舞台裏》台湾・国民党が鄭麗文氏の当選を警戒する理由 「地下党主席」と目されるCK楊の存在

2025-09-23 15:38
鄭麗文氏(中央)は国民党主席選に勢いを持って臨むが、その背後にいる支援者CK楊の存在が議論を呼んでいる。(写真/柯承惠撮影)
鄭麗文氏(中央)は国民党主席選に勢いを持って臨むが、その背後にいる支援者CK楊の存在が議論を呼んでいる。(写真/柯承惠撮影)
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台湾・国民党主席選挙の立候補登録は9月19日に締め切られ、前立法委員の鄭麗文氏、国民党立法委員の羅智強氏、前台北市長の郝龍斌氏、孫文学校総校長の張亞中氏ら6人が届け出を完了した。党員を対象にした9月15日の内部調査によれば、支持率は暫定的に鄭氏が首位で、郝氏と羅氏が僅差で追い、3人の差は約3ポイントと誤差範囲に収まる接戦となっている。第4位の張氏は大きく後れを取り、「三強鼎立」の構図が固まりつつある。

鄭氏、郝氏、羅氏はいずれも強みと弱みを抱えており、最終的な勝敗は現時点では見通せない。ただ、党内選挙に詳しいベテラン党務関係者によると、鄭氏がやや有利と見る向きもある。弁論力に優れ、戦闘力の高いメディアイメージが評価されており、黄復興党員票でも郝氏と互角。世代交代を前面に掲げる姿勢は、古い顔ぶれに飽きた都市部や若い自主党員の支持を得やすい。ただし、本土派の支持基盤には弱く、イメージや主張が重なる羅氏との競合が本格化すれば、リードを維持できるかは不透明だ。

20250918-立委羅智強18日登記參選國民黨黨主席。(柯承惠攝)
国民党主席選に出馬した羅智強立法委員(右)は、ネット世論の影響力やメディア戦に強みを持つ候補として注目されている。(写真/柯承惠撮影)

国民党主流は郝龍斌氏に期待 盧秀燕氏の不出馬が票読みを左右

一方、鄭氏に迫る郝氏は、豊富な政治経験と人脈から党内での信頼が厚い。国民党の主流意見も、新主席には党務を安定させ、2026年や2028年の選挙を戦える力量が求められるとし、その点で郝氏は安全かつ信頼できる選択肢とみなされている。軍との結びつきが強いことから、深藍(国民党の保守色が濃い支持層)や黄復興党員票も鄭氏に劣らず、さらに羅氏が鄭氏の支持層を食えば、郝氏が逆転勝利する可能性もある。

ただし、羅氏は本土派や地方派閥からの支持を欠くのが致命的で、深青や都市部党員票は鄭氏と重なり合う。このため、二人を打ち破るには「奇跡」が必要との見方が強い。

郝氏を支持する県市議長や地方派閥の力はあるものの、関係者によれば、当初は「台中市長の盧秀燕氏が必ず立候補する」との見方が強く、多くの党員票の大口支配層が投票権を確保しなかったという。盧氏が出馬しなかった後も有力候補が現れず、南部の地方派閥も動員に消極的となった結果、今回の選挙では投票権を持つ地方党員が大幅に減少。郝氏が地方票を思うように伸ばせないリスクも指摘されている。

20250919-前台北市長郝龍斌(中)19日登記參選國民黨主席。(顏麟宇攝)
前台北市長の郝龍斌氏(中央)は19日、議長や立法委員と共に主席選への登録を行った。(写真/顏麟宇撮影)

鄭麗文氏が勝利すれば? CK楊氏「地下党主席」説が浮上

こうした状況の中で、議長や地方派閥の票が十分に動かなければ、鄭氏が有利に立つとの見方が党内に広がっている。国民党の重鎮は「いま投票すれば、鄭氏が郝氏を数千票差で制する可能性が高い」と語る。だが同時に、鄭氏の能力そのものではなく、彼女を後ろ盾とする人物への懸念が強まっている。その人物とは、企業家で「CK楊」の名で知られる異康公司会長の楊建綱氏である。

ある党幹部は「立法委員選挙なら『一人当選、二人でサービス』という形もあるが、党主席選は違う。主席一人を選ぶのに、影の主席がついてくるのは政党にとって大きなリスクだ」と語る。鄭氏が党主席となれば、楊氏が党内で実質的に主席並みの影響力を持つのではないかという問いに対し、「答えはほぼ間違いなくそうだ」と断言する声もある。

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