北朝鮮はこのほど、国営メディアを通じて、同国初の「原子力潜水艦」とされる艦艇の建造工程を撮影した複数の写真を公開した。国営メディアは、この巨大な水中艦艇の規模や性能が、米海軍の現役主力であるバージニア級攻撃型原子力潜水艦に匹敵すると主張しており、もし発表内容が事実であれば、北朝鮮の海軍近代化は、原子力潜水艦の研究開発にゴーサインが出たばかりの韓国を上回るスピードで進んでいる可能性もある。
朝鮮中央通信(KCNA)が公開した写真によると、最高指導者の金正恩氏は屋内の建造施設を自ら訪れ、深紅色に塗装された潜水艦の外殻を視察した。この艦艇は弾道ミサイル搭載型潜水艦の可能性が指摘されているが、北朝鮮側は現時点では建造段階にあり、進水や海上試験はまだ行われていないとしている。一方で、国営メディアは、この潜水艦の満載排水量が約8700トンに達するとし、米海軍のバージニア級原子力潜水艦と同等の規模だと強調した。
Pyongyang's Xmas present to its foes: images of new 8700-ton "nuclear-powered strategic guidedmissile submarine" under construction, distinctive with an elongated sail containing likely missile launch tubes, possible flank array sonar and 6 torpedo tubes.https://t.co/UsvzrpwDAqpic.twitter.com/OutaETTtXA
— Collin Koh 🇸🇬🇺🇦 (@CollinSLKoh)December 24, 2025
原子力潜水艦の保有は、金正恩氏が長年掲げてきた悲願の一つとされる。朝鮮中央通信によれば、金氏は視察の場で、潜水艦戦力が国家防衛戦略において持つ重要性を繰り返し強調し、「最も強力な攻撃能力を基礎とする防衛体制」を構築する必要性を訴えたという。金氏は、「強大な攻撃力こそが国家安全を守る最良の盾だ」と述べ、抑止力の中核として原子力潜水艦を位置づける考えを示した。

また、韓国が米国の承認を得て原子力潜水艦の研究・開発を進める方針を示したことについて、金正恩氏は、米国の支援を受けた北朝鮮への公然たる安全保障上の脅威だとの認識を示していると伝えられている。
北朝鮮が比較対象として持ち出したバージニア級原子力潜水艦は、冷戦期に運用されたシーウルフ級潜水艦の後継として開発された米海軍の主力艦で、外洋と沿岸の双方での運用を想定した初の多目的原子力潜水艦だ。ニューポート・ニューズ造船所とゼネラル・ダイナミクス・エレクトリック・ボートが共同で建造を担い、計30隻の建造が計画されている。現在までに24隻が就役している。

最新のV型では満載排水量は約1万200トン、全長は約140メートルに達し、S9G加圧水型原子炉を搭載する。最大潜航速度は約34ノット、最長70日間の連続行動が可能で、乗員数は最大135人とされる。Mk48重魚雷に加え、トマホーク巡航ミサイルの発射能力も備え、艦名は米国の州名を基本としつつ、特別な功績を持つ人物に由来する名称も用いられている。直近では4月に「アイダホ」が就役した。
原子力潜水艦は、従来のディーゼル電気潜水艦と比べ、航続力において決定的な優位性を持つ。理論上は数年間にわたり水中で活動でき、燃料補給や充電のために頻繁に浮上する必要がない点が最大の特徴だ。速度が速く、静粛性にも優れるとされる。この建造技術を保有する国は現在、米国、ロシア、中国、フランス、英国、インドに限られている。

今回公開された映像について、ソウルの軍事専門家は「軽視すべきではない」としつつも、慎重な見方を示している。韓国統一研究院(KINU)の洪敏研究員は、写真から判断すると、すでに原子炉が搭載されている可能性は否定できず、今後2年以内に試験航行やミサイル関連の試験が行われる可能性があると指摘した。ただし、韓国はミサイル駆逐艦や通常型潜水艦の建造技術において、依然として北朝鮮を大きく上回っており、過度な不安や緊張は避けるべきだとも述べている。
一方、今回の写真で注目を集めたのは新型兵器そのものだけではない。金正恩氏の娘である金主愛氏が再び視察に同行していた点も、外部の関心を集めている。近年、金主愛氏は重要な軍事施設や工場視察の場に頻繁に姿を見せており、金正恩氏が将来的な後継を意識し、娘を段階的に表舞台へ登場させているのではないかとの観測が広がっている。
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