露の要求をほぼ全面容認？米ロ極秘作成の28項目和平案にウクライナ不在、ゼレンスキー政権に深刻な打撃の可能性

ウクライナ戦争に終止符を打つため、各国は和平交渉の再開に向けた努力を進めている。複数のメディアが19日に伝えたところによれば、トランプ政権は最近、ロシア当局と密かに新たな停戦案を策定し、その中にはウクライナが長らく「絶対に受け入れられない」としてきた条件も含まれているという。この情報が表に出ると同時に、ロシア軍はウクライナ西部の都市テレノポリ（Ternopil）に空爆を加え、26人が死亡、その中には3人の子供も含まれている。

『ガーディアン』によると、この28項目からなる和平枠組みは、トランプ特使のスティーブ・ウィトコフ氏とクレムリン高官のキリル・ドミトリエフ氏によって共同起草されたもので、ウクライナの参加は一切なかったという。この内容は、モスクワの長年にわたる「最大化要求」を反映しており、ウクライナは戦争初期からこれらの要求を「降伏のようだ」と見なしてきた。

元ウクライナ大統領外交政策顧問のコスティアンティン・イェリシエイエフ氏は、「ウクライナの現状は決して良いものではない。これは国内だけでなく、米国をはじめとする同盟国、そして侵略者からも見られていることだ」と述べた。一部のウクライナの評論家は、ウクライナが高官の腐敗スキャンダルに陥り、同盟国の支援意欲が損なわれる中で、ロシアがウクライナに譲歩を迫ろうとしていると指摘している。同時に、戦場ではウクライナ軍が兵力不足でロシア軍の圧力を受け続けている。

提案の内容：ロシアのドンバス支配、前線の凍結、ウクライナ軍の制限

米誌『フォーリン・ポリシー』によると、この28項目から成るウクライナ和平案は、米国が主導したガザ停戦協議をモデルにしたもので、ウクライナに平和を取り戻し、安全保障を提供し、欧州の安定に寄与するとともに、米国がキーウやモスクワとの関係を改善することを目的としている。

提案によれば、ロシアはウクライナ東部ドンバス地域の実効支配を得ることになる。ウクライナ側が現在も同地域の約14.5％を保持しているものの、ウクライナ軍が撤収した区域は「非武装地帯」とされ、ロシア軍の進駐は禁止される。一方、ヘルソン州とザポリージャ州については、現行の前線を基本に線引きが固定される見通しで、ロシアが一部地域を返還する可能性もあるが、具体的な内容は今後の協議に委ねられる。ウクライナはロシアの領有権主張を認める必要はないが、米国を含む関係国は「クリミアとドンバスはロシア領」と正式に認める形になるという。

その見返りとして、米国はウクライナおよび欧州に対する安全保障措置を提供し、ロシアによる再侵攻を防ぐ方針とされる。また、ウクライナは一部の兵器を放棄し、軍の規模を半減させることを迫られる可能性がある。EUやNATO加盟の見通しが開かれるかどうかは明確でなく、これはクレムリンが強く反対してきた点でもある。

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​ニューヨーク・タイムズ紙は、この提案全体がロシアが2022年の交渉時に示した要求に極めて近いと指摘する。当時、ロシア軍は開戦初期に広い範囲を制圧したものの、その後約半分を失い、最近になって激しい攻防の末に一部を再び奪還した。今年秋以降、戦況は再びロシア側に傾きつつあり、東部でウクライナ軍が長く維持してきた拠点が脅かされている。ロシア軍は小規模部隊を用いてポクロフスク包囲を進めており、多くの分析は同市が近く陥落するとの見方を示している。

合意が成立すれば、ゼレンスキーに重大な打撃となり得る

ウクライナのゼレンスキー大統領は、領土割譲を含むいかなる案も受け入れられないと繰り返し強調してきた。さらに悪いことに、ゼレンスキー氏自身はいま国内の大規模な汚職疑惑の渦中にあり、政治的な立場は不安定さを増している。

同氏は18日、X（旧ツイッター）で「我々は交渉再開の準備を進めており、すでにパートナー国に提示する解決案をまとめている。戦争を一日でも早く終わらせることが、ウクライナにとって最も重要だ」と投稿した。

19日、ゼレンスキー大統領はトルコのアンカラでエルドアン大統領と会談し、戦争終結に向けた方策を協議した。本来であれば、トランプ氏の特使ウェイコフが同地でゼレンスキー氏と会う予定だったが、訪問は延期に。代わって、米陸軍のドリスコル陸軍長官率いる軍事代表団が同日キーウに到着した。

