論評:台北上海都市フォーラムが停滞――民進党はなぜ焦りを見せるのか

2025-09-24 17:57
2024年12月16日—台北市の蔣万安市長(右)と上海市の華源副市長(左)が出席した「2024台北・上海都市フォーラム」協力覚書の調印式。(写真/顏麟宇撮影)
2024年12月16日—台北市の蔣万安市長(右)と上海市の華源副市長(左)が出席した「2024台北・上海都市フォーラム」協力覚書の調印式。(写真/顏麟宇撮影)
目次

北と上海の「台北上海都市フォーラム(台北上海双城論壇)」を3日後に控え、台北市政府が突如、MOUの事情を理由に延期を発表した。理由については諸説あり、頼清徳政権と台北市政府が互いに責任をなすり合う展開となった。意外だったのは、民進党が神経を尖らせた点だ。この一件は、頼政権の対中政策の混乱を映し出す「鏡」でもある。片方では中国を「域外の敵対勢力」と位置づけ、「あらゆる交流は統一戦線工作だ」とする一方、もう片方ではフォーラムの頓挫による都市間交流の「中断」や完全な「デカップリング(断絶)」を懸念している。

すべて「中国の陰謀」なのか

フォーラムが行き詰まった理由について、林奕華・台北市副市長は、双方が締結予定だった2本のMOU(河川岸整備と職業技能訓練)が焦点になったと説明した。海峡交流基金会(陸委会)は「驚きと遺憾」を示したが、反応が後手に回ったとの批判も出ている。頼政権の官僚や与党議員からは歓声ではなく、自制を促す声が目立った。

現時点で、行き詰まりの要因は三つ考えられる。第一に、頼清徳政権が対中交流の申請処理で「技術的遅延」を図っていることだ。積極的に後押しはせず、かといって正面から反対も示さない――民進党政権の常套的な“膝反射”である。ただし都市間交流の断絶は望まないため、そこに焦燥感もうかがえる。

民進黨主席賴清德參加「抗中保台」活動,還有夾取象徵習近平的維尼小熊,在抗中保台的火爐上燒烤。(取自謝佩芬臉書)
民進党の頼清徳主席が「抗中保台」集会に参加。習近平氏を象徴するとされる「くまのプーさん」の人形を掲げ、対中姿勢をアピールした。(写真/謝佩芬氏のFacebook)

例えば、以前は「すべての交流は統一戦線」と強調していた沈伯洋・民進党立法委員は、今回はフォーラムの行き詰まりをむしろ懸念し、原因は「台湾側ではなく中国要因だ」と指摘した。型どおりで露出重視と受け取れる物言いだとの見方もある。何孟樺・台北市議は「蔣万安市長があれほど低姿勢なのは、中央の審査が理由ではなく、上海側に問題が生じたからだ」と“別解”を示し、論点はさらに錯綜した。

デカップリングか、再接続か――揺れる針路

奇妙なのは、頼政権が打ち出した「17項目」(いわゆる「頼17条」)で中国を「域外の敵対勢力」とし、軍事法廷の復活を含む対統一戦線対策を掲げている点だ。フォーラムが開けないのは、むしろその論理に合致するはずである。それにもかかわらず、矛先が台北市政府へ向けられているのはなぜか。背景には、最近の報道で「総統の対中対応に対する不満が2割増えた」とされる世論動向があり、民進党内に危機感が広がっている可能性がある。 (関連記事: 独占インタビュー》李大壮氏「台湾独立は統一の始まり」 北京は戦争望まず、頼清徳への扉も閉ざしていない 関連記事をもっと読む

第二に、蔣万安市長の「消極姿勢」も影響している。中国メディアの論調には、蔣氏への不満がにじむ。家柄を踏まえれば、対中交流を推進する“材料”は本来、十分にあるはずだ。だがコロナ禍以降、台北上海都市フォーラムは不安定が続く。柯文哲氏には「両岸は一つの家族」という“合言葉”があったが、蔣氏は馬英九時代の「1992年コンセンサス」に立ち返っただけで、さらに踏み込んだ積極的な語りや実務が欠けるとの評価だ。

このためか、上海側は異例の低姿勢で、発言を控え静観している。蔣氏は対岸と「安全距離」を保とうとしているフシがあり、例えば昨年、上海側が俳優の胡歌氏の来台を特別に手配した際、蔣氏はホテルで非公開に会っただけで公式の宴席は設けなかった。これに上海側が不満を抱いたともされ、ここ数年は「開幕延期」の茶番が繰り返されている。

