トップ ニュース 論評:台北上海都市フォーラムが停滞――民進党はなぜ焦りを見せるのか
論評:台北上海都市フォーラムが停滞――民進党はなぜ焦りを見せるのか 2024年12月16日—台北市の蔣万安市長(右)と上海市の華源副市長(左)が出席した「2024台北・上海都市フォーラム」協力覚書の調印式。(写真/顏麟宇撮影)
台北と上海の「台北上海都市 フォーラム (台北上海双城論壇) 」を3日後に控え、台北市政府が突如、MOUの事情を理由に延期を発表した。理由については諸説あり、頼清徳政権と台北市政府が互いに責任をなすり合う展開となった。意外だったのは、民進党が神経を尖らせた点だ。この一件は、頼政権の対中政策の混乱を映し出す「鏡」でもある。片方では中国を「域外の敵対勢力」と位置づけ、「あらゆる交流は統一戦線工作だ」とする一方、もう片方ではフォーラムの頓挫による都市間交流の「中断」や完全な「デカップリング(断絶)」を懸念している。
すべて「中国の陰謀」なのか フォーラムが行き詰まった理由について、林奕華・台北市副市長は、双方が締結予定だった2本のMOU(河川岸整備と職業技能訓練)が焦点になったと説明した。海峡交流基金会(陸委会)は「驚きと遺憾」を示したが、反応が後手に回ったとの批判も出ている。頼政権の官僚や与党議員からは歓声ではなく、自制を促す声が目立った。
現時点で、行き詰まりの要因は三つ考えられる。第一に、頼清徳政権が対中交流の申請処理で「技術的遅延」を図っていることだ。積極的に後押しはせず、かといって正面から反対も示さない――民進党政権の常套的な“膝反射”である。ただし都市間交流の断絶は望まないため、そこに焦燥感もうかがえる。
民進党の頼清徳主席が「抗中保台」集会に参加。習近平氏を象徴するとされる「くまのプーさん」の人形を掲げ、対中姿勢をアピールした。(写真/謝佩芬氏のFacebook)
例えば、以前は「すべての交流は統一戦線」と強調していた沈伯洋・民進党立法委員は、今回はフォーラムの行き詰まりをむしろ懸念し、原因は「台湾側ではなく中国要因だ」と指摘した。型どおりで露出重視と受け取れる物言いだとの見方もある。何孟樺・台北市議は「蔣万安市長があれほど低姿勢なのは、中央の審査が理由ではなく、上海側に問題が生じたからだ」と“別解”を示し、論点はさらに錯綜した。
デカップリングか、再接続か――揺れる針路 第二に、蔣万安市長の「消極姿勢」も影響している。中国メディアの論調には、蔣氏への不満がにじむ。家柄を踏まえれば、対中交流を推進する“材料”は本来、十分にあるはずだ。だがコロナ禍以降、台北上海都市 フォーラムは不安定が続く。柯文哲氏には「両岸は一つの家族」という“合言葉”があったが、蔣氏は馬英九時代の「1992年コンセンサス」に立ち返っただけで、さらに踏み込んだ積極的な語りや実務が欠けるとの評価だ。 このためか、上海側は異例の低姿勢で、発言を控え静観している。蔣氏は対岸と「安全距離」を保とうとしているフシがあり、例えば昨年、上海側が俳優の胡歌氏の来台を特別に手配した際、蔣氏はホテルで非公開に会っただけで公式の宴席は設けなかった。これに上海側が不満を抱いたともされ、ここ数年は「開幕延期」の茶番が繰り返されている。
9月の「トランプ—習近平」電話会談に続き、10月末の韓国開催APECでは米中首脳会談が見込まれる。いまは台北上海都市フォーラム開催に適した局面だった。(写真/AP)
国家安全当局の「こじつけ」 一部の国家安全当局者が「蔣萬安市長が(中国人民政治協商会議の)王滬寧主席との会見を望まなかった」との話を流したという。だが、この説は荒唐無稽で論じるに値しない。双城市フォーラムで台北市長の相手役はあくまで上海市長であり、この15年、例外はない。上海市党委書記(現職は陳吉寧氏)でさえ直接関与しないのが慣例で、「正国級」の王滬寧氏との会見を段取りする筋合いはそもそもない。
第三の要因は、米中関係の比重が両岸関係を上回っている点だ。9月の「トランプ・習近平」電話会談に続き、10月末のAPEC首脳会議(韓国開催)では米中首脳会談が見込まれる。タイミングとしては、まさに台北上海都市 フォーラム実施で注目を集めやすい局面だった。年末へ先送りすれば機運を逸し、絶好のタイミングを逃しかねない。 加えて、フォーラムの「延期」は政治的なシグナルでもある。北京は、頼清徳氏への期待はすでに乏しいと見ており、、総統自らが「台海の平穏は安倍晋三元首相の功績」とする一方で、靖国参拝や改憲志向といった右派路線への言及を避けた点も中国側の不信を強めたとの見方がある。都市レベルの双城市フォーラムすら円滑に開けないとなれば、中国側の強硬派は「台湾との交流に意味は乏しい。幻想を捨て、戦いに備えるべきだ」との判断を一層固めかねない。これは両岸関係や台海の安定にとって好ましい兆しではない。
海基会の洪奇昌・前董事長は先ごろ北京の「京台科技フォーラム」に参加。年内3度の北京訪問で、静かに両岸関係に力を注いでいる。(写真/許詠晴撮影)
両岸交流は止めない 両岸交流には、 頭を抱えてでも前に進む「和平の担い手」が必要だ。海基会の洪奇昌・前董事長はこのほど北京の「京台科技フォーラム」に出席し、今年だけで3度北京を訪れて静かに汗をかいている。ネット著名人の「館長」陳之漢が上海・深圳を訪れ、馬英九元総統が福建の海峡フォーラムに出席したことも、いずれも交流を後押しする動きだ。
大規模リコールでの惨敗を経て、「交流=統一戦線」とみなしてきた民進党の国会議員らも、唯一残る公式の交流ルートを貴重なものとして捉え直し、これを容易に途絶させまいとする姿勢を間接的に示しつつある。
結局のところ「片手では拍手は鳴らない」。台北上海都市 フォーラムをめぐっては、青(国民党)・緑(民進党)・赤(中国)に、米国トランプ政権の出方も絡む。誰が“足かせ”なのかは一方に限られない。数少ない交流の場である台北上海都市 フォーラムは、両岸の「最後の平和の土台」であり「最後の浮き木」でもある。その板を、誰も引き抜くべきではない。
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