青森県で「ミスねぶた」として脚光を浴び、現在は青森市観光協会で台湾との観光交流を担う台湾出身の凱西(本名:吳詠心)さん。大学時代を東京で過ごした後、2019年に青森へ移り住み、地方での暮らしと国際交流の現場を体験しながら、独自の視点で文化を発信し続けている。《風傳媒》の取材に応じ、東京から青森へ移住した経緯や、地方で得た経験を通して見えてきた文化発信の可能性について語った。

日本に来たきっかけは大学進学だった。高校時代に英語を専攻していた凱西さんは、海外留学に強い関心を持ち、グローバル30のプログラムを通じて東京の大学に入学。子どもの頃から日本を何度も訪れていたこともあり、東京は比較的馴染みのある場所だったという。

卒業後は東京で就職したものの、コロナ禍で将来に不安を感じるようになった。その頃、偶然目にしたのが「青森市役所の国際交流員募集」だった。実はその直前に旅行で青森を訪れ、「とても良い印象が残っていた」と話す。家族からの反対もあったが、「1年契約だから、合わなければ戻ればいい」と自らを納得させ、青森への移住を決断した。

青森市での国際交流員としての活動は、地元の学校や市民センターで台湾文化を紹介する講座を開いたり、SNSで青森の魅力を発信したりすることが中心だった。自身で企画した台湾の展示会など、新しい取り組みにも積極的に挑戦してきた。

そうした活動の延長線上で応募したのが、青森の夏を代表する「ねぶた祭」のイメージキャラクター「ミスねぶた」だった。2022年、外国人として初めて選出され、「観光PRの役割があると聞いて思い切って応募しました。まさか自分が選ばれるとは思っていなかったので、本当に驚きました」と振り返る。任期中はオープンカーに乗って祭りを盛り上げるだけでなく、県外や海外でのPR活動にも参加し、青森県知事の台湾出張にも同行した。 (関連記事: 「普通の物語」としての13年──香港出身riko氏、日本で歩んだ仕事・子育て・写真活動の軌跡 | 関連記事をもっと読む )

現在は青森市観光協会の職員として勤務し、主に台湾との観光連携を担当している。台湾出身という背景を活かし、青森の情報を台湾に発信したり、台湾での観光イベントに出展したりと、独自の視点から観光PRの新しい切り口を模索している。「外から来たからこそ、地元の人が見落としている魅力を発信できる」と自信を語る。