2019年6月29日,日本大阪二十國集團(G20)領導人峰會,「大阪川習会」登場,美國總統川普與中國國家主席習近平舉行雙邊會談(AP)
9月の「トランプ—習近平」電話会談に続き、10月末の韓国開催APECでは米中首脳会談が見込まれる。いまは台北上海都市フォーラム開催に適した局面だった。(写真/AP)
最新ニュース
東京ゲームショウ2025  『Conqueror’s Blade』最新シーズン&異色リズムゲーム『MOMO Crash』が同時リリース
「攻殻機動隊展 Ghost and the Shell」2026年1月開催へ 600点超の原画・未公開資料を虎ノ門ヒルズで初公開
ASAGIRI JAM’25開催決定!富士山麓で楽しむ音楽とキャンプ、25周年記念ラインナップ発表
自民党総裁選公開討論会 5候補が経済・外交・安全保障で激論、党再生への道を示す
防衛省有識者会議が抜本強化を提言 無人アセット導入、VLS潜水艦、太平洋側防衛の拡充を提示
日本初「炎上展」が池袋で10月11日開幕へ SNS時代の“燃える体験”をリアルに再現
人物》潜水艦・電子戦・無人艇――台湾の水上・水中戦力を束ねる 「神龍、姿見せて尾を見せず」の孫春青氏
シンガポールのウォン首相、台海情勢に警鐘 「米中は台湾独立を抑止」「衝突ならアジアに波及」
9月25日限定!スカイツリーSDGs特別ライトアップ 17色の光で夜空を彩る
台湾・花蓮で再びせき止め湖越流の恐れ 残水3100万トン、決壊リスク高まる専門家警告
台湾・花蓮の洪水災害 中央と地方が責任の押し付け合い 行政院長と国民党議員が救助現場で口論勃発
台風18号影響の花蓮洪水 せき止め湖に再び越流の恐れ 台湾鉄道一時運休も再開
WBC2026東京ドーム、日本戦チケットは最高176万円 全4試合パックも販売開始へ
トランプ大統領、国連で「ウクライナは全領土を奪還できる」と断言 プーチンを「紙の虎」と痛烈批判
台風18号で台湾・花蓮に壊滅的洪水 9100万トン泥流が町を襲い、橋流失・死者14人・数百人行方不明 「小林村の再来」との声
台湾・花蓮 台風18号でせき止め湖決壊 洪水被害拡大、死者14人・100人超不明
「静岡マラソン2026」が来春開催、10月2日からエントリー開始 家康公ゆかりの名所と富士山を望む絶景コースを走る
日本ゲーム大賞2025発表 年間大賞は『メタファー:リファンタジオ』、経産大臣賞は「Nintendo Switch 2」
利下げが引き金?米株は一時20%上昇後、1929年型大暴落の恐れ
東京国際映画祭2025、クロージングはクロエ・ジャオ監督『ハムネット』に決定 『メタファー』など話題作が集結
ドジャース新守護神タナー・スコット 波乱の2025年シーズン、大谷の快投も守れず「背信守護神」の烙印
台湾、パレスチナ建国承認地域に挙げられ外交部が反発
台風18号で台湾・花蓮に大規模泥流災害 せき止め湖決壊で9100万トン流出、光復市街水没し5084人避難「津波のようだ」の声
自民党総裁選、石破首相「政策を引き継ぐ人に」 総裁選候補者5人が連立戦略を示す
目黒蓮、新CM「ネピア営業目黒くん」放映 親孝行の日に家族愛を描く感動ストーリー
ノルウェー産プレミアムサバ「サバヌーヴォー」5周年 JAL国際線ビジネスクラス新メニューに登場!
台湾公共テレビとNHKが共同制作 阿里山森林鉄道を描く8Kドキュメンタリーが東京で特別上映
ジェンスン・フアンCEOの次の一手:1000億ドルでOpenAIに出資 原発10基分のAI算力帝国を構築へ
ドジャースの大黒柱カーショウ、2025年限りで現役引退 通算222勝・サイ・ヤング賞3度の名左腕に幕
舞台裏》台湾・国民党が鄭麗文氏の当選を警戒する理由 「地下党主席」と目されるCK楊の存在
巨人、イースタン・リーグ最後の王者に輝く 桑田二軍監督へ優勝ペナント授与
李忠謙コラム:トランプ・習近平会談前に 米学者が警告「中国を過大評価するな、台湾を過小評価するな」
美中対立の中で台湾はいかに立つか 龍應台氏「平和演習」を提唱:生死にかかわる議論は避けられない
世界初の『IBARAKI SAKAI Urban Sports Fes.』 BMXやブレイキンの国際大会が茨城・境町で11月開催
Bリーグ10周年シーズン開幕へ 渡邊雄大が完全復活宣言、富永啓生は3P成功率50%挑戦
花俊雄の視点》誰が「台湾地位未定論」を煽っているのか
独占インタビュー》李大壮氏「台湾独立は統一の始まり」 北京は戦争望まず、頼清徳への扉も閉ざしていない
天気予報》台風20号(ブアローイ)、最速で今夜発生か 専門家「今後48時間がカギ」、最新進路予測と日本への影響は?
台湾・政治大学に「安倍晋三研究センター」設立 頼清徳総統「台海和平の最大の功臣」と称賛、台日協力の新たなマイルストーンに
【東京六大学野球秋季リーグ】明大エース毛利が8回1安打12K零封 立大は法大に逆転勝利で白星発進
【東京六大学野球秋季リーグ】法大が立大を4―1で撃破 片山悠真が父に続く神宮アーチ、浜岡陸の代打打も光る
【東京六大学野球秋季リーグ】明大、15安打10得点で東大に快勝 久野悠斗が700日ぶり復帰登板 大室も無失点好投
ChatGPT利用者数、インドが世界2位に躍進 OpenAIがニューデリー進出へ
舞台裏》米国が突然「台湾地位未定論」を表明──林佳龍外交部長が密かに文書削除、賴清徳総統と会談も
自民党総裁選が告示 高市・小泉が存在感、5候補が立会演説会で決意表明
ファン殺到、グッズ完売続出 Perfume、東京ドーム20周年ライブで年内活動休止を発表「新しいPerfume」へ
ノルウェーシーフードフェス2025閉幕 ノルウェー大使館参事官「台湾市場に深い感謝」、今後の展望も語る
世界陸上東京2025:競歩金メダリスト・ボンフィム選手、レース中に紛失した結婚指輪、奇跡の発見 「日本を信じていた」感動の結末
カーク追悼式》「私は犯人を許す、憎しみへの答えは愛だ」未亡人が涙の訴え トランプ氏「自由の殉教者」と称賛
H-1Bビザ申請料が一夜で10万ドルに トランプ氏の急展開に企業と労働者が困惑