舞台裏》米国が突然「台湾地位未定論」を表明──林佳龍外交部長が密かに文書削除、賴清徳総統と会談も

2025-09-22 20:15
米国が突然「台湾地位未定論」を表明する前に、外交部長林佳龍(左)氏はすでに賴清徳(右)総統に報告し、この件に関する論述を示していた。(写真/顏麟宇撮影)
米国が突然「台湾地位未定論」を表明する前に、外交部長林佳龍(左)氏はすでに賴清徳(右)総統に報告し、この件に関する論述を示していた。(写真/顏麟宇撮影)
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米国のドナルド・トランプ大統領が中国の習近平国家主席と電話会談を行う1週間前の9月12日、米国在台協会(AIT)と米国務省が相次いで「第二次世界大戦の関連文書はいずれも台湾の最終的な政治地位を決定していない」と初めて明言した。この発言は台湾内で大きな波紋を呼び、さらに民進党の徐国勇秘書長が「台湾には光復節(日本の敗戦後の返還を祝う日)は存在しない」と発言したことで、政界全体に論争が広がった。なぜ米国はこのタイミングで「台湾の地位未定論」を持ち出したのか。

9月12日夜、国内のネットメディアが最初に報じたのは、AIT報道官のインタビューだった。報道官は、中国が《カイロ宣言》《ポツダム宣言》《サンフランシスコ平和条約》など二戦期の文書を恣意的に解釈し、台湾への圧力の根拠にしているが「それは誤りであり、これらの文書は台湾の最終的な地位を決定していない」と明言。その後、駐美記者が米国務省に照会したところ「AITの伝えた内容が正確だ」との返答を得た。だが外部の注目を浴びなかったのは、米国が「明言」する前に、台湾外交部が密かに関連文書を公式サイトから削除していた事実である。

米国在台協会(AIT)。(コー・チェンフェイ撮影)
米国在台協会(AIT)が示した「台湾地位未定論」は、台湾社会で大きな議論を呼んだ。(写真/柯承惠撮影)

馬英九政権期の「台湾地位」文書 林佳龍氏就任後に撤回

馬英九政権下の2014年、外交部は「台湾の国際法上の地位」という文書を公式サイトに掲載。この文書は《カイロ宣言》《ポツダム宣言》《日本降伏文書》を根拠に「台湾は中華民国に返還された」と明記していた。蔡英文政権下の2019年には「歴史資料」として移設されたが、外交部の公式立場としては維持されてきた。

賴清徳政権となった2025年5月、外交部は習近平氏がロシアメディアに寄稿し「二戦文書が中国の台湾主権を確認した」と主張したことに反論する声明を発表。この声明でも従来同様、《カイロ宣言》を基礎に台湾主権は中華民国に帰属するとの立場を強調していた。

ところが、AIT・国務省が「台湾地位未定」を公式に述べる2か月前の7月、外交部長の林佳龍氏は国際法学会フォーラムの演説で「戦後の国際法上の効力を持つ文書は《サンフランシスコ平和条約》であり、《カイロ宣言》《ポツダム宣言》といった政治的声明に取って代わった」と発言。さらにその直前の5月、外交部は公式サイトから「台湾の国際法地位」文書と、同月に発表した声明までも削除していた。

2016年5月20日、新任大統領蔡英文宣誓就任後、前任大統領馬英九と一緒に大統領府外で市民に挨拶(AP)
馬英九(左)政権時代、外交部は公式サイトに「台湾の国際法上の地位」を掲載していたが、蔡英文(右)政権下で「歴史専門区」に移された。(写真/AP)

リコールの混乱の裏で進められた「台湾地位」見直し

外交部長の林佳龍氏が公に語ることは、すなわち外交部の公式立場を意味する。だが注目されるのは、5月8日時点で《カイロ宣言》《ポツダム宣言》を「国際法上の効力を持つ文書」と明言していた外交部が、わずか2か月も経たぬうちに論調を一変させたことだ。その後は両宣言を「政治的声明」にとどまると位置付け、《サンフランシスコ平和条約》こそが唯一、台湾に関する国際法上の効力を有する文書だと主張し始めたのである。

実はその時期、台湾社会はリコール運動によって各地で混乱していた。台北市の外交部本庁舎では、林氏が4〜5月にかけて複数回にわたり専門家や学者を招き、非公開の会合を重ねていた。出席者には学界時代の知人も含まれ、議題はまさに「台湾の国際法上の地位」をどう表現するか。最終的に林氏は、従来の文書や声明を公式サイトから撤回する方針を決断した。

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