台湾野党、賴清德総統の弾劾案始動 5月19日に記名投票、日程表を公表 成立要件は

2025-12-26 13:11
国民党と民衆党の両党団は、頼清徳総統に対する弾劾案を正式に提出することで合意し、26日に弾劾手続きの日程を公表した。来年1月に審査を開始し、5月19日に記名投票を実施する予定。(資料写真/顔麟宇撮影)
国民党と民衆党の両党団は、頼清徳総統に対する弾劾案を正式に提出することで合意し、26日に弾劾手続きの日程を公表した。来年1月に審査を開始し、5月19日に記名投票を実施する予定。(資料写真/顔麟宇撮影)

台湾の立法院における与野党の攻防が重大局面を迎えている。財政収支配分法改正をめぐる憲政上の争議を受け、国民党と民衆党の両党団は協議の末、頼清徳総統に対する弾劾案を正式に提起することで合意した。

国民党団書記長の羅智強氏は26日、弾劾の具体的な日程を公表。来年1月に審査手続きを開始し、頼総統就任2周年前日の5月19日に記名投票を実施する予定だと明らかにした。立法院史上初となる総統弾劾をめぐる攻防は、野党側の動員力だけでなく、法解釈や憲政上の権限分担をめぐる激しい議論を引き起こすことが確実視されている。

国民党・民衆党が連携し「頼清徳総統弾劾案」始動

​5月19日に記名投票、総統への説明要請は2回 憲政危機の全日程

​国民党と民衆党の両党団は、弾劾手続きを4段階に分けて進めることで一致している。

【第1段階】専門家公聴会(1月14日・15日)

各党団が推薦する学者・専門家が出席し、弾劾事由および憲政上の争点について公開討論を行う。

【第2段階】第1回全院委員会(1月21日・22日)

立法院は初めて、被弾劾人である頼清徳総統に対し、出席して説明および質疑に応じるよう要請する。

  • 手続き: 提案者による弾劾理由説明(各10分)→ 総統説明(15分)→ 立法委員による質疑
  • 想定される変数:総統が出席しない場合は、各党団の委員がそれぞれ意見表明を行う方式に切り替えられる。

【第3段階】聴聞および第2回審査(4月27日、5月13日・14日)

4月27日に聴聞会を開催し、政府関係者や社会各界の証人を招致。

5月13日・14日には第2回全院委員会を開き、再度、総統の説明を要請する。

【第4段階】本会議での決議(5月19日)

本会議において記名投票による採決を実施する。

なぜ弾劾に踏み切るのか 対立の火種は『財政収支配分法』

今回の憲政危機の発端は、『財政収支配分法』改正案にある。行政院長の卓栄泰氏は同法について「執行に重大な支障がある」として副署を拒否し、施行しない方針を表明。これは憲政史上初の対応であり、頼清徳総統もこれを支持した。

  • 野党側の主張:立法院で三読可決された法律を行政権が「副署せず、執行もしない」のは、憲法秩序を破壊し、権力分立を否定する行為だと批判。
  • 与党側の主張:行政院には法律執行の判断権があり、改正案は中央財政を空洞化させる恐れがあると反論している。

台湾・弾劾・罷免・内閣不信任案の違い

項目総統弾劾総統罷免内閣不信任案(倒閣)
対象総統・副総統総統・副総統行政院長
発動要件立法委員の過半数提案立法委員の4分の1提案立法委員の3分の1提案
可決要件立法委員の3分の2+憲法裁判所同意立法委員の3分の2+国民投票立法委員の過半数
最終判断憲法裁判所国民(選挙)立法院

台湾・総統弾劾をめぐるFAQ

Q1:総統弾劾のハードルはどれほど高いのか

A:極めて高い。

立法院の定数は113議席で、弾劾成立には3分の2(76議席)が必要となる。現在、国民党と民衆党の合計は62議席にとどまり、民進党議員の離反がなければ立法院で可決するのは困難とみられる。仮に可決されても、最終的には憲法裁判所での審理が必要となる。

Q2:なぜ卓栄泰行政院長を直接弾劾できないのか

A:憲法上、立法院が弾劾できるのは「総統・副総統」のみ。

行政院長に違法・失職があると考える場合、立法委員は証拠を監察院に移送し、監察委員による弾劾を求めるか、内閣不信任案(倒閣)を提出するしかない。

Q3:弾劾が成立した場合、総統選挙はやり直されるのか

​A:行われない。

憲法規定により、総統が弾劾により解職された場合は、副総統の蕭美琴氏が残りの任期を継承する。再選挙は実施されない。

Q4:現在の憲法裁判所は弾劾審理が可能なのか

​A:法的な行き詰まりが存在する。

改正後の『憲法訴訟法』では、重大判決には9人の大法官が必要だが、現在在任しているのは8人にとどまる。立法院が新たな人事案を可決しない限り、弾劾案が付託されても審理できない可能性がある。

Q5:頼清徳総統が立法院での説明要請に応じない場合はどうなるのか

​A:立法院には強制的な出席命令権はない。

『立法院職権行使法』により、被弾劾人の出席を要請することはできるが、拘束力はない。総統が欠席した場合でも、予定された日程に従い、各党団委員の発言を経て、そのまま採決手続きへ進む。

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