンスは、SSFF & ASIAエグゼクティブ・ディレクターの東野正剛氏による、映画祭におけるAI作品の現状説明から始まった。東野氏は、海外からの応募作品数が毎年約5,000作品に上る中、AIを活用した映像作品の割合が急増している考えを示し、2024年には全体の約2%にあたる112作品だったAI活用作品が、2025年には約6%の275作品に達したと説明した。
カンファレンスには、10か国から映画監督、プロデューサー、研究者、業界関係者が参加。「創造性と協働(Creativity & Collaboration)」「倫理と文化的責任(Ethics & Cultural Responsibility)」「AIシネマの未来(Future Vision of AI Cinema)」の3つのテーマを軸に、AI技術が映画制作にもたらす変化について意見が交わされた。
「創造性と協働」をテーマとしたセッションでは、日本の映画監督・串田壮史氏が、AI支援による短編映画制作について、AIを「言葉で人類の記憶を引き出す対話の相手」と表現し、単なる道具を超えた存在であると語った。山口ヒロキ氏は、現時点ではAIは創作者の意図を可視化するアシスタントに近いとしながらも、将来的には真の共創者になり得るとの見解を示した。
ドイツから参加した作曲家・映画監督のマルセル・バルゾッティ氏は、AI映画『Imperia』の制作過程を紹介し、3万回以上のプロンプトを重ねた経験を踏まえ、「どんな技術を使っても、映画の核は物語である」と述べた。共同脚本家のグンドゥラ・バルゾッティ=バスト氏は、脚本制作そのものは実写とAIで大きな違いはない一方、プロンプト制作においては意図通りの結果が得られず、何度も書き直す必要があると語った。
後半のセッションでは、各国におけるAI映画制作の現状と課題が共有された。イランのテヘラン国際短編映画祭プログラマー、ジャヴィッド・ソブハニ氏は、制約の多い制作環境においてAIが不足する資源を補い、時にプロデューサーや共同脚本家の役割を果たすと説明した。セネガルの映画監督ウセイン・デンベル・ソウ氏は、AIが新たな産業を生み出す可能性に触れ、AIがなければSFやファンタジーといった大規模VFX作品の制作は現実的に不可能だったと振り返った。
元ワーナー・ブラザーズ戦略アドバイザーのダグラス・モントゴメリー氏は、AIが制作速度と協働の効率を高める点を評価し、アニメーション制作期間について、今後は2〜5倍規模で短縮される可能性があるとの見通しを示した。一方、メキシコの映画監督オスカー・パレス氏は、同国ではAI映画の普及や制度整備が十分に進んでいないと指摘し、教育と倫理の重要性を訴えた。
また、韓国・富川国際ファンタスティック映画祭のシン・チョル・ディレクターは、生成AIの急速な進化に言及しつつ、フルオート・クリエーションが進むことによる創作者の意図喪失への懸念を示した。一方で、AIが若い創作者に平等なスタートラインを与える側面もあるとし、今後は技術以上に創造性が重要になると述べた。
議論を通じて共有されたのは、AIは人間の創造性を奪う存在ではなく、それを拡張する存在であるという認識だった。SSFF & ASIA代表の別所哲也は挨拶で、「技術革新の時代にあっても、物語の力を祝福し続けることが私たちの使命だ」と述べ、国際カンファレンスは盛況のうちに幕を閉じた。なお、本イベントは令和7年度「日本博2.0」事業の一環として開催された。
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