ウクライナ支援を再始動 トランプ氏、ロシアに最大500%関税も視野  「プーチンの発言はでたらめ」と非難

2025-07-10 15:30
2023年4月23日、アーティストのカヤ・マーがダウニング街10番地で風刺画を手に抗議を行った。その作品には、アメリカのトランプ大統領とロシアのプーチン大統領が描かれ、ウクライナのゼレンスキー大統領が板挟みになっている様子が表現されていた。(AP通信)
目次

アメリカのトランプ大統領は8日、ウクライナへの新たな防御用武器の輸送を承認したことを正式に表明し、ロシアのプーチン大統領に対する強い不満を公然と示した。「意味のない発言」「ばかげた話だ」と厳しく非難し、かつての融和的な姿勢からの転換が鮮明となった。ホワイトハウスと国防総省は提供される兵器の具体的内容を明らかにしていないが、『ウォール・ストリート・ジャーナル』は、パトリオットミサイル防衛システムが含まれていると報じている。さらにトランプ大統領は、ロシアおよびその同盟国に対する「深刻な制裁」を盛り込んだ法案を支持する方向で検討していると述べ、ロシア政策における方針転換の可能性が高まっている。

トランプ大統領は7日、ウクライナに対する追加の防衛用武器支援を行う意向を示し、8日にはその決定を正式に確認した。「ウクライナにいくつかの防御用武器を輸送中である。すでに承認した」と述べ、ロシアの侵攻からウクライナを守るための措置であることを強調した。具体的な兵器の内容については言及を避けたが、『ウォール・ストリート・ジャーナル』によれば、ホワイトハウスは「パトリオット」防空ミサイルシステムの提供を検討しており、これはトランプ政権の方針における大きな転換とされる。

同氏はホワイトハウスで閣僚らと会談した際、クレムリンを名指しで批判した。「プーチンに非常に不満だ」と述べ、「ロシアとウクライナの兵士が戦場で命を落としているなかで、プーチンの発言はでたらめだ。彼はいつも友好的に振る舞うが、それが無意味であると証明された」と語った。選挙期間中に「一日で戦争を終わらせる」との公約を掲げていた過去の姿勢とは対照的で、ロイターはトランプ氏の失望がより強硬な行動へと転じつつあると報じている。

ウクライナの戦況が悪化、トランプ制裁の矢は放たれるのか?

ロシアによる空爆と地上攻撃が続くなか、ウクライナのゼレンスキー大統領は8日、米国との協力強化を指示した。「重要な軍事物資の輸送を確保し、特に防空システムを確保した」と述べ、「これらは人命を守り都市を保護するために不可欠であり、迅速な実行を期待している」と強調した。

ニュースの補足:「パトリオット」が重要視される理由

パトリオットミサイル防衛システムは、米レイセオン社が開発した世界でも最先端かつ需要の高い防空兵器のひとつとされる。システムは、フェイズドアレイレーダー、指揮統制ステーション、2〜3基のミサイル発射装置、迎撃ミサイルから構成され、弾道ミサイルや巡航ミサイル、敵機を迎撃する能力を持つ。都市やインフラを防衛するうえで極めて重要な装備と位置づけられている。

ロシアによる断続的なミサイルや無人機攻撃にさらされるウクライナでは、アメリカ、ドイツ、欧州各国から提供された少数のパトリオットシステムが運用されている。米政府関係者によると、米国が3セット、ドイツが3セット、EU加盟国が1セットを供与したとされるが、整備や保守の必要性から、全システムが常時稼働しているわけではない。

先月、米軍はカタールのアル・ウデイド空軍基地でこのシステムを使い、イランによるミサイル攻撃を迎撃した。アメリカ陸軍は、必要とあればウクライナへの追加配備も可能とする一方で、迎撃ミサイルの在庫不足が大きな課題となっている。ウクライナと中東での武力衝突が続く中、米国とその同盟国は補充体制の強化を急いでいる。