自民党の茂木敏充前幹事長(衆議院議員、前外務大臣)は9月18日、日本外国特派員協会(FCCJ)で記者会見を開き、10月4日に告示される総裁選への立候補を正式に表明した。外務大臣や経済産業大臣などを歴任してきた茂木氏は「自民党は創立以来最大の危機に直面している。企業に例えれば倒産寸前の状況だ。だからこそ自ら全責任を背負い、逆境を突破する」と強調した。

3つの重点政策を提示
茂木氏は「今やるべきことは三つある」として、①物価高と経済成長への確かな対策、②自民党の刷新した姿を国民に示すこと、③分断が進む国際社会で日本の存在感を高め、自由で開かれた国際秩序を守ること、を掲げた。そのうえで「私が総裁になれば、古い常識を打ち破り、適材適所の人材登用で結果を出すベストチームを作る」と述べ、若手の積極登用や派閥に依存しない人事改革を打ち出した。
経済・地方振興への取り組み
経済政策では「2年以内に物価上昇を上回る賃上げを定着させる」とし、各自治体が自由に活用できる数兆円規模の「生活支援特別地方交付金」を創設する構想を示した。また、2200兆円の個人金融資産や600兆円の企業内部留保を「貯蓄から投資へ」誘導する税制改革を進め、「投資を起点とした経済の好循環を早期に実現する」と訴えた。
さらに、東京一極集中の是正について「AI、半導体、グリーン事業など成長産業を地方に集積し、大学や研究機関と連携して地域経済を強化する」と述べ、地方振興と賃金格差是正の方針を明確にした。
雇用・治安対策も強調
人材活用策としてはハローワークの抜本改革を掲げ、「求人と求職を効果的にマッチングし、一人一人がやりがいを持ち、高収入を得られる働き方を実現する」と説明。さらに「違法外国人ゼロを目指し、ルールを守らない外国人には厳格に対応する」と述べ、治安対策への姿勢も示した。
外交・安全保障の方針
外交・安全保障については「経済で失敗すれば政権が倒れ、外交で失敗すれば国が傾く」と述べ、「包容力と力強さを兼ね備えた外交が必要だ」と強調した。日米同盟を基軸に国際秩序を守るとともに、防衛費をGDP比2%まで引き上げ、宇宙・サイバー領域も含めた抑止力強化を訴えた。「日本が自信と誇りを持ち、世界から信頼される存在感の高い国をつくりたい」と締めくくった。
政治資金問題や若者支援に回答
会見後の質疑応答では、政治資金問題や選挙での敗北に関する厳しい質問も相次いだ。日本経済新聞の記者は「都議選を含め3連敗した責任をどう考えるのか。政治資金をめぐる不透明な流れも指摘されている。総裁になった場合に派閥が復活するのではないか」と問いただした。茂木氏は「私自身も党の中枢で長く活動してきた責任を重く受け止めている」としたうえで、「派閥を解消したのは国民の信頼を失わないためだ。二度と復活することはない。政治改革に終わりはない」と強調した。
また、若者や氷河期世代の支援について問われると「20代、30代の支持が自民党から離れつつある。結婚や子育てをためらう最大の理由は経済だ」と指摘。「ハローワーク改革でスキル習得や労働移動を支援し、やりがいある仕事と収入増を実現する。保育士や看護師の給与も物価に連動させて引き上げ、現場の待遇改善を進める」と述べた。
外交経験と連立の可能性
外国記者からは、トランプ大統領との交渉術について質問が出た。茂木氏は「国益を害することは絶対に譲らないが、それ以外では最大限柔軟に対応することが重要だ」と述べ、日米通商交渉での経験を振り返った。そのうえで「米国が内向きになりがちな今こそ、自由で開かれた国際秩序の意義を理解させる努力が必要だ」と語った。
また、連立の可能性についてドイツの記者から問われると、茂木氏は「外交・安全保障、エネルギー政策、憲法など基本政策で一致できる政党と協力する。国民民主党や日本維新の会が候補になり得る」と述べ、少数与党状態を脱して安定政権を築く意欲を示した。
「次世代に希望を」
茂木氏は最後に「次の世代に確かなバトンを渡し、子どもたちが未来に希望を持てる国をつくる。そのために全てを捧げる」と力を込め、記者会見を締めくくった。
編集:梅木奈実 (関連記事: 自民党総裁選2025告示 小泉進次郎・高市早苗ら「五虎大将軍」が出馬、10月4日に次期首相決定へ | 関連記事をもっと読む )
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