「特別なものではなく、ただ一つの普通の物語」──そう語るのは、香港出身でフリーランスのモデル兼ウェブデザイナーとして活動するriko氏(Instagram:@risutannn)だ。ワーキングホリデーをきっかけに来日し、就労ビザへの切り替え、結婚と子育て、ウェブデザインの仕事、さらに写真活動との両立。彼女の13年間は、日々の積み重ねが形づくった歩みそのものだった。

2013年、riko氏はワーキングホリデーで来日した。当初は1年間の滞在を予定していたが、日本でフルタイムの職を得て就労ビザに切り替え、定住を決断することになる。
「日本語を学んでいたので日本を選んだ。最初は短期のつもりだったが、仕事が決まり、そのまま残ることになった」と振り返る。

来日当初は、住居契約や電話番号の取得、銀行口座の開設などに大きな壁があった。「電話がなければ家が借りられず、家がなければ口座も作れない」という悪循環に直面し、その体験をSNSで発信したという。日本語力も十分ではなく、アルバイト探しや電話応対に不安を抱えていたが、年月を重ねる中で徐々に克服していった。

職業面では、香港時代から携わってきたウェブデザインの道を日本でも歩み続けている。これまで複数の企業で勤務し、主にサイト制作を担当。現在はフルフレックス制度を導入する職場に所属し、午前5時から午後10時までの間で自由に勤務時間を調整できる。
そのため平日の合間に撮影の仕事を入れることも可能だという。「週末は子どもの野球や育児があるので、撮影は平日が中心。業務が残れば夜に作業を続けて補っている」と説明する。

同時に、riko氏にとって欠かせない活動が写真だ。もともとセルフポートレートを撮ることを好んでいたが、子育てのため一時中断していた。子どもの成長で再び自分の時間を持てるようになった近年、撮影を再開。自身のポートレートをInstagramに投稿したことをきっかけに撮影依頼が舞い込み、モデルとしても活動の幅を広げている。
「平日の休憩時間を利用して撮影に臨むのは大変だが、自分にとって大切な表現の場になっている」と話す。
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日本の職場文化や人間関係についても言及する。「廊下ですれ違うだけでも『お疲れ様です』を言わなければならない」「建前と本音を読み取る必要がある」と、当初は文化の違いに戸惑ったが、今では自然に馴染んだという。
一方で「保護者同士の付き合いは気遣いが多く、めんどうに感じることもある」と率直に語った。