これはトランプ政権2期目で、ペンタゴン要人によるウクライナ訪問としては最も高いレベルとなり、新たな合意を早期に進めたいという政権の意向がうかがえる。

今年7月のイスタンブール会談が成果なく終わって以降、キーウとモスクワの直接協議は一度も行われていない。さらに、8月にトランプ氏とロシアのプーチン大統領がアラスカで会談して以降、各方面の外交ルートはほぼ凍結状態に陥った。

先月には、トランプ氏がブダペストでプーチン氏との首脳会談を予定していたものの、直前になって中止となった。公式な理由は明かされていないが、海外メディアによれば、ロシア側が依然として受け入れ難い要求を手放さなかったことが主な要因だという。

最近、米国は「米ロ間で和平合意が近い」とたびたび示唆してきた。しかし提示された案は、ロシア寄りの内容が多く、ウクライナに極めて厳しい譲歩を求めるものばかりで、いずれも決裂している。

19日夜、米国のルビオ国務長官は、米ロが打ち出した新たな枠組みに関して反応したとみられ、Xで「恒久的な平和を実現するには、双方がつらくても不可欠な妥協をしなければならない」と投稿した。
さらに「だからこそ、私たちは両者の意見を踏まえつつ、停戦に向けてあらゆる可能性をまとめ、検討し続けている」と書き込んだ。

同時に、ロシア軍は攻撃を強化し続ける

外交面で全く進展が見られない一方、ロシアによるウクライナ攻撃はさらに激しさを増している。

直近の空爆は19日未明に発生し、ロシア軍はウクライナ西部への大規模攻撃を実施。テルノーピリの複数の住宅ビルを狙ったほか、イワノ＝フランキフスク州やリヴィウのエネルギー関連施設も標的となった。
ガーディアン紙は、ロシア軍が冬の到来前にウクライナの民生電力網を破壊しようとしているのは明らかだと指摘している。

テルノーピリの集合住宅6階に住むオレフ・フリツィシュンさんは、爆発後に濃い煙が一気に広がり、避難経路が完全に塞がれたため、自宅に閉じ込められたと話す。 （関連記事： ウクライナ軍崩壊の危機　東部撤退要請と脱走兵2万人の衝撃 ｜ 関連記事をもっと読む ）

彼は「何度も大きな爆発音がして、服を着ようとした瞬間にはもう廊下が黒煙でいっぱいだった。あちこちが燃えていて、とても逃げられる状況じゃなかった。2度試したけれど、どちらも失敗した」と記者に語った。

ウクライナ内務省によれば、この空襲で子ども3人を含む26人が死亡し、92人が負傷した。そのうち18人は子どもだという。

目撃者のヤロスラフ・テスリュクさんはガーディアン紙に対し、空襲が午前5時半ごろ、多くの人がまだ眠っている時間帯に起きたと証言する。
「最初に大きな爆発があって、そのあと『シャヘド』無人機の音が聞こえた。続いてミサイルや爆発が次々と起きた。あっという間に大火事になった。寝ていた人の中には、そのまま焼け死んでしまった人もいる」と語った。

ゼレンスキー大統領はXで「民間人への残虐な攻撃が続くたびに、国際社会の対ロシア圧力がまだ不十分だということが明白になる。状況を変えられるのは効果的な制裁と支援だけだ」と記した。

ここ数カ月、ロシア軍は戦略拠点ポクロフスクへの攻勢に加え、ウクライナの重要なエネルギー・交通インフラを狙った大規模空爆を実施するようモスクワから命じられ、ウクライナは厳しい寒さの中で緊急停電を余儀なくされている。

さらに、ウクライナ軍は深刻な兵力不足に直面しており、議員や軍事アナリストによると、前線の一部では600ヤードを超える空白地帯が生じているという。歩兵による塹壕戦ではなく、自爆型ドローンを操る部隊に依存してロシア軍の攻勢を食い止める場面が増えている。
ロシアの狙いは明確だ。前進を重ね、プレッシャーをかけ続けることで、ウクライナに対し西側との安全保障上の結びつきを弱める条件を受け入れさせようとしている。

ウクライナ野党「欧州連帯党（European Solidarity Party）」のオレクシー・ゴンチャレンコ議員は、ドイチェ・ヴェレ（DW）の取材に対し、米国がウクライナに「降伏」を強いることはないとの見方を示した。

同氏は「それはウクライナの利益にも、米国の利益にもかなわない」と述べ、さらに「トランプ大統領が和平を模索していることには感謝している。しかし平和を望むのであれば、合意内容はウクライナの利益に沿ったものでなければならない。彼もその点は理解しているはずだ」と語った。

しかし、米NBCニュース（NBC News）は、トランプ氏が19日夜、いわば「ウクライナの降伏文書」に等しい28項目の和平案をすでに承認したと報じている。

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編集：柄澤南 （関連記事： ウクライナ軍崩壊の危機　東部撤退要請と脱走兵2万人の衝撃 ｜ 関連記事をもっと読む ）

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