AIブームの主役といえばNVIDIA(エヌビディア)だが、裏で確かな恩恵を受けているのが台積電(TSMC)だ。米経済誌《バロンズ》は、AI時代の「真の勝者」は半導体製造を担う台積電かもしれないと報じている。注目されるのは、その驚異的な成長力と、米国の貿易政策が及ぼす影響だ。
AI特需で急成長──「最大の勝者」はTSMC?
台積電の2025年第2四半期売上は9,338億台湾ドル(約4兆6900億円)に達し、前年同期比で39%増加。市場予測を上回る好成績を収めた。第1四半期(42%増)と比べやや減速はしたものの、勢いは衰えていない。内訳は未公表だが、市場ではAIチップ製造の受託増が主因と見られており、特にNVIDIAからの高性能半導体需要が急増していることが背景にある。
株価でも台積電は好調で、ここ3か月間でADRは約53%上昇。NVIDIAの上昇率(約51%)をわずかに上回った。NVIDIAがライバルとの競争に晒される一方、台積電は製造分野での優位を維持しており、供給面での安定性が高く評価されている。
需要はどこから来るのか──AIと多様な顧客基盤
台積電は2025年にAI関連の売上が倍増すると見込んでおり、今後5年間の年平均成長率は約45%に達するとされる。Apple、Qualcomm、AMDなどの主要テック企業が顧客に名を連ね、スマートフォンからサーバー、PCまで幅広い分野に対応できるのが強みだ。《Chips & Wafers》の分析では、「AIと従来製品の両方で需要が増し、半導体業界は新たなスーパ-サイクルに突入する」と指摘している。
関税が最大の不確実要因──米国政策の影響は?
一方で、成長を阻む懸念材料もある。《バロンズ誌》によれば、トランプ米大統領が輸入チップに新たな関税を課す可能性を示唆しており、詳細は未定ながら、貿易依存度の高い台積電にとって無視できないリスクだ。
台積電はアメリカの規則から利益を得るのか?
台積電はすでにアリゾナ州に1,650億ドル(約24兆2200億円)規模の投資を発表しているが、これが関税免除に繋がるかは明らかではない。現行の米規則では、製品価値の20%以上が米国内で処理されていれば、国外生産分のみが関税対象とされるため、米国内でのパッケージングや検査を通じてコスト圧力を軽減できる可能性はある。ただし、この点も今後の政策次第という不透明さを残している。
台積電 vs NVIDIA(輝達)の最近の比較:
項目 | 台積電 | 輝達 |
---|---|---|
第2四半期の売上年増 | 39% | 69% |
株価過去3カ月の上昇率 | +53% | +51% |
優勢 | 高性能チッププロセスにおけるリーダーシップ維持 | GPU開発とブランド力 |
リスク | 関税政策の不確定性 | 技術競争が激化 |
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