TSMCの元上級副総裁・羅唯仁氏が、退職前に2ナノメートルなどの先端プロセスに関する大量の資料を持ち出し、その後インテルに移籍したと報じられ、機密流出の疑いが浮上している。これにより、かつてのTSMC「反逆者」をめぐる二つの大きな事例──梁孟松氏がサムスンに転じ、同社が技術の壁を越える一助となった件、そして蔣尚義氏が複数回にわたり中国企業に移った経緯──が改めて想起され、台湾半導体業界が直面する営業秘密の防衛戦が注目されている。
TSMCに再び「反逆者」危機 元副総裁・羅唯仁氏が2nm資料持ち出し、インテル復帰で業界騒然
今回の中心人物は75歳の羅唯仁氏で、TSMCで技術開発を統括する上級副総裁を務めていた。中国時報(中時新聞網)の報道によれば、同氏は今年7月末に退職する前に、2ナノメートルや1.4ナノメートルといった重要な先端プロセスに関わる資料を含む、20箱以上のコピー資料や手書き文書を持ち出したという。
さらに衝撃を広げたのは、羅氏が10月末に古巣であるインテルへ復帰した事実だ。この動きにより、TSMCが抱える技術流出リスクが一気に高まったとの懸念が広がっている。
梁孟松事件の再来か?サムスンの技術進展を支えた事例
今回の件は、多年前に起きた「梁孟松事件」を思い起こさせる。各メディアの報道によれば、TSMCの研究開発部門で重要な役割を担っていた梁氏がライバルのサムスンへ移った一件は、台湾半導体史でも特に注目を集めた技術流出訴訟の一つとして知られている。
離職の経緯:
梁氏は1992年にTSMCへ入社し、研究開発部門のシニアディレクターを務めていた。しかし、昇進をめぐる不満が募り、17年間勤めたTSMCを2009年初めに離職した。
サムスンへの転身:
退社後はまず清華大学で1学期教鞭をとり、その後韓国の成均館大学で教えることになった。競業禁止期間が2011年2月に満了すると、同年7月にサムスンのファウンドリー部門副社長兼CTO(最高技術責任者)に正式就任した。
技術への衝撃:
梁氏の加入は、サムスンのプロセス技術が飛躍する決定的要因とみなされている。彼の主導によりサムスンは28ナノから20ナノへの技術的壁を突破し、14ナノプロセスへと一気に前進。さらにアップルのA9プロセッサーの受注を獲得し、TSMCは巨額案件を失う結果となった。
法廷闘争:
TSMCは梁氏が営業秘密を競合に漏洩した疑いがあるとして提訴。この訴訟は約4年間続き、最終的に最高法院(最高裁)はTSMCの主張を認め、梁氏に対し2015年12月31日までサムスンへの技術提供を禁じ、TSMCの営業秘密および研究開発部門の人員リストを漏らすことを禁止する判決を下した。
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