台湾国防部によると、7月9日から18日まで、自国軍が過去最長となる10日間の「漢光41号」実動演習を実施する。発表前日の8日午前、中国軍が台湾周辺で空海合同の「戦備警巡」を開始。午後には中国国防部が会見を開き、台風通過後すぐの展開は台湾側の演習を意識した動きだと明かした。
7月3日には、中国海軍の空母「山東」打撃群が香港に寄港。米海軍の「ワシントン」空母打撃群も同日にフィリピンのマニラを訪れ、7日には両軍とも南シナ海へと向かった。さらに米空軍は10日から「部隊重返太平洋」演習、13日からは「護身軍刀」演習をコーラル海やインド洋方面で展開予定となっており、台湾周辺の軍事情勢は一層緊張感を増している。
台風「ダナス」は7日午前、桃園・新竹間の海域を通過。その翌日、台湾国防部は「8日午前7時30分以降、殲-16や空警-500など中国軍機20機が接近し、うち13機が海峡中線を越えて北部・中部・西南部の空域に進出、中国艦艇と連携して戦備巡航を行っている」と発表。これは、筆者が以前に述べた「台風後の攻勢が有利」との見立てを裏付ける動きとなった。
台風が台湾西側に接近していた6日、中国民用航空局は突然、M503航路のW121継続線の運用を再開した。これに対し国台弁は「両岸の民衆にとって有益」との立場を示したが、一部の専門家は「台湾の航空管理に干渉し、中国軍機への警戒時間を削減する意図がある」と指摘する。
2022年8月、米ペロシ前下院議長の訪台後、中国は台湾海峡中線を事実上破棄しており、すでに中国機艦による越境は常態化している。今回の措置もその延長と見られる。
8日午後、中国国防部の蔣斌副局長が記者会見で台湾の「漢光41号」演習に言及。「グレーゾーン対応」「連合上陸阻止」「島内持久防御」などの訓練に米国製兵器が初投入される点を挙げた上で、民進党による演習は「欺瞞的なパフォーマンス」だと批判した。
また、賴清德副総統による「国家の団結十講」や国防予算増加への訴えについても、「台湾独立の幻想を煽り、民衆を“台独”の戦車に乗せようとしている」と非難。中国軍は「台独」を粉砕する能力と決意を持っていると強調した。
一連の動向から見て、中国軍が「漢光41号」演習を明確なターゲットとし、戦略的圧力をかけている構図が浮かび上がる。
7月9日10時時点の報道によると、台湾国防部は8日午前6時から9日午前6時までの間に、中国の軍用機31機と艦艇7隻が台湾周辺の海空域で活動していたと発表した。このうち24機の軍用機が台湾海峡の中間線を越え、北部・中部・西南部の空域に進出していた。
8日の午前6時25分から午後5時45分にかけては、主力および補助戦闘機、無人機を含む15機が、東引島南東から福建省東山島南東の台湾海峡西側空域で活動した。そのうち8機は、東引南東から金門南に至る中間線全域で「低強度」の妨害行為を実施したとされる。さらに別の編隊は、同日午前6時55分から午後8時40分まで台湾南西空域に展開しており、台湾の防空識別圏(ADIZ)端部を囲むような「釜の形」を描くように、西南空域から進出していた。
