論評:台風18号で花蓮にせき止め湖決壊の悲劇 「回避困難」専門家の警告と政治対立が浮き彫りに

2025-09-25 13:16
行政院長の卓榮泰氏(左から2人目)と国民党総召の傅崐萁氏(右から3人目)が23日、中央災害応変センターを訪れ、台風18号(ラガサ)による馬太鞍渓せき止め湖の越流状況を視察した。(写真/顏麟宇撮影)
行政院長の卓榮泰氏(左から2人目)と国民党総召の傅崐萁氏(右から3人目)が23日、中央災害応変センターを訪れ、台風18号(ラガサ)による馬太鞍渓せき止め湖の越流状況を視察した。(写真/顏麟宇撮影)
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非常に強い台風18号(ラガサ)による豪雨の影響で、花蓮県の馬太鞍渓に形成されたせき止め湖が「越流」を起こし、甚大な被害と犠牲をもたらした。この災害は人々の胸を痛める一方で、花蓮選出の立法委員・傅崐萁氏と行政院長・卓栄泰氏が、現場調査の最中に激しく口論し、ついには卓院長が席を立つという異常な場面もあった。天災の後には必ず人災が伴うといわれるが、今回の馬太鞍渓せき止め湖の被害は、まさにその典型例といえる。

傅崐萁氏が追及をやめず、卓院長は席を立つ──誰も得をせず

傅崐萁は卓院長を執拗に追及し、「正論」を主張した。事の発端は、7月の時点で野党議員が地方行政に警告していたにもかかわらず、当時の農業部長・陳駿季が「直ちに危険はない」と繰り返し答弁したことにある。問題は地方が中央の説明を信じたか否かではなく、「地方は必死に救援活動を行っているのに、与党支持者やネット工作部隊が救援に当たる地方政府を攻撃した」という点にある。実際、民進党は災害発生直後に「花蓮県長・徐臻蔚が海外に出ていて現場にいない」と批判した。卓院長が傅崐萁を指揮所に呼んだのも、徐が現場に不在だったためだ。しかし徐は22日に帰国し、23日朝にはすでに災害対策本部に入り、光復郷で救援活動を行っていた。

こうした光景は台湾で災害が発生するたびに繰り返される。台風4号(ダナス)の際、屏東県長・周春米は欧州に滞在し、5日後にようやく帰国して批判を浴びた。一方で、台風の影響で訪米直後に帰国した台中市長・盧秀燕は「パフォーマンスだ」と揶揄された。二重基準か否かはさておき、首長は住民から「父母官」とみなされている以上、災害時に不在なら批判は免れない。市民からであれ、ネット世論からであれ、叱責は受け入れるしかないのだ。

問題は、与野党の対立が激化する中で、傅崐萁と徐臻蔚夫妻が「系統的な攻撃」の標的となってきたことである。傅が怒りを爆発させるのも理解できるが、Facebookでの攻撃を行ったのは卓栄泰ではなく、卓院長を執拗に攻めても正義は得られない。むしろ、災害現場を立法院のように政治論争の場にしてしまったことは不適切だった。

卓院長も得をせず

卓院長も同様に得をしなかった。中央政府の要人が地方を視察しながら席を立つのは、どのような理由であれ不適切である。たとえ相手が野党議員や首長であっても、不満を露わにすべきではなかった。被災者は政治的立場に関係なく存在し、災害は国民党も民進党も関係なく襲う。 (関連記事: 台湾・花蓮で再びせき止め湖越流の恐れ 残水3100万トン、決壊リスク高まる専門家警告 関連記事をもっと読む

さらに重要なのは、7月の台風6号(ウィパー)後、野党・国民党、民衆党両党の議員が繰り返し行政院に対して懸念を伝えていた点である。彼らは経済部、農業部、公程会、花蓮県政府に対して減災や監測、避難や工事対策について協議するよう求め、さらには関連経費を台風4号(ダナス)や7月28日の豪雨災害後の特別予算に組み込むよう決議まで行っていた。

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