シンガポールのウォン首相、台海情勢に警鐘 「米中は台湾独立を抑止」「衝突ならアジアに波及」

2025-09-24 17:27
シンガポールのローレンス・ウォン首相(写真/X公式:@LawrenceWongより)
シンガポールのローレンス・ウォン首相(写真/X公式:@LawrenceWongより)
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シンガポールのローレンス・ウォン首相は、19日付の米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』のロングインタビューで、世界はより対立的で予測が難しい多極化の時代に入っていると強調した。台湾問題は地域衝突の主要な引火点だとして、米中をはじめ各国が台湾独立を阻止すべきだと呼びかけた。「台湾独立は中国にとって最も越えてはならない一線だ」との見方を示した。グローバル化の恩恵を受けてきたシンガポールは、米中の角逐が続く中で自国の生存戦略を模索している。

シンガポール中心部のマリーナ・バラージ(Marina Barrage)から外洋を望むと、整然と入出港を待つ多数の船舶が目に入る。ここは世界有数のトランシップ拠点で、年間数千万個のコンテナを扱う。この光景は、同国が長年にわたりグローバル化の最大の受益者であったことを象徴する。しかし、その明快だった繁栄の図式は、近年高まる不確実性と衝突リスクの影に覆われつつある。国際貿易と安全保障の枠組み――同国の急成長を支えてきた基盤――が揺らいでいるとの危機感が指導部にはある。

「私たちは変数の多い時代に入った」。ウォン首相は『ウォール・ストリート・ジャーナル』の取材に慎重な口調で語った。米国が自らの世界的役割を再考する中で、とりわけトランプ政権期の関税強化や同盟国に対する自助努力の要求を背景に、国際秩序は大きな転換点を迎えていると指摘した。

2024年にリー・シェンロン氏の後任として就任したウォン氏は、「今後数年、世界はより多極化し、対立が先鋭化し、協調は難しくなる」との見通しを示した。新たな国際秩序への移行過程は「極めて混乱し、非常に困難になる恐れがある」とも警告した。

歴史の警鐘:地政学の大変動は大規模衝突に発展しかねない

ウォン氏は、過去に例を見ない規模の地政学的変化は「不幸にも、最終的に世界的な武力衝突で決着してきたケースが多い」と述べ、各国には「歴史の再演を防ぐ集団的責任」があると強調した。「世界各地に引火点が存在し、暴力や衝突は増加している」とし、米国の相対的な影響力が低下する局面では「一部の国が国際法を逸脱しても、十分な代償を支払わないまま行動をエスカレートさせる可能性がある」との懸念を示した。 (関連記事: 第21回大阪アジアン映画祭 クロージング作品はシンガポール映画『好い子』 世界初上映に大きな拍手 関連記事をもっと読む

人口約600万人、面積はニューヨーク市と同程度の小国であるシンガポールにとって、こうした環境は潜在的に危うい。独立後に生まれた世代として初の首相であるウォン氏の問題意識は、新世代のリーダーが抱く将来への不安を代弁するものでもある。

ニュース補足:ローレンス・ウォン(Lawrence Wong)

52歳。シンガポール第4代首相で、「第4世代(4G)リーダーシップ」の中核を担う。1972年生まれで、1965年の独立後に誕生した世代交代を象徴する存在。米国で教育を受け、ウィスコンシン大学に学んだ後、ミシガン大学とハーバード大学で修士号を取得。米国の政治・社会への理解が深い。